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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第53回   53
「で!?でっ!!??なんて答えたのっ!?」
月曜日の部活の後。
お昼を清田商店で食べながら、美樹が言っていた通り、きょんちゃんの報告を聞いていた。
ほとんど、質問攻めだけど・・・。

「〜〜〜っ・・・うん・・・って・・・。」
「−−っ!キャーッ!!すごーいっ!!」
「美樹っ、声でか過ぎ・・・」
「だってだって〜っ!こんなこと落ち着いて聞いてられないじゃん!」
「・・・くすくす、確かに・・・。」
あたしは納得した。

田口君は、ストレートにきょんちゃんに「つきあってほしい」って言ったみたい。
きょんちゃんも突然の告白に驚きながらも、それに受け応えた。

「ねぇねぇっ・・・ってことは、二人はあの日から・・・彼氏彼女ってこと!?」
「えっ!!〜〜〜っ・・・それは・・・その・・・」

このくらいの時ってそんな響きでさえ、新鮮すぎて、恥ずかしくて・・・何にしても、純情すぎる。

「いいの?あたしらとこんなとこにいて。彼氏心配してんじゃない?」
美樹の攻撃は収まりそうにない。
「何言って・・・っ、誰が連れて来たのよ、ここに。・・・それに・・・今日は、サッカー部午後の練習もあるって言ってたから・・・どっちみち、いいのっ!」
「そっかそっかぁ・・・もう、連絡取り合ってんだ〜、へぇ〜・・・」
「〜〜〜っんもうっ!美樹ってば!!」
「あははは、照れない照れない。」

・・・くすくす・・・ほんと、きょんちゃんってばかわいい。
まぁ、美樹も少しからかいずぎだけど。

ほんとに、つきあうんだ・・・田口君とかぁ・・・
彼が、きょんちゃんの初カレ・・・かぁ・・・

「・・・・・・でも・・・うれしいんだけど・・・」
まだ顔を赤らめたままだったけど、きょんちゃんは不安げな表情になった。
「・・・これから、どうしたらいいのか・・・よくわかんなくて・・・」
「・・・なにそれ?どうしたらって・・・つきあうんでしょ?」
美樹は、きょんちゃんに聞き返した。
「・・・だから・・・その、つきあうってのが・・・わかんない・・・」
「・・・どういうこと?」
「・・・・・・こうしてつきあうってかしこまっちゃうと、なんか友達の時とより、変な感じがして・・・・・・そのうち周りの人たちにもバレていったら、あたし・・・普通に話せなくなっちゃうかも・・・」

この時、学校でつきあっている子たちは、たくさんではないが、何組かいた。
まどかやなっちゃんだって、つきあってるし。
でも、その中には、周りの冷やかしに耐えきれなく、別れてしまったカップルもいる。
今思うと、そんなことで・・・って感じだったけど、この年頃にとってはすごい障害になる問題だった。

「何言ってんの!?つきあい始めから、そんなこと言って〜。」
美樹は、きょんちゃんの腕を掴んだ。
「・・・だって・・・どうしたらいいのか・・・」

・・・相手の気持ちがわからない時も不安。
・・・それがわかったからって、不安の要素が消えること・・・ないんだよね。
相手の事・・・好きならなおさら・・・だよね。

「・・・・・・今まで通り、きょんちゃんの接したいようにすれば?」
「・・・え?」
きょんちゃんが、俯いていた顔をあたしに向けてきた。
「つきあったからって、二人の今までの雰囲気を壊すこともないし、変える必要もないんじゃない?今までがあったからこそ、こうして、田口君と気持ちが通じたんだし。」
「・・・・・・」
「・・・それに、周りがなんか言ってきたって、そんなの気にしちゃだめだよ!外野は関係ないんだし。もし質の悪いのいたら、すぐに教えてっ!・・・あたしがやっつけてやるから。」
そういって、ニッコリと笑った。
「・・・そうだよっ。あたしもっ。きょんちゃんたちの邪魔するやついたら、こらしめてやるっ!」
「・・・・・・ありがと・・・」
またきょんちゃんの顔は赤くなった。

きっと、この二人の関係が周りに知れわたるのも、時間の問題だろう。
田口君のファンは結構いるから、そういうことは敏感だろうし。
幼稚な嫌がらせとか、あるかもしれない。
・・・ほんとにあたしの出番くるかも・・・
そんな事を思い、ちょっと気合いが入った。

話も終え、それぞれ帰ることにした。
が、汚れたユニホームを持って帰るのを忘れたことに気付いた。
「もう一回学校戻るわ。きょんちゃん先帰ってて。」
途中まで、徒歩で帰っているきょんちゃんと一緒に下校していた。
「え・・・待ってるよ?」
「ううん、いいよいいよ、暑いし。」
「そう?・・・じゃあ、また明日ね。」
「うんっ、ばいばい。美樹もね。」
「うん、またね〜。」

こうして二人と別れ、自転車で学校までの上り坂を必死にこいで行った。

息を切らしながら、自転車を適当にその辺に止めて、部室へと向かった。
でも、すでに鍵は閉められており、職員室へ取りに行かなくてはいけなかった。
暑さと疲れで、嫌気がさしてきたが、また臭いユニホームでの練習はさすがに嫌だった。
渋々と鍵を取りに行くことにした。

その途中で、グラウンドが目に入った。
きょんちゃんの言ってた通り、サッカー部は午後も練習があるみたい。
最近のサッカー部の活躍は、嫌でも耳に入ってくる。
中体連でも好成績を残し、他の部活の3年生はもう引退しているところが多いのに、サッカー部はまだまだ現役でやっているみたい。
それだけ強くなっているし、練習量も増えているみたい。

そして、ファンの子達も日に日に増えている。
夏休みだというのに、この暑い中、わざわざ部活の応援に来ている女子生徒が目に入る。
十数人はいるだろうか?
目当ての部員に黄色い声援を送っている。
聞きなれた名前も当然聞こえてきた。

ケンちゃんに、田口君に・・・松井君。
歩きながら、何気なくグラウンドに目を向けた。

・・・・・・あっ・・・いた・・・

思ったより早く、松井君の姿をとらえた。
紅白試合だろうか?ゼッケン付きのタンクトップのようなものを着ていた。

・・・・・・暑い中、よくあんなに走れ回れるなぁ・・・

そんな風に感心しながら、その場を通り過ぎて行った。

そして、顧問の先生に言って、鍵を借りることができた。
靴をはき、校内から出た時だった。

「・・・・・・っ!?」

目の前の道を、完全に塞がれていた。
3人の女子生徒によって・・・。

・・・・・・なんなんだ?

あたしは目の前の状況に、思考が付いていかなかった。

「・・・あのっ・・・ちょっと、いいですか?」

真ん中にいた一人の女の子が声をかけてきた。
どうやら、1年生のようだ。
その口調からして、決してあたしに好意を持っている感じではなかった。
他の二人の視線も、嫌ってほど、冷たいものだった。

こういう感じ・・・初めてではない。
・・・女の嫉妬・・・ってやつだ。

あたしは、気が抜けていたが一瞬にして、引き締まった。
そしてその子らの後を、素直について行った。


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