10月に入り、文化祭の準備に追われていた。
3年生にとっては最後の共同作業の行事という事で、張り切っている姿がよく見られる。 これが終わったら、受験勉強まっしぐらって感じだし。
この文化祭は3年生がメインで、基本やりたいことを自分らで決めることができる。 屋台をやるとか、フリーマーケットをするとか、先生の手伝える内容であれば許可がおりる。 1、2年は、合唱か、ちょっとした劇を披露する。 どちらにするかは、各クラスで決めることだ。 後は、3年生が行う催しに参加するくらい。
あたしたち2年2組は、合唱に決まった。 曲目は、音楽の教科書に載っている「翼をください」だ。 それだって、他のクラスとかぶらないようにして決めたことだ。
「ねぇ、ケンちゃん。絶対ケンちゃんのソロ入れた方がいいって〜。」 練習の合間、美樹がケンちゃんの腕を引っ張っている。
「・・・冗談・・・そんなことしたら、俺のファンまた増えんじゃん。」 本気か冗談かわからないが、そんなことを言ってソロの話を断った。 「もうっ・・・本気で言ってんのに〜・・・優勝狙えるかもだよ。」
最優秀のクラスには、表彰されることになっていた。
「俺は、そんなんで優勝してもうれしくないよ・・・あぁっ!!ちくしょーっ!!夢のベスト4が〜・・・」 「・・・おまえ、いい加減そのセリフやめたら?」 田口君が頬杖つきながら呆れてる。
先月行われたサッカーの試合のことだ。 ベスト4をかけた試合だったけれど、相手は優勝候補ということもあり、惜しくも敗れてしまった。 それでも、我が校始まって以来の好成績ということもあって、すごい盛り上がりだった。 有志でバスを貸し出して、応援に行きたい人は授業に出なくてもいいなんてことになり、ほとんどの生徒が、先生が、試合会場に足を運んだくらいだ。 あたしは行くのをためらったが、美樹やきょんちゃんの誘いに断れず、その場へは行った。 でもみんなのように、声援を送ることなく、黙って見ていた。 思わず、声が出そうになるのも我慢して。
この試合で、3年生は引退となった。 新しい部長になったのは、ケンちゃんだ。 それについては、あの頃と同じ。 ・・・でも、こんな試合結果なのは以前と違ってる。 みんなで応援に行った記憶なんて、全くない。
なんとなく、自分の周りだけでなくこういう行事のことまで過去と違っていることに、違和感を感じた。
・・・・・・過去が、変わってる・・・ってことなんだよね。 ・・・・・・気に・・・しすぎかな。
この時のあたしは、まだそんなに深く考えてなかった。
「ふんっ・・・おまえはいいよな〜・・・あれぐらいの成績で満足して、中田とも順調で・・・」 「―――//っ、何言ってんだよっ・・・」 「―――//っ・・・」
ケンちゃんの冷やかしに、同時のこのカップルは、真っ赤になっていた。 それを周りにいたクラスメイトが気付いて、ニヤニヤと笑っている。 つきあいだして、一ヶ月以上経つが、二人の初々しさはつきあう前以上だ。 あっという間に、二人の関係は周りに知れわたった。 そして予想通りに、冷やかしの対象となったわけだけど、一番冷やかしていたのは、親友であるはずのケンちゃんだった。 二人がくっつくまでは、かなり言いたいのを我慢していたらしく、一気に爆発してる感じだ。
「・・・ケンちゃんっ!・・・ひがむんじゃないの!」 あたしは、後ろの席から喝を入れた。
「・・・だったら・・・俺の事なぐさめてよ〜っ。」 そう言いながら、ケンちゃんはあたしに抱きつこうと近寄ってきた。 「――っ、やめろっての!」 立ち上がり、寄ってくるケンちゃんの頭を手で押し戻した。 「「あはははは〜!!」」 そのやりとりに、美樹やきょんちゃん、田口君はもちろんのこと、クラスメイトも笑っている。 今やこういうのは見慣れている光景だ。
「さっ!練習練習!・・・今度パートごとに歌おっか。」 文化祭のクラス委員である美樹が、仕切り直した。 本番まであと一週間もない。 他の教室からも、歌声や騒ぎ声が聞こえる。
こういうイベントは正直めんどうだ。 でも・・・やりだすと、いつしかみんな真剣になってくる。 クラスの団結力もだんだんと感じられ、ちょっと外から目線で見ると恥ずかしくなるけど・・・それが青春ってことなんだ。
―――放課後
部活へと向かう。 いつものように、きょんちゃんと、違うクラスのまどかと。 そして、げた箱で靴に履き替えている時だった。 「・・・でさー、すんごい場違いでさ−、うけると思わない?だからさ・・・っ」 まどかが、クラスで起こった出来事を話していた。 それに、あたしときょんちゃんは笑いながら聞いていたが、会話が途切れたので足元からまどかへと目をやった。 そのまどかは、あたしらのちょっと前に、立っている男子生徒に気がついた。 続けて、あたしも目をやった。
・・・――っ!・・・・・・木村先輩・・・
待っていたかのように、こっちに近づいてきた。 そしてその視線は、あたしへと向けられていた。
「・・・・・・ちょっと、いい?」
このかけ声にまどかは、木村先輩と視線の先のあたしとを、交互に見合わせた。 そして、まだ靴を履き終えていないきょんちゃんの腕を引っ張りだした。 「え・・・あたし靴、まだ・・・」 きょんちゃんはつっかけ状態の足元で、つまづきそうになる。 「いいからっ・・・・・・あたしら・・先行ってるね・・・」 「・・・えっ・・・――ちょっとっ・・・」 呼び止めるあたしを無視してなにかを察したのか、まどかは半ば強制的にきょんちゃんを連れ出し、校舎を後にした。
「・・・・・・すぐ終わる話だから。」 立ち尽くすあたしに、木村先輩はそう言いながら、校舎裏へと向かった。
・・・・・・どうしよ ・・・・・・あの時以来・・・なんですけど。
思い出したくもない事が、一瞬にして頭をよぎる。 ・・・――ブンブンッ・・・ それを払いのけるかのように頭を振る。
・・・・・・木村先輩に・・・2回告白されたようなもんなんだよね・・・
先輩が言った言葉も、思い出される。
あたしは、とぼとぼと先輩の後を追った。
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