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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第54回   54
あたし達は、校舎裏にやってきた。
当然、他の生徒や先生の姿は見えなかった。

ここに来るまでの間、だいたいの予想をしていた。
たいていの部活の子達は午前中で終わっているし、まだ帰ってないってことは、さっきまでグラウンドの外でサッカー部の応援していたんだろう。

この子らの目的は・・・きっと、サッカー部に所属している3人のことだろう。

ケンちゃんに田口君に松井君・・・この3人の中の誰かに関することのはずだ。

最近よく一緒に行動することがあったから、それが気にくわなかったんじゃ・・・
でも、なぜあたし・・・?
偶然見かけたから・・・?

あたしは、周りの状況からして、ここならいいだろうと思い、口を開いた。

「・・・なに?何の用?」
やや低めの声で聞いた。
すでに戦闘モードに入ってしまっていた。

前を歩いていたその子らは、立ち止まって振り返ってきた。
向こうも当然のように、戦闘モードだ。
そして、この中のリーダー的存在の子が先頭を切った。

「あのっ・・・リョーマ先輩とっ・・・どういう関係ですか!?」
「・・・っ!?・・・どういうって・・・」
・・・松井君のことか・・・。

予想はしていたがその相手が松井君ってのが、少し引っかかった。

「・・・つきあってるんですか!?」
違う子が聞いていた。
「は!?・・・」
次から次へとあたしがまともな返事をする前に、この子らはだんだんヒートアップしている。
「・・・見たんですっ・・・祭りの時・・・」
「えっ・・・」
祭りの時ってことは・・・いつの?
自転車に乗ったこと?
そういえば、みんな同じ頃に帰るときだから、誰かしら見られてたかもしれない・・・
あの時は、周りの目なんて気にもしてなかったし・・・とういうか、する余裕なかった。
とにかく、ここは冷静に切り抜けよう・・・
「・・・あのさっ・・・なんか勘違いしてない?」
彼女らを落ち着かせるためにも、あたしまでムキになってもしょうがなく感じてきた。

「・・・なんですか?勘違いって。」
相変わらず、戦闘モードから抜けそうではない。
「・・・結果から言うと、つきあってなんかないよ・・・あたしら。」
これは、完全なる誤解だ。
きっと彼女らはちゃんとした答えを言わなくちゃ、納得しないだろう。

「・・・じゃあ・・・なんで、手繋いでたんですか?」
「・・・手?・・・・・・っ!!」

・・・あのこと・・・か?
あたしが思わず松井君の腕を掴んでしまったこと・・・
あれ・・・見られてたの?

「暗かったから、はっきりとはわかんなかったんですけど・・・でも、その前に出店のとこ一緒にいたの見かけたし・・・なんか、なんでもないようには見えませんでしたけどっ!」

・・・そうか・・・掴んでいたのが、手を繋いでるように見えたんだ・・・

「・・・それはっ・・・」

言い返すつもりだった。
なんでもないって・・・
たいしたことじゃないって・・・

でも・・・なんでか、出てこなかった。

「・・・じゃあ・・・リョーマ先輩の事、どう思ってるんですか?」

――!!

「・・・どうって・・・・・・別に・・・」

「・・・・・・卑怯ですっ!」

・・・・・・え?
・・・・・・卑怯?

意味は知っているけれど、その言葉を自分に向けられたのは生れて初めてだった。

「なんとも思ってないふりして、リョーマ先輩の近くにいるなんて・・・そんなの卑怯ですっ!」
「・・・・・・」
「・・・あたしはっ・・・ちゃんと気持ち伝えました。」
最初に言ってきた子に目をやった。
「・・・当然・・・相手にもされなくふられましたけど・・・・・・でもっ・・・それでもやっぱり・・・あきらめきれないから、応援だけどもって・・・遠くからでもって・・・・・・」
少し涙ぐんでいた。
「・・・この子だけじゃないですよ・・・」
かばうように、また違う子が口を挟んできた。
「・・・今日応援来てる中にも、同じような子います・・・みんな、ちゃんと正々堂々と自分の気持ち伝えて・・・あなただけ、なんにもしないで、しかもそんな風に思ってないって嘘ついて・・・」
「ちょっ・・・嘘だなんて・・・」
思わず、そこには反応した。
「嘘じゃないですかっ!・・・さっき、見てましたよね・・・リョーマ先輩の事。」
「え・・・・・・」
また、言葉が続かなかった。
「・・・そりゃあ、自分に好意持ってないって感じたら、リョーマ先輩だって普通に接してくれますよね・・・・・・あなたは、それを利用してるんでしょ?・・・・・・卑怯ですっ!」
「・・・・・・」
「リョーマ先輩は、あなたが山下先輩の友達だから、普通に接してもらってるんじゃないんですか?幼馴染の友達だからって・・・・・・結局・・・山下先輩のことも利用してるってことじゃないですか!卑怯者!」
「・・・・・・」

・・・・・・なに、これ・・・?
・・・なんか・・・のどの奥が痛い・・・
・・・ううん・・・息苦しい・・・
・・・こういう感じ・・・前にも・・・ある・・・


「・・・・・・3対1なんて、それも卑怯なんじゃない?」

―――っ!!

この険悪の雰囲気とは正反対に、明るい口調で誰かが姿を現した。

あたしも含め、みんながその人へと目をやった。

・・・あ・・・

「・・・っ、木村先輩・・・」
一人の子が、場が悪そうに名前を呟いた。

「・・・もう言いたい事は言ったんでしょ?・・・そのくらいにしといたら?」
なおも明るく、さわやかな笑顔で、こっちに近づいてきた。

3人は、顔を見合わせた後、無言でその場を走り去って行った。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

木村先輩とこうして対面するのは、あたしがはっきりとおつきあいの申し出を断って以来だ。
いきなりの告白に戸惑って、あやふやな態度のままだったので、夏休みに入る前にちゃんと断った。

「・・・・・・大丈夫?」

少し無言の後、木村先輩はまた一歩あたしに近づいた。

「あ・・・はい・・・」
あたしは、平気そうな顔をして木村先輩を見た。
だけど、目があった瞬間、見透かされそうな感じがして、すぐに体ごと横に向いた。

「・・・・・・山田さんなら、さっきの子ら、なんてことないって思ってた。」
「・・・え?」
木村先輩は、クスッと笑って続けた。
「・・・逆に言いくるめるんじゃないかって・・・そういう人だって聞いてたから。」

・・・聞いてた?・・・誰に?

心の中での質問を、木村先輩はわかったかのように答えた。

「・・・松井にね。」

――っ!!

「・・・山田さんに、その・・告白する前に・・・あいつに聞いたんだよ。どんな子かって・・・協力してって・・・」

・・・・・・

「・・・そしたら、しょっぱなから、やめた方がいいって言われてさ・・・」

・・・・・・

「・・・思ったことズバズバ言うし、言い出したら止まらないしって・・・俺には向いてないんじゃないかってさ・・・。」

・・・・・・そんなこと・・・言ってたんだ・・・

「・・・それでも、言っちゃったけどな・・・・・・聞いてた通り、はっきりとズバッとふられたけどね。」

・・・・・・

「・・・・・・さっきの子らと、こっちに行く姿見えてさ・・・なんとなく気になって追いかけたんだけど・・・・・・今そのこと後悔してる。」

・・・・・・

「・・・・・・自分の気持ちに未練があるってのもわかったし・・・山田さんの気持ちもわかった。」

――!!

「・・・でも・・・俺あきらめないから。」

木村先輩は、そう言うとグラウンドの方へと向かった。


あたしは・・・またさっきの痛みがやってきた。

のどの奥が痛い―――
・・・これは・・・涙をこらえてるせいだ・・・

そう自覚したあと、みるみるうちに目の前の視界がゆがんでいった。

ポロポロと・・・次から次へと・・・
一度拭ったけど、それくらいじゃ治まることはなく・・・



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