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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第48回   48
夏祭り当日。

あたしらは、会場近くのバスターミナルで待ち合わせした。

「お〜いっ、こっちこっち〜。」
ケンちゃんが派手な衣装で、出迎える。

・・・大会、あの恰好で出るの?

一昔前の、アイドルっぽい衣装だ。
頭には、キラキラのハチマキ。
腕からは、ヒラヒラとのれんのような感じで、細く裂かれたビニール紐がつけられていた。

「お〜っ、3人とも浴衣似合ってんじゃん。」

みんなで浴衣にしようと合わせてきた。
美樹ときょんちゃんは、髪の毛が長いのでアップしてるから、いつもより大人っぽい。
あたしはショートからやっとボブまで伸びた髪型を、和風のヘアーピンで前髪を止めるのくらいだった。まぁ、首からは上は、たいして普段と変わりなく・・・。

「やっぱ、女って、衣装違うと変わるな〜。なぁっ。」
隣でポ〜っとしている田口君に相槌を打った。
「えっ・・・あぁ・・・そうだな・・・」
なんとか返事はできてたものの、傍から見て丸分かりのように、きょんちゃんに見惚れていた。

・・・口からよだれでも出すの?

「ケンちゃんこそ・・・なに、その格好?・・・手作り?この辺とか・・・。」
美樹はそう言って、ビニール紐を引っ張った。
「あーっ!!引っ張んなよー。テープで止めてるから取れやすいんだよ。せめて歌い終わるまではもっててもらわなきゃ。」
「・・・そう・・・頑張ってね・・・」
きっと、応援するのが恥ずかしくなってきてるに違いない。
「・・・ケン。出場者集まれって・・・打ち合わせするからって・・・。」
松井君が、放送が流れてたのを聞いてたらしく、ケンちゃんに伝えた。
「おー、わかった。」
「カラオケ大会、何時からなの?」
美樹が壁掛の時計に目をやった。
「6時からだよ。」
「じゃあ・・・もうそのまま向こうにいなくちゃかもだね。」
時刻は、5時半を回っていた。
「だろうな。まぁ、ちょっくら行ってくるわ。」
ケンちゃんは気合を入れた。
「そういえば、順番は?」
「ふふふふっ・・・ラッキーセブンの7番だ!ではっ、行ってくるぜいっ!!」
ビニール紐をヒラヒラとなびかせながら、走って行った。
「頑張ってね〜。」
「羽目外し過ぎんなよ〜。」
みんなの声援に手を振りながら、集合場所へと向かった。

「・・・まぁ、うちらも頑張って応援するか。場所取りに行く?」
「そうだな。意外に込みそうだし。」
残りの5人で、カラオケ大会の客席へと向かった。

老若男女問わず、すごい人だ。
あたしらは、なるべく前の方に座った。

そして、大会が始まった。
ケンちゃんの格好に負けず劣らずの衣装で、歌う人は結構いるみたい。
一歩間違えれば、仮装大賞にもなるんじゃ・・・そんな感じだ。
どんどん進み、いよいよ我らがケンちゃんの登場だ。

「キャーッ!!野村センパ〜イ!!」
「頑張ってーっ!!」

――っ!!

あたしらの声援より先にちょっと後ろの方から、黄色い声援が聞こえてきた。
思わず、そっちの方を見ると、同じ学校の1年生らしき集団があった。
5、6人くらいはいるだろうか?
ボンボンまで振って、ほんとにアイドルの応援みたいだ。

「なに?あの子らケンちゃんのファンなの?」
美樹が驚きながら、聞いてきた。
「・・・どうせ、出場すること、みんなに言いまくってたんじゃねーの?物好きな奴もいるな〜。」
田口君が、あきれながら答えた。
「ふ〜ん・・・でも、すごいね・・・」
きょんちゃんは半分感心していた。
「よ〜っし、あたしらも応援するよ〜っ・・・ケンちゃ〜んっっ!!ファイトーっ!!」
1年生に負けじと、美樹が声援を送った。
黄色い声援の子たちに手を振って応えていたけど、美樹の声に気づき、すぐこっちにも手を振ってきた。
田口君ときょんちゃんも美樹に続いた。
「ケ〜ン!!優勝あるのみ〜っ!!」
「ケンちゃ〜ん!!頑張れ〜っ!!」

あたしはというと・・・なんとなく、この声援合戦が目立ってきたので、恥ずかしくなってきた。
人の目を気にしてしまうなんて・・・やっぱ、歳のせいか?

松井君の方に目をやると、はなっから応援する気はなく、あぐらをかいて、頬杖をついていた。

まぁ・・・松井君が、張り切って、応援する訳ないか・・・

なんだかんだで、曲が流れだし、ケンちゃんが歌い出した。
これもまた、一昔前の・・・いや・・・これはこの当時の歌だ。
衣装とはまるでジャンルの違う、CHAGE & ASKAの「YAH YAH YAH」。
ドラマの主題歌だったやつで、売れてたもんなぁ。
懐かしくイントロを聞いていたが、歌い出したケンちゃんの歌声を、思わず聞き入ってしまった。

・・・・・・うまい・・・うまいじゃん・・・!!

意外に上手な歌声に、びっくりした。
あたしだけじゃなく、美樹もきょんちゃんも・・・
きっと会場にいる誰もが、あの恰好からは想像できない歌声に聞き入っていた。
そして、サビに近づいて、手拍子が誰からともなく始まった。
会場全体が、ケンちゃんの歌に盛り上がっていた。
それに合わせケンちゃんも絶好調のようだ。
自分流の振付を披露して、ステージ上をフルに使っている。
ちょっとしたライブみたい。

スタンディングオペレーション並みの拍手で、ケンちゃんの出番は終わった。
そして、結果は当然のように優勝。
賞品として、この町の商店街で使える商品券10000円分。
・・・まぁ、地元ならではだし、中学生にとっては高額の賞品になるだろう。

メインイベントも終わり、あとは8時から始まる花火待ちだ。
ケンちゃんの衣装替えのため、あたしらは再びバスターミナルで待っていた。
さすがにあのままの恰好でずっといるのも大変みたいだし・・・。
ここならトイレもあるし、ベンチもあるし、休憩している人も結構いた。

「ケンちゃんがあんな歌上手いとは思わなかった〜。リョーマ君も田口君も知ってたの?さほど驚いてなかったってことは。」
「まぁね〜、あいつ小学校んときの合唱コンクールでソロ任されてたし。」
ケンちゃんと田口君は同じ小学校出身で北地区だ。
「へ〜・・・でも・・・音楽の授業の時とか、上手だってことわかんなかったな〜・・・」
きょんちゃんが思い返してみる。
「まぁ、中学になったら授業の為に本気は出してないんじゃないの?」
「なんで?絶対あんだけうまかったら、成績いいんじゃない?ほら、うちってコーラス部に力入れてるから、引き抜きだってあるし、そういう子って先生に気に入られてるから、成績もいいらしいよ。」
美樹は、よっぽどケンちゃんの歌声に惚れ込んだみたい。
「・・・それが嫌なんじゃない?」
「え?」
松井君が、口を挟んできた。
「本気で歌うことが恥ずかしいってのもあるだろうけど、コーラス部なんて入らないだろ?あいつにはサッカーがあるんだし。」
サッカーか・・・。
この3人はサッカーで強く繋がってる部分が大きいもんな。
そんな事を思いながら松井君に目をやっていたが、何気にバスターミナルの外を見ていた彼の視線が変わった。
一瞬目を見開いたが、すぐにその先から視線が外された。

・・・?

なんだろうと思い、あたしは松井君が見ていた方向に目を移した。

――っっ!!
・・・・・・美加さんだ。
・・・隣には・・・知らない男の人。


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