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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第47回   47
言われるがまま、松井君の言う通りについて行った。

ベンチにはたった今バスが通り過ぎたからか、待ち人はいなかった。
幸いに、ベンチの上に設置されている屋根がちょうど日陰になっていて、周りに比べるとだいぶと涼しかった。

そこに先に松井君が座り、あたしも立っているのもなんだし、隣に腰をおろしながら聞いた。
「・・・なに?話って・・・?」
「・・・この間のことなんだけど・・・」

なんとなく、予想はしてたな、このちょっとの間に。

「・・・この間って?」
わかっていながらも、なお、聞き直した。

「・・・日曜だよ・・・おまえ、美加と知り合いって・・・なんで言わなかったの?」
・・・「美加」・・・その呼び方に、反応してしまう。
「・・・はぁ!?・・・なんでいちいちそんなこと報告しなきゃいけないの?」
「・・・・・・おまえ・・・気付いてんだろ?」
「――っ!・・・なに・・が?」
「とぼけんなっ。・・・俺が・・前にあんたに言ったことだよ。・・・練習試合の帰りにバスで言ったこと・・・」

・・・・・・やっぱり・・・バレてた・・・

「・・・まぁ・・・あんだけのヒントで、思い当たるのって・・・早々いないし・・・でもっ、今、松井君が言ったから確信はしたけどっ。」
美樹からの情報でもあるってことは、知られてはいけないと思い付け加えた。

「・・・・・・墓穴掘ったって・・・ことか・・・。おまえが美加と面識あるんだったら・・・あんなこと言わなかったのに・・・」
そう言いながら、頭を抱えるようにして俯いた。

「・・・・・・言っとくけど・・・誰にも・・・松井君の気持ちは・・言ってないから・・・もちろん・・・美樹にも・・・。」
「・・・・・・あいつも薄々気づいてんじゃねーの・・・」
・・・なんだ・・・わかってんじゃん・・・
「・・・・・・祭り・・・ほんとは一緒に行くんじゃないの?」
「・・・行かないよ・・・あいつ・・・彼氏いるもん。そいつと行くんじゃね?」
「えっっ!!そうなのっ!?彼氏いるのっ!?」
思わず大声を出してしまった。
「・・・声でかいよ。」
松井君は、姿勢を元に戻した。
「あ・・ごめん・・」
・・・それは・・・知らなかった・・・っていうか、それ知ってても、まだ、美加さんのこと・・・
「・・・未練たらしいって思ったんだろ?」
「えっ・・そんなこと・・・ないよ・・・未練たらしいなんて・・・」
・・・ただ、すごいって・・・素直に、すごいって思えた。
それを口にすることはできなかったけど・・・
「・・・・・・あきらめなきゃいけないのは、わかってんだけどね・・・あほみたいに、長々と・・・」
「だめだよっ、あきらめちゃっ!」
「・・・は?・・・」
思わず言ってしまったけど・・・でも、なんて言ったらいいんだろう・・・
「・・・っだから・・・今はその・・・無理かもだけど・・・でも、いつかはっ・・・振り向いてもらえるまで・・・頑張っても・・いいんじゃ・・ないかな・・・」
「・・・おまえさ・・・この間も、そんな適当なこと言ってたよな。」
「適当って・・・そんなんじゃないよっ。」
「適当じゃんっ・・・そんな先の事なんて、なんでわかんだよっ。」
「―――っ、それは・・・そうだけど・・・」
・・・わかる・・・わかるの・・・あたしは・・・知ってるから・・・
・・・でも・・・そんなこと言えないし・・・言ったところで、信じてもらえないし・・・
「・・・だって・・・好きなんでしょ?今もあきらめなきゃって言いながらも・・・好きなんでしょ?だったら・・・無理にあきらめることないじゃんっ。あきれめきれないんじゃないの?」
「・・・あんたは・・尾上の事、あきらめたじゃん。」
「あたしはっ・・・違うじゃん、あたしと松井君じゃ・・・違うじゃん。」
「・・・同じだよ。」
「どこが同じよっ。」
「・・・・・・言ってたじゃん・・・好きで好きで、しかたなかったら・・・我慢せずに会いに行くって・・・そうじゃないってことは・・・そうでもないって。」
「・・・そりゃあ・・言ったけど・・・」
「・・・俺もそうだもん。」
「えっ・・・?」
「・・・美加が家を出て行くって知った時は・・・すごいショックだったけど・・・でも、日が経つにつれ、毎日の生活送ってたら・・・平気になってたっていうか・・・そりゃあ、こうしてたまに会うとやっぱり、気持ちは動くけど・・・でも、また普段の生活に戻ったら、なんともなく過ごせるし・・・その程度ってことなんじゃないの?」
「・・・・・・っ」
何か言いたかったけど、うまく言葉が出てこなかった。
どうしよ・・・あたしが余計なことを言ったばっかりに、この二人の運命が変わってしまったら。
大袈裟かもしれないけど、こんだけ彼の気持ちがわかってしまうと、なおさら責任を感じてしまう。
あの時も、美加さんに彼氏ぐらいいたかもしれない。
あんだけの美人を、周りがほっとくわけないし。
それでも、松井君の気持ちはずっと変わらなかったからこそ、結ばれたんだろうし・・・。
どうしよ・・・どうしよっ・・・

「・・・別にあんたが悩むことでもないでしょ。」
少し笑うように言った。
「自分のことでもないのに、よくそんな必死になれるね。」
「それはっ・・・あたしの・・・せいで・・・あきらめてほしく・・ないから・・・。」
「誰もあんたのせいなんて、言ってないじゃん。」
「・・・そう・・だけど・・・」
「・・・・・・それにしても・・・なんで、俺あんたにこんな話してんだろ?」
「えっ・・・」
「・・・・・・変なの。」
松井君はそう言って、笑いながら立ち上がった。
「・・・ケンの奴・・・まだやってんのか?」
言われて気付いたが、ケンちゃんの発声練習がここまで聞こえてくる。
周りの談笑も。
「・・・まだいるんでしょ?」
店の方に戻りだした。
あたしも立ち上がり、後をついて行く。
「・・・うん、美樹も来てるし、まだ帰んないと思う。」
「・・・俺、先帰るって、ケンと田口に言っといて。」
「・・・あぁ・・・うん、わかった。」

自転車を取りに行くためか、学校の方へと歩いて行った。
あたしは、なんとなく、松井君の後ろ姿を見送った。

・・・「なんで、俺あんたにこんな話してんだろ?」・・・
その言葉に、あたしも考えさせられた。
あたしだって、あの帰りのバスで、ペラペラと自分の気持ち言いまくってたし・・・。
・・・人って・・・自分と同じ境遇だと・・・共感もてちゃうもんな・・・
友達にも言えないこと、あいつの前では、サラッと言えたし。

きっと・・・彼も、同じことだ・・・

・・・ふぅ〜っ・・・

あたしは一息ついて、みんなのいる店へと戻った。


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