「で!?でっ!!??なんて答えたのっ!?」 月曜日の部活の後。 お昼を清田商店で食べながら、美樹が言っていた通り、きょんちゃんの報告を聞いていた。 ほとんど、質問攻めだけど・・・。
「〜〜〜っ・・・うん・・・って・・・。」 「−−っ!キャーッ!!すごーいっ!!」 「美樹っ、声でか過ぎ・・・」 「だってだって〜っ!こんなこと落ち着いて聞いてられないじゃん!」 「・・・くすくす、確かに・・・。」 あたしは納得した。
田口君は、ストレートにきょんちゃんに「つきあってほしい」って言ったみたい。 きょんちゃんも突然の告白に驚きながらも、それに受け応えた。
「ねぇねぇっ・・・ってことは、二人はあの日から・・・彼氏彼女ってこと!?」 「えっ!!〜〜〜っ・・・それは・・・その・・・」
このくらいの時ってそんな響きでさえ、新鮮すぎて、恥ずかしくて・・・何にしても、純情すぎる。
「いいの?あたしらとこんなとこにいて。彼氏心配してんじゃない?」 美樹の攻撃は収まりそうにない。 「何言って・・・っ、誰が連れて来たのよ、ここに。・・・それに・・・今日は、サッカー部午後の練習もあるって言ってたから・・・どっちみち、いいのっ!」 「そっかそっかぁ・・・もう、連絡取り合ってんだ〜、へぇ〜・・・」 「〜〜〜っんもうっ!美樹ってば!!」 「あははは、照れない照れない。」
・・・くすくす・・・ほんと、きょんちゃんってばかわいい。 まぁ、美樹も少しからかいずぎだけど。
ほんとに、つきあうんだ・・・田口君とかぁ・・・ 彼が、きょんちゃんの初カレ・・・かぁ・・・
「・・・・・・でも・・・うれしいんだけど・・・」 まだ顔を赤らめたままだったけど、きょんちゃんは不安げな表情になった。 「・・・これから、どうしたらいいのか・・・よくわかんなくて・・・」 「・・・なにそれ?どうしたらって・・・つきあうんでしょ?」 美樹は、きょんちゃんに聞き返した。 「・・・だから・・・その、つきあうってのが・・・わかんない・・・」 「・・・どういうこと?」 「・・・・・・こうしてつきあうってかしこまっちゃうと、なんか友達の時とより、変な感じがして・・・・・・そのうち周りの人たちにもバレていったら、あたし・・・普通に話せなくなっちゃうかも・・・」
この時、学校でつきあっている子たちは、たくさんではないが、何組かいた。 まどかやなっちゃんだって、つきあってるし。 でも、その中には、周りの冷やかしに耐えきれなく、別れてしまったカップルもいる。 今思うと、そんなことで・・・って感じだったけど、この年頃にとってはすごい障害になる問題だった。
「何言ってんの!?つきあい始めから、そんなこと言って〜。」 美樹は、きょんちゃんの腕を掴んだ。 「・・・だって・・・どうしたらいいのか・・・」
・・・相手の気持ちがわからない時も不安。 ・・・それがわかったからって、不安の要素が消えること・・・ないんだよね。 相手の事・・・好きならなおさら・・・だよね。
「・・・・・・今まで通り、きょんちゃんの接したいようにすれば?」 「・・・え?」 きょんちゃんが、俯いていた顔をあたしに向けてきた。 「つきあったからって、二人の今までの雰囲気を壊すこともないし、変える必要もないんじゃない?今までがあったからこそ、こうして、田口君と気持ちが通じたんだし。」 「・・・・・・」 「・・・それに、周りがなんか言ってきたって、そんなの気にしちゃだめだよ!外野は関係ないんだし。もし質の悪いのいたら、すぐに教えてっ!・・・あたしがやっつけてやるから。」 そういって、ニッコリと笑った。 「・・・そうだよっ。あたしもっ。きょんちゃんたちの邪魔するやついたら、こらしめてやるっ!」 「・・・・・・ありがと・・・」 またきょんちゃんの顔は赤くなった。
きっと、この二人の関係が周りに知れわたるのも、時間の問題だろう。 田口君のファンは結構いるから、そういうことは敏感だろうし。 幼稚な嫌がらせとか、あるかもしれない。 ・・・ほんとにあたしの出番くるかも・・・ そんな事を思い、ちょっと気合いが入った。
話も終え、それぞれ帰ることにした。 が、汚れたユニホームを持って帰るのを忘れたことに気付いた。 「もう一回学校戻るわ。きょんちゃん先帰ってて。」 途中まで、徒歩で帰っているきょんちゃんと一緒に下校していた。 「え・・・待ってるよ?」 「ううん、いいよいいよ、暑いし。」 「そう?・・・じゃあ、また明日ね。」 「うんっ、ばいばい。美樹もね。」 「うん、またね〜。」
こうして二人と別れ、自転車で学校までの上り坂を必死にこいで行った。
息を切らしながら、自転車を適当にその辺に止めて、部室へと向かった。 でも、すでに鍵は閉められており、職員室へ取りに行かなくてはいけなかった。 暑さと疲れで、嫌気がさしてきたが、また臭いユニホームでの練習はさすがに嫌だった。 渋々と鍵を取りに行くことにした。
その途中で、グラウンドが目に入った。 きょんちゃんの言ってた通り、サッカー部は午後も練習があるみたい。 最近のサッカー部の活躍は、嫌でも耳に入ってくる。 中体連でも好成績を残し、他の部活の3年生はもう引退しているところが多いのに、サッカー部はまだまだ現役でやっているみたい。 それだけ強くなっているし、練習量も増えているみたい。
そして、ファンの子達も日に日に増えている。 夏休みだというのに、この暑い中、わざわざ部活の応援に来ている女子生徒が目に入る。 十数人はいるだろうか? 目当ての部員に黄色い声援を送っている。 聞きなれた名前も当然聞こえてきた。
ケンちゃんに、田口君に・・・松井君。 歩きながら、何気なくグラウンドに目を向けた。
・・・・・・あっ・・・いた・・・
思ったより早く、松井君の姿をとらえた。 紅白試合だろうか?ゼッケン付きのタンクトップのようなものを着ていた。
・・・・・・暑い中、よくあんなに走れ回れるなぁ・・・
そんな風に感心しながら、その場を通り過ぎて行った。
そして、顧問の先生に言って、鍵を借りることができた。 靴をはき、校内から出た時だった。
「・・・・・・っ!?」
目の前の道を、完全に塞がれていた。 3人の女子生徒によって・・・。
・・・・・・なんなんだ?
あたしは目の前の状況に、思考が付いていかなかった。
「・・・あのっ・・・ちょっと、いいですか?」
真ん中にいた一人の女の子が声をかけてきた。 どうやら、1年生のようだ。 その口調からして、決してあたしに好意を持っている感じではなかった。 他の二人の視線も、嫌ってほど、冷たいものだった。
こういう感じ・・・初めてではない。 ・・・女の嫉妬・・・ってやつだ。
あたしは、気が抜けていたが一瞬にして、引き締まった。 そしてその子らの後を、素直について行った。
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