20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:あの頃へ 作者:こまち

第46回   46
「「お疲れ様でした―!!」」
「1年生!今日はコート整備念入りにね!」
「はーい。」

今日の部活は終わった。
ほんと毎日毎日、嫌になるくらいの晴天気。
日差しも痛いくらい・・・。

きょんちゃんと水道場に顔を洗いに行った。
日焼け止めをたっぷり塗っていたから、しっかり落とさなきゃ。
というか、もう汗で落ちてるな。

「ぷは〜っ・・・気持ちぃ〜・・・」
「・・・今日も疲れたね〜・・・清田でかき氷食べた〜い・・・」
「いいねぇ〜・・・行こっか。」
「うんっ、行こう行こう!」

学校から下って、すぐのバス停の前に、清田商店という、田舎にはありがちの店があった。
今で言ったら、コンビニ代わりの店だ。
24時間ではないけれど・・・
部活帰りの生徒は、たいていここで腹ごしらえをしていた。

ジャージ姿のまま、店に向かったが、早速先客がいた。
店内に簡易のテーブルと椅子があったので、ここで飲食することもできる。
今日みたいな暑い日に、涼しい店内で食べたいのはみんな同じだ。

バレー部の人たちが4人いたが、端っこが空いていたので座らせてもらった。
あたし達の後にも次から次へと、生徒たちが入ってくる。
もう少し遅かったら、炎天下の下で食べる羽目になっていただろう。

かき氷を半分くらい食べたところで、夏休みに入ってから、会っていない姿と声がした。
「やっぱり〜、ここにいた〜。」
「えっ!!美樹!?どうしたの?」
店の入り口から入ったところだ。
美樹は部活には入っていないから、夏休みに学校に来る事なんてなかった。
当然、私服姿だし。

「えへへ、ヒマだったから遊びに来たんだ。でも、学校で二人の姿なかったからもう帰っちゃったかと思ってさ〜。」
「よくわかったね〜、ここにいるって。」
「うんっ、聞いたんだ。」
「・・・誰に?」

あたしときょんちゃんが不思議に思っていると、見慣れたメンバーが入ってきた。

「おっ、やっぱいただろう?どうせなんか食ってると思ったよ。」
・・・げっ・・・
ケンちゃんだ。その後ろに田口君、そして、あの日以来顔を合わせてなかった松井君だ。

あたしの反応とは違って、きょんちゃんは少しうれしそう。
・・・田口君・・・いるもんね・・・
認めたくない現実だ。

「・・・自分らだって、何か食べたいんでしょ。」
あたしは、溶けてきたかき氷をストローでズズズーっと飲みながら、言い返した。
「あったり前じゃん!おまえらテニス部と違って、体力の消耗がハンパじゃないんだよ、サッカー部は!」
「・・・あっそ。」
「さぁて、何にしよっかな〜・・・」

ケンちゃんは店内をウロウロしだした。
それに続いて田口君も足を進めたが、その時、きょんちゃんと目があったらしく、「お疲れ」とボソッと言ったのが、あたしにも聞こえた。
とっさにきょんちゃんに目をやると、案の定赤くなって、コクンとだけうなづいている姿が見えた。

・・・おいおいおい・・・ほんとに!?

また信じられない光景を目にしてしまったよ。

田口君の後ろにいた松井君には、一切目を向けなかった。
まだこの間のことは、根に持ってるし・・・向こうもそうかもな。

「あっ、そうだ!智子、この間の日曜日、おねーちゃんに会ったんだって?」
「えっ・・・あぁ・・・うん。」
思わず見たくないはずの松井君に目をやった。
買う物を選んでるみたいで、こっちには気にもしてない様子だ。
「え〜?そうなの?」
きょんちゃんもさっきの余韻はなくなり、会話に入ってきた。
「・・・うん、ほんと偶然で、びっくりしたよ。おごってもらったしさ。またお礼言っといてよ。」
「ううん、いいのいいの!どうせおねーちゃんが無理矢理誘ったんでしょ?」
「・・・いやぁ・・・」
・・・そうです、とはいいにくいなぁ・・・
「・・・それからさ・・・」
美樹は少し小さめの声になった。
それに合わせ、あたしときょんちゃんも体を寄せ、美樹の方に耳を傾けた。
「・・・また、リョーマ君とケンカしたんだって?」
−−っ!!
「え〜っ・・・そうなの?・・・っていうか、松井君もいたの?」
思わず声が大きくなったきょんちゃんだったが、すぐにボリュームを下げた。
「うん、その日おねーちゃんとリョーマ君一緒に出掛けてたんだ。あたしも誘われたけど・・・まぁ、なんていうか、一応断ってさ。悪いかな〜って思って・・・」
「・・・あぁ・・・なるほど・・・」
きょんちゃんは納得しながら、チラッと松井君に目をやった。

「・・・ケンカというか・・・向こうが仕掛けてきたんだよ。」
あたしは残りのかき氷を飲んでしまった。
そして空の容器をテーブルの上に置いた。
「なんか・・おねーちゃんの話じゃ、ナンパがどうとかって言い合ってたって言ってたけど・・・。」
「ナンパ!?」
「・・・内容はどうあれ・・・松井君、あたしに美加さんといるところ見られたのが嫌だったんじゃない?だから、早くその場から追い返そうっと思って、ケンカ仕掛けてきたのかも。」
「・・・なんで?なんで嫌だったのかな?だって、智子がリョーマ君の気持ち知ってるなんて、わかんないんじゃない?」
「えっ・・・うん、まぁ、それはそうだけど・・・なんか感づかれる・・・とか思ったんじゃない?ほらっ、あの松井君が、女の人と一緒にいることって、珍しいじゃん?だから、あたしが変に感づいてこないかって・・・思ったんじゃない?」

・・・やばいやばい・・・松井君の白状については、言ってないもんね・・・
なんとか、うまくごまかせたかな・・・?

「そっか〜・・・で、まだそのまま?」
「え?なにが?」
「だからっ、リョーマ君と仲直りしてないの?」
「・・・仲直りって・・・別に、元々仲良くないし・・・あたし悪くないし。」
「何言ってんの?仲いい方じゃん。ケンちゃんや田口君は同じクラスだから余計だけどっ・・・」

「なになに?・・・俺らがなんだって?」
「「えっ!!」」
いつの間にか、買い終えた3人があたしらの後ろに立っていた。

「・・・あっ・・・ううん・・・その・・・最近あたし達って・・仲いいよね〜って・・・」
美樹が苦し紛れにごまかしてるのがわかる。
「・・・達って・・・俺らも入ってるってこと?」
ケンちゃんは内容を確認するように聞いてきた。
「・・・うんっ、もちろんだよっ・・・」
「そっかそっか〜。そうだよな?俺ら仲いいよな〜。」
「・・・うんうん・・・」
あたしときょんちゃんもケンちゃんの笑顔につられて笑った。

どうやら、会話の内容は聞かれてないな・・・
とりあえず一安心・・・

「・・・じゃあさ、仲良しってことで、来週の夏祭り一緒に行こうぜ!」

・・・は!?

「・・・祭りって・・・あぁそっか。来週だっけ?」
この町の夏祭りが8月の第一土曜日に毎年行われてる。
港があって、そのふ頭から打ち上げれらる。
夕方から始まり、カラオケ大会や盆踊り、ちょっとした歌謡ショーが開かれ、8時過ぎに花火が打ち上げれらる。
その花火がけっこうきれいで、船で進みながら花火を海に投げる、水上花火がいちばんのメインだ。
地元ならたいていの人が行っているし、隣町とかからでもやって来るくらい、この辺では有名な祭りだ。

この祭りは、16年後の本当のあたしの時代でもまだ続けられている。
でも、ここ数年は行ってないな・・・行く相手もいないかったし・・・。

「そう!来週だよ。実はな、ふっふっふっふ・・・なんと俺、カラオケ大会出場しま〜す!!」
ケンちゃんはそう言って、Vサインをしている。
「「え〜っ!!ほんとに!?」」
あたしらは一斉に驚いた。
ちょっとした大会とはいえ、予選まで行うほど、出場者が多い人気の大会だ。
「マジマジ。俺もびっくりしたよ〜。」
田口君は、たった今買ったパンをほおばりながら言ってきた。
「・・・予選通ったんだ・・・」
「ふふんっ、もちの、ろんだ!!あっはっはっはっは〜。」
「すご〜い、ケンちゃん!!絶対応援行くね〜!」
美樹は話の流れで祭り行きを承諾した。
「お〜っ、頼むぞ〜!!中田と山田も、いいなっ!」
「え・・あぁ、うんっ。頑張ってね。」
きょんちゃんも、戸惑いながらもOKした。

・・・・・・この二人が行くなら・・・あたしも行くしかないよね・・・
・・・でも・・・久しぶりの花火祭り・・・ちょっと、行ってみたいな・・・

「・・・ケンちゃん!出るからには・・・わかってるだろうね?」
あたしは、答えを求めた。
「お〜よっ!優勝に決まってんだろう!?まっかせとけ〜。」
「「あははは〜」」

「・・・俺、パス。」
「・・・え?」
みんなが盛り上がっているムードを一気に下げた。
いつの間にか席が空いており、座ってパンを食べている松井君にみんなが注目した。
「なんだよ、パスって。おまえ行かないの?祭り。」
ケンちゃんはすぐさま、松井君の肩に手を回した。
「・・・俺、人混み嫌いだから。」
「はぁ〜!?何言ってんだよ?・・・あっ、もしかしてリョーマ・・・実は先約ある・・とか?」

――っ!!

ケンちゃんの言葉に思わず反応した。
もしかして、一緒に行くのかな?・・・美加さんと・・・まだ、こっちにいるしな・・・
きっとあたしだけじゃないだろう、そう思ってるのは。

「・・・そんなんじゃねーよ。ただ、ほんとにあんな人の多いところ行くのが嫌なだけ。」
松井君は平然として、答えた。
「・・・だめだっ!」
「は!?」
「そんな理由で行かないのは、俺が認めないっ!」
「・・・ケン、何言ってんだよ、なんでっ・・・」
「だめだったらだめっ!!」
松井君がしゃべるのも遮って、ケンちゃんは押し通した。
「山下っ、当日リョーマの迎え頼んだぞ!」
「えっ?・・・あたし?」
美樹は自分にそんな責任を任せられるとは思わず、戸惑ってしまう。
「そうだ。家も近いことだし、山下の言うことだったら聞くだろうし。」
「え・・・あぁ・・・うん・・・」
しかたなしに、承諾した美樹だったが、その様子を見て松井君は観念したようだ。
「・・・わかったよ・・・行けばいいんだろ?・・・美樹、迎え来なくていいよ。ちゃんと行くから。」
しぶしぶといった感じで答えた。
「そっかそっか、わかればいいんだ、わかれば。よしっ、今日からボイストレーニングだな。あっ、あっ、あっ、あっ、あ〜♪・・・」
ケンちゃんが他の人の目も気にせず、音程にのって、発声練習をしだした。

・・・ほんと・・・ケンちゃんって、強引だなぁ・・・

それにしても・・・少し松井君に同情しながらも、ほんとうは約束があったのでは・・・という疑いも出てきた。
美加さんがこっちにいる期間なんて限られてるし、そんな貴重な日を無駄にはしたくないだろうし・・・

あたしはそう思いながら、空の容器を店の外にあるごみ箱に捨てに行った。
店の中では、ケンちゃんのマネごとレッスンが続けられている。

・・・外・・・あっつ・・・
あたしは高く上っている太陽を、手で仰ぎながら見上げた。
室内との温度差に、気持ち悪いくらいだ。

「・・・ちょっといい?」

・・・へ?

振り向くと、いつの間にか松井君も外に出ていた。
あたしにそういうと、店から離れようとした。

「・・・え・・ちょっと・・なに?」
あたしは、事の流れについていけず、引き止めた。

「・・・話、あるから。」
そして、バス停横にある屋根つきのベンチへと向かった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 19737