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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第51回   51
・・・ヒュ〜・・・ドーンッ・・・
・・・ヒュルヒュルヒュル〜・・・ドンドーンッ・・・

花火は相変わらず、夜空に広がっている。
黙ったままの二人だったけど、あたしは我に返り、パッと掴んだ手を離した。

「・・・ごめん・・・」
なんとなく謝り、松井君から少し距離を置いた。
そんなあたしに対し、彼は前へ向き直し、止まっていた足を動かした。
「・・・・・・あいつら、遅いって怒ってるかもな。」
その言葉に続くかのように、あたしも歩き出した。

そして、だんだんとさっきの自分の行動を思い返し、恥ずかしくなってきた。

・・・あたしってばっ・・・何やってんの!?
絶対変だって思われたよ・・・
・・・・・・でも・・・・・・なんだろう?
ほんとは、腕を掴むくらいじゃなくて・・・・・・抱きしめたくなってしまった・・・
彼が、すごく小さく感じて・・・・・・
身長は明らかに向こうが高いんだけど、さっきの彼は、あたしの腕の中にすっぽり収まりそうな・・・そんな風に感じてしまった・・・
・・・・・・っっ!!・・・なに言ってんだ!?
こんなこと考えてること事態おかしいでしょ!?
・・・絶対どうかしてる・・・
・・・母性本能をくすぐられたって・・・ことなのかな・・・

松井君の後ろで、あたしは熱くなった顔を一生懸命手で仰いでいた。


「おせーぞ!!どこまで買いに行ったんだよ!」
案の定、ケンちゃんは待ちくたびれていた様子だ。
「まぁまぁ、せっかく買ってきてくれたんだし・・・いくらかかった?計算しよ?」
美樹が、両手一杯にもった荷物を、松井君から受け取りながら言った。
そして、よっぽどお腹が空いていたケンちゃんは、一番真っ先に食べ物をガッツいていた。
まだ、メインの水上花火はあげられておらず、ちょうど今から始まったみたい。
少し丘になっているところだったので、絶好の場所で見ることができた。

「・・・うわー・・・きれい・・・」
きょんちゃんはすっかり花火に見入っていた。

あたしは、なんとなく松井君から一番離れた場所に腰をおろした。
隣にまだ手をつけていない食べ物が置いてあり、それを取りに田口君がやってきた。

「・・・・・・俺さ・・・」
周りに聞こえないようなボリュームで、コソコソッと話しかけてきた。
「・・・・・・今日・・・言おうと思って・・・」
そう言った田口君の顔を見ると、ちょっと緊張気味の表情だった。
「え・・・?・・・・えっ!!」
少し考えたが、何のことかすぐにわかった。
「・・・・・・おまえら、一緒に帰んの?」
・・・っ。
あたしは首を横に振った。
「・・・あたしは、バスで帰るから・・・向こうは、親と一緒に帰るよ・・・9時過ぎに待ち合わせしてるみたい。」
あたしもつられてコソコソと受け答えをした。
「・・・そっか・・・じゃあ・・・花火終わったら、あいつとちょっと離れていい?」
「・・・あぁ・・・うん・・・」
・・・なんであたしに聞くんだ?
許可得てるみたいなんだけど・・・。
「・・・・・・よかった〜・・・てっきり、山田には反対されると思ってたから。」
「え?・・・あぁ・・・」
そうだった・・・前に協力してってケンちゃんに言われた時は、かなり嫌がってたもんな・・・
・・・いつの間にか・・・この二人のこと・・・嫌じゃなくなってた。
きょんちゃんの気持ちもはっきりしてるし、今さらあたしがどうこう言うことではない。
「・・・反対されたって・・・言うべきことは言えばいいじゃん。」
「・・・そうだな・・・」
田口君は、食べ物を手に取り、元の場所・・・きょんちゃんの隣に戻って行った。

あの頃とは違う、きょんちゃんと田口君。
これから先どうなるんだろう?
・・・・・・うまくいって欲しい・・・そう素直に思えた。


「以上をもちまして、本日の夏祭りを終了させていただきます。なお、お帰りの際は・・・・」
最後のどデカイ花火が打ち終わり、アナウンスが流れだした。

「・・・あ〜あ・・・今年も夏が終わったな〜・・・」
ケンちゃんは背伸びをしながら立ち上がった。
「え〜っ?まだ8月入ったばっかだよ?」
美樹は笑いながら、ケンちゃんの発言に突っ込む。
「俺にとっては、この祭りが夏の終わりなの!・・・あぁ〜っ!!なんか切な〜いっ!!」
ケンちゃんは大声で叫んだ。
「・・・・・・近所迷惑だよ。」
ボソッと松井君が、注意した。
確かにちょっと下には、民家が何軒か建っている。
「何だよ・・・人が浸っているときに・・・」
「そろそろ戻ろっか?時間も時間だし・・・きょんちゃんも確か9時くらいだったよね、待ち合わせ。」
「うん、ちょっと遅れるかもって言ってきたけどね。今何時だろ?」
「えっとな・・・8時40分だな。」
ケンちゃんは腕時計に目をやった。

タイムリミットは、あと20分・・・いや、15分かも・・・
密かにあたしは、焦っていた。
ここからどうやって、田口君はきょんちゃんを連れ出すんだ?

「・・・よしっ・・・じゃあ・・帰りは俺らこっちから行こうぜ。」
ケンちゃんは自然とそう仕切った。

・・・俺・・・ら?

そう思っていると、あたしと美樹の腕を引っ張って、松井君の方へと向かった。
そして、必然的にきょんちゃんと田口君が残された。

「・・・え?・・・なん・・・で?」
きょんちゃんはだんだん赤くなりながら、事の成り行きに戸惑っていた。
「いいからいいから〜。邪魔者はいなくなるから〜。さっ、いくぞ。」
先頭切って、来たときとは違う経路のほうにサッサと歩きだした。
松井君も何も言わずに、それについて行った。
「えっと・・・じゃあ、あたしらも・・・」
美樹もこの雰囲気が理解され、あたしの腕に手を組んで来て、歩きだした。
「・・・っちょっと・・・」
きょんちゃんは、なおも引き止めてみたが、あたしらは誰一人振り返ることなくその場を去ってしまった。

・・・きょんちゃん・・・今すんごい緊張してるだろうな・・・
・・・もう一人も同じことか。
なんとなく微笑みながら、二人のその後を想像してしまった。


「ねぇねぇっ、やっぱそういう事!?田口君きょんちゃんに告白すんの!?」
二人からだいぶ離れたところで、美樹は興奮気味にケンちゃんに問いただしていた。
「・・・こんなロマンティックな夜に告白しなくて、いつすんだよ!」
ケンちゃんは、ふふんっ、といった感じで笑った。
・・・ロマンティック・・・ケンちゃんが言うと、なんか安っぽい・・・
「え〜っ!!マジで〜っ!!すごいすごいっ、ついにか〜。絶対きょんちゃんびっくりするだろうね〜。」
美樹は益々興奮しまくって、あたしに同意を求めてきた。
「・・・そうだね・・・」
あたしもくすくすっと笑いながら答えた。
「あぁ〜っ、早く結果聞きた〜い。今日はもう遅いから電話できないしな・・・明日部活ないんだよね?」
「あぁ、うん。日曜だしね。」
「やっぱり、直接本人の口から聞きたいから・・・月曜まで我慢するか。」
「・・・月曜学校来るの?」
「もちろんっ!!お昼には終わるんでしょ?その頃行くね。絶対それまで聞いちゃだめだよ!一緒に聞こうね!」
「くすくす・・・わかった。」
・・・すごい楽しそう・・・
自分の事じゃなくても、やっぱりこういうのって嬉しいよね。

「山下はねーちゃんと帰んだろ?」
ケンちゃんが時計に目をやりながら聞いてきた。
「あぁ・・・うん・・・」
美樹は少し低いトーンで答えた。
その質問に、現実問題に引き戻された感じだ。
「山田は?」
「あたし?・・・バスだよ。」
「バスって・・・臨時で出るやつか。」
この夏祭りの日だけは、臨時でバスが何台か出る。最寄りの駅から電車も臨時を出しているくらいだ。
「乗れんの?なんか毎年見てるけど、すんごい人だろ?都会の通勤電車のような。」
「あぁ・・・そうだったっけ?」
確かに他の町からも沢山の来客があって、その臨時のバス逃すと帰る手段なくなるため、みんな必死に乗ってたな・・・

「・・・そうだ・・・ねぇ、リョーマ君。自転車なんでしょ?」
美樹は何を思ったか、手をポンっと叩いて松井君に聞いた。
「え?・・・あぁ。」
「じゃあさ、智子送ってもらったら?」

・・・はっ!!??

「・・・こいつんち、南地区だろ?」
松井君は、冷静に問いただした。
「そうだけど・・・ほら、浴衣姿でそんなギューギュー混みのなか大変じゃん?自転車だったら、こっから・・・どんくらいかかる?」
美樹はあたしに聞いてきた。

「・・・いや・・・ちょっと待ってよ・・・」

・・・なんで、そうなるの!?

「・・・こっからだと・・・4、50分くらいじゃね?」
代わりにケンちゃんが答えてきた。
「・・・帰りのこと考えたら、2時間近くかかんじゃん・・・」
松井君はボソボソと言ったが、そんなこと美樹は気にもしていない様子だ。
「そんくらいなら大丈夫でしょ?日頃部活で体鍛えてんだし。おじさんにはあたしが説明しとくから。ねっ。」
美樹はニコニコと松井君の背中を押した。
「自転車取ってくれば?」
「・・・・・・人ごとかよ。」
そう呟きながらも、松井君は素直に駐輪場の方へと向かった。
・・・ちょっとちょっとっ!!

あたしは美樹の腕を引っ張って、ケンちゃんから少し離れた。
「美樹っ!なんでそうなるの?」
あたしはすごい形相で聞いていたと思う。
「・・・ごめん・・・だって・・・そうしたがいいかなって・・・」
「えっ!?・・・」
「・・・このままみんなでバスターミナル行くと・・・またおねーちゃん会うでしょ?・・・彼氏にだって・・・。リョーマ君にとって・・・ちょっとあんまりかなって・・・」
「・・・・・・」
それはわかる。
きっとケンちゃんの事だから、松井君を道連れに、あたしらがちゃんと帰れると確認するまで見送るだろうし・・・そうしたら、嫌でもまた鉢合わせするに決まってる。
・・・でも・・・だからって、この流れは・・・
「ごめんっ!!・・・でも智子ならわかってくれるって思って・・・」
美樹は手を合わせながら頼んできた。

・・・・・・そんな〜・・・

「じゃあな。山田、たまには交代でこげよ。」
ケンちゃんが茶化すように言ってきた。
「・・・・・・こんなかっこで無理に決まってんでしょっ。」

松井君が自転車を取りに行ってきて戻ると、時間は9時を過ぎており、すぐさま美樹とケンちゃんはバスターミナルの方へと向かうことにした。
ケンちゃんの家はここから徒歩で数分だから、どうとでもなるみたい。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

なんとなく二人を見送っていたが、松井君は自転車にまたがった。

「・・・・・・乗れば?」
「・・・・・・うん。」

当然足を開いてまたぐことはできないから、いわゆる横乗り状態で後ろに座った。

・・・どこに掴まればいいのやら・・・

あたしはサドルの下の方を掴んでみた。

「・・・・・・落ちてもしんないよ。」
「え・・・落ちないよ、しっかり掴まってるから・・・。」
「・・・・・・腰に掴まればいいじゃん。」
「えっ・・・・・・じゃあ・・・」
断るのもなんだし、躊躇しながらも松井君の腰のあたりの服を握った。
「・・・・・・あのさ・・・服伸びるじゃん。」
そう言うとあたしの両手を掴み、自分のお腹の前まで持っていった。

―――っっ!!

あまりにもすんなりとされたもんだから、抵抗する余地もなかった。
結果的にあたしは、松井君にしっかりと抱きついた形になっていた。
当然顔は背中に、上半身の半分は完全に密着している。
「・・・じゃあ行くぞ。」
「あ・・・うん・・・」

ペダルをこぎ始めて、風が漂う。
それが今のあたしにとっては、すごく助かった。
・・・暑くてたまらなかったから。
気温がということもあるけど、それよりも、自分の体温が異常に熱いせいだ。
心臓の音も、彼に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、鼓動が速くなっていた。

・・・このまま・・・持つか・・・あたし・・・


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