言われるがまま、松井君の言う通りについて行った。
ベンチにはたった今バスが通り過ぎたからか、待ち人はいなかった。 幸いに、ベンチの上に設置されている屋根がちょうど日陰になっていて、周りに比べるとだいぶと涼しかった。
そこに先に松井君が座り、あたしも立っているのもなんだし、隣に腰をおろしながら聞いた。 「・・・なに?話って・・・?」 「・・・この間のことなんだけど・・・」
なんとなく、予想はしてたな、このちょっとの間に。
「・・・この間って?」 わかっていながらも、なお、聞き直した。
「・・・日曜だよ・・・おまえ、美加と知り合いって・・・なんで言わなかったの?」 ・・・「美加」・・・その呼び方に、反応してしまう。 「・・・はぁ!?・・・なんでいちいちそんなこと報告しなきゃいけないの?」 「・・・・・・おまえ・・・気付いてんだろ?」 「――っ!・・・なに・・が?」 「とぼけんなっ。・・・俺が・・前にあんたに言ったことだよ。・・・練習試合の帰りにバスで言ったこと・・・」
・・・・・・やっぱり・・・バレてた・・・
「・・・まぁ・・・あんだけのヒントで、思い当たるのって・・・早々いないし・・・でもっ、今、松井君が言ったから確信はしたけどっ。」 美樹からの情報でもあるってことは、知られてはいけないと思い付け加えた。
「・・・・・・墓穴掘ったって・・・ことか・・・。おまえが美加と面識あるんだったら・・・あんなこと言わなかったのに・・・」 そう言いながら、頭を抱えるようにして俯いた。
「・・・・・・言っとくけど・・・誰にも・・・松井君の気持ちは・・言ってないから・・・もちろん・・・美樹にも・・・。」 「・・・・・・あいつも薄々気づいてんじゃねーの・・・」 ・・・なんだ・・・わかってんじゃん・・・ 「・・・・・・祭り・・・ほんとは一緒に行くんじゃないの?」 「・・・行かないよ・・・あいつ・・・彼氏いるもん。そいつと行くんじゃね?」 「えっっ!!そうなのっ!?彼氏いるのっ!?」 思わず大声を出してしまった。 「・・・声でかいよ。」 松井君は、姿勢を元に戻した。 「あ・・ごめん・・」 ・・・それは・・・知らなかった・・・っていうか、それ知ってても、まだ、美加さんのこと・・・ 「・・・未練たらしいって思ったんだろ?」 「えっ・・そんなこと・・・ないよ・・・未練たらしいなんて・・・」 ・・・ただ、すごいって・・・素直に、すごいって思えた。 それを口にすることはできなかったけど・・・ 「・・・・・・あきらめなきゃいけないのは、わかってんだけどね・・・あほみたいに、長々と・・・」 「だめだよっ、あきらめちゃっ!」 「・・・は?・・・」 思わず言ってしまったけど・・・でも、なんて言ったらいいんだろう・・・ 「・・・っだから・・・今はその・・・無理かもだけど・・・でも、いつかはっ・・・振り向いてもらえるまで・・・頑張っても・・いいんじゃ・・ないかな・・・」 「・・・おまえさ・・・この間も、そんな適当なこと言ってたよな。」 「適当って・・・そんなんじゃないよっ。」 「適当じゃんっ・・・そんな先の事なんて、なんでわかんだよっ。」 「―――っ、それは・・・そうだけど・・・」 ・・・わかる・・・わかるの・・・あたしは・・・知ってるから・・・ ・・・でも・・・そんなこと言えないし・・・言ったところで、信じてもらえないし・・・ 「・・・だって・・・好きなんでしょ?今もあきらめなきゃって言いながらも・・・好きなんでしょ?だったら・・・無理にあきらめることないじゃんっ。あきれめきれないんじゃないの?」 「・・・あんたは・・尾上の事、あきらめたじゃん。」 「あたしはっ・・・違うじゃん、あたしと松井君じゃ・・・違うじゃん。」 「・・・同じだよ。」 「どこが同じよっ。」 「・・・・・・言ってたじゃん・・・好きで好きで、しかたなかったら・・・我慢せずに会いに行くって・・・そうじゃないってことは・・・そうでもないって。」 「・・・そりゃあ・・言ったけど・・・」 「・・・俺もそうだもん。」 「えっ・・・?」 「・・・美加が家を出て行くって知った時は・・・すごいショックだったけど・・・でも、日が経つにつれ、毎日の生活送ってたら・・・平気になってたっていうか・・・そりゃあ、こうしてたまに会うとやっぱり、気持ちは動くけど・・・でも、また普段の生活に戻ったら、なんともなく過ごせるし・・・その程度ってことなんじゃないの?」 「・・・・・・っ」 何か言いたかったけど、うまく言葉が出てこなかった。 どうしよ・・・あたしが余計なことを言ったばっかりに、この二人の運命が変わってしまったら。 大袈裟かもしれないけど、こんだけ彼の気持ちがわかってしまうと、なおさら責任を感じてしまう。 あの時も、美加さんに彼氏ぐらいいたかもしれない。 あんだけの美人を、周りがほっとくわけないし。 それでも、松井君の気持ちはずっと変わらなかったからこそ、結ばれたんだろうし・・・。 どうしよ・・・どうしよっ・・・
「・・・別にあんたが悩むことでもないでしょ。」 少し笑うように言った。 「自分のことでもないのに、よくそんな必死になれるね。」 「それはっ・・・あたしの・・・せいで・・・あきらめてほしく・・ないから・・・。」 「誰もあんたのせいなんて、言ってないじゃん。」 「・・・そう・・だけど・・・」 「・・・・・・それにしても・・・なんで、俺あんたにこんな話してんだろ?」 「えっ・・・」 「・・・・・・変なの。」 松井君はそう言って、笑いながら立ち上がった。 「・・・ケンの奴・・・まだやってんのか?」 言われて気付いたが、ケンちゃんの発声練習がここまで聞こえてくる。 周りの談笑も。 「・・・まだいるんでしょ?」 店の方に戻りだした。 あたしも立ち上がり、後をついて行く。 「・・・うん、美樹も来てるし、まだ帰んないと思う。」 「・・・俺、先帰るって、ケンと田口に言っといて。」 「・・・あぁ・・・うん、わかった。」
自転車を取りに行くためか、学校の方へと歩いて行った。 あたしは、なんとなく、松井君の後ろ姿を見送った。
・・・「なんで、俺あんたにこんな話してんだろ?」・・・ その言葉に、あたしも考えさせられた。 あたしだって、あの帰りのバスで、ペラペラと自分の気持ち言いまくってたし・・・。 ・・・人って・・・自分と同じ境遇だと・・・共感もてちゃうもんな・・・ 友達にも言えないこと、あいつの前では、サラッと言えたし。
きっと・・・彼も、同じことだ・・・
・・・ふぅ〜っ・・・
あたしは一息ついて、みんなのいる店へと戻った。
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