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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第45回   45
1学期の終業式も終わり、ついに夏休みだ。
といっても、平日は部活の為、通学しなければならない。
余計にお肌の手入れに力が入る。
とてもおこづかいではやっていけなかったが、成績が急激に伸びた事で、臨時収入をもらえることができた。
別に自分から催促したわけではないが、ここは素直に受け取っておこう。

そして、夏休みに入って、初めての日曜日。
母が街まで買い物に行くのについていった。
ここら辺では一番栄えているところだったので、自分の足ではいけないから、母が街へ行く時は、たいてい連れてってもらっている。

「じゃあ、2時半にここね。」
ランチを食べ終え、母と時間を待ち合わせして別行動になった。
母の買い物に付き合ってたら、自分の見たいものが見れなくなってしまうし。

臨時収入で服を買おうと思い、雑誌でみた店へと向かった。

この時代の流行りの服はなんとなく抵抗があって、自分なりに着たい服を着ていた。
周りからすれば、あたしの服装は誰も共感を得ないだろう。

かけられている服を手でめくるように見ていた。
すると向こうからも同じように服を見ている女の人が近付いてきた。
このままではぶつかるので、あたしは横にどけようとした。
その時、
「・・・あれ?・・・たしか・・・」
すれ違いざまに、その人は声をかえてきた。
なにげなくあたしも振り返ると、すごい美人が・・・
いや・・・美加さんだ!
目を丸くしていると、美加さんはまた話しかけてきた。
「・・・やっぱり!!えっと〜・・・と・・もこちゃん?」
「・・・あ・・・はい・・・」
「やだ〜、久しぶり〜っ!」
美加さんはそういうとあたしに抱きついてきた。
「・・・えっ・・・あのっ・・・」
慣れない応対にとまどってしまう。
・・・なんか、いいにおいするし・・・。

「あ、ごめんごめん。ついつい偶然会えたから嬉しくって。」
そう言って、あたしを解放してくれた。
「一人で来たの?」
「え、あー、母と一緒に・・・あとで待ち合わせしてるんですけど・・・。」
「そうなんだ〜。」
「・・・えっと、もしかして美樹・・・と?」
あたしは店を見回したが、それらしき姿は見えない。
「ううん、美樹には振られちゃった。あたしの運転する車には乗りたくないって。冷たいよね〜。」

そういえば、大学も夏休みだから、帰ってくるって美樹が言ってたな・・・

「車って・・・美加さん免許持ってるんですか?」
「うん、高校卒業してすぐに取ったの。でも向こうで車があるわけでもないし、普段乗ることないでしょ。だからこうして家に帰った時くらいは、練習しとかなきゃね。今日だっておごるからって言ったのに、美樹の奴、嫌だって言ってさ〜。ま、代役見つけて来たんだけどね。」
「・・・代役?」
「そう!・・・あっ、来た来た。」
美加さんは店の外に目をやり、その人物に声をかけた。
「リョーマっ!!こっち!!」

えっっ!!

美加さんが呼んだのと同時に、松井君の姿をとらえた。

・・・うそ・・・でしょ・・・?

松井君も、美加さんの隣にいるあたしに気付いた様子だ。

・・・あたしと同じく驚いている。
・・・無理もないか。
「・・・なんで・・・?」
「・・・どうも・・・」
なんとなくよそよそしく返事をしてしまった。
「あ〜、そっか〜。二人とも顔見知りだね。同じ学校なんだから当たり前か。」
あたしと松井君の態度とは違って、一人楽しそうに話している。
「・・・そっちこそ・・・顔見知り?」
まさかあたしと美加さんが面識あるなんて、思ってもいなかったんだろう。
「うんっ、前に家に遊びに来てくれてたもんね〜。」
「・・・はぁ・・・」
・・・やばいなぁ・・・あたしが感づいてると思われたくもないし・・・
「あっ、そうだ。ねぇ、智子ちゃん、お母さんと何時に待ち合わせ?」
「へ?・・・えっと〜、2時半・・です。」
「2時半?・・・じゃあ、まだ時間あるね。どこかでお茶しない?」
「「えっ!?」」
美加さんの誘いに、あたしはもちろん、松井君まで驚いた。
「いいじゃん、おごるから。あたしバイトしてるし、お茶くらいおごらせてよ。ねっ、決〜まりっ。じゃあ行くよ〜。ほら、リョーマも行くよ。あんたのど渇いたって言ってたし、ちょうど良かったじゃん。」
美加さんは半ば強引で、店を出て行った。

・・・どうしよう・・・時間うそつけば良かった。

「・・・一度言ったら聞かない人だから、行くしかないんじゃない?」
戸惑うあたしに松井君はそう言うと、美加さんの後をついて行った。

・・・この間、松井君の気持ちを聞いてしまった事もあるし・・・なんとなく、行きづらいんだけど・・・
まぁ、名前は聞いてないにしても・・・歳の差6つって・・・美加さんだって、思うよな、この状況じゃ。

「智子ちゃんっ!早くっ!」
なかなか足が動かないあたしに、再度言ってきた。
「・・・はい・・・」

断ることもできず、二人の後をついて行った。


「えっとね〜、アイスコーヒー。智子ちゃんは?」
「あ・・・同じでいいです。」
「俺も。」
「あっそ、じゃあ3つお願い。」
「かしこまりました。」

・・・今が1時半だから・・・30分くらいは、いなくちゃかなぁ。
・・・でも買いたい服も買ってないし、飲んですぐってわけにはいかないかな・・・
あたしは早速帰ることを考えていた。
だったら最初から断われって感じだけど・・・このツーショットを間近で見てみたい気もした。
・・・好きな人の前で、彼はどういう風にしてるんだろうって。
美樹が前に言っていた、他の子との接し方が全然違うってのを、この目で見てみたかった。

「でも、一瞬わかんなかった〜。な〜んか見たことあるんだけど、人違いかなって思っちゃった。だって、智子ちゃん、前に会った時よりも、ぐんと大人っぽくなってるんだもん。」
「え・・・そうですか?」
「うんっ、私服だからってのもあるんだろうけど、とてもリョーマと同級生には見えないわ。・・・っていうか、リョーマが幼いだけ?」
「・・・ほっとけ。」

なんてことのない会話なんだろうけど、今のあたしにはすごくヒヤヒヤなんだけど。
松井君にとって、「幼い」なんて言葉はタブーのような気が・・・

「・・・あのっ・・車って、美加さんの?」
何故か必死に話をそらそうとしてしまった。
「ううん、まさか〜。親のだよ。まだ自分の車なんてとうてい無理よ。卒業して社会人になってからかな?」
「そうなんだ・・・でも、いいなぁ。自分で街まで行けるんだもん。美樹もたまに乗ってるんでしょ?」
「うん・・・前はね。最近はなんか用事があるとか言って全然だよ。」
「・・・そりゃあ命が惜しいからだろ?」
美加さんの隣から突っ込みが入った。
「なに〜?あたしの運転で寝てたの誰よ?よっぽど安心してたからでしょ?」
「ちがうよ。どうせ死ぬなら寝てるうちがいいじゃん。」
「この〜っ、ほんっと生意気!智子ちゃん、こいつ学校でもこうなの?」
「え・・・あぁ・・・まぁ・・・」
「やっぱり〜?ったく、そんなんだから彼女の一人もできないのよ〜。」
――!!・・・それを、美加さんが・・・言う・・・?
「・・・別に。いらないし。」
そっぽを向いて答えた。

・・・あぁ・・・なんか・・・痛いほど、彼の気持ちが・・・伝わってくるんですけど・・・

「ねぇねぇ、美樹の話だと、智子ちゃんも彼氏いないの?」
「えっ・・・」
・・・あたしにふってくるとは・・・
「・・・はい・・いませんよ。」
「なんで〜!?なに、理想高いの?」
「・・・は?・・・いや・・・別に・・・」

「お待たせしました。アイスコーヒーです。」
いいタイミングで持ってきてくれた。
早速のどの渇きを潤す。
変な意味で汗が出るし・・・。

「だって〜、絶対モテるでしょ?」
・・・話・・・続けるの?
「・・・いや・・そんなことっ」「・・・モテるよな。」

なっ・・・!!

あたしの否定と同時に、なぜあんたが答えるの!?

あたしは思いっきり松井君を睨んだ。
相変わらず平然としているが。

〜〜〜こいつーっ!!
人が気使ってやってんのに・・・なんだよ、その態度っ!

「やっぱり〜!!なになに、言い寄ってくる男には興味ないの?」
「・・・え・・・その・・・」
美加さんって・・・けっこう押しが強いな・・・
「それとも好きな子いるの?」
「・・・いや・・・そういう訳じゃ・・・っていうか、そんなモテないですよ。松井君に比べたらそんなモテてるなんて言えないし。」
・・・さっきのお返しだっ。
当然のように彼は睨んできたが、あたしはすぐ目をそらした。
「・・・そうらしいね〜、この子がモテまくってるんでしょ?ほんっとみんな上辺しか見てないんだね〜。」
「ですね〜!やっぱり男は中身が大事ですよね〜。まぁ、みんなも薄々わかってきてんじゃないかな?最近そういう話聞かないし。」
満面の笑みで、美加さんに賛同した。

・・・さっきまでかわいそうに思ったのは、取り消すわっ。

「・・・人の事言えないでしょ。山田だって、上辺でしかモテてないじゃん。現に身近な奴からなんて、言われたことないっしょ。」

・・・こいつは〜っ!

「だからっ!別にあたしはモテてないって言ってんじゃん。」
「・・・変なナンパにも引っかかってたじゃん。」

・・・変なナンパ?・・・あぁ!あの時の!?

「引っかかってないわよっ。」
「・・・普通に対応してたじゃん。」
「してないわよっ、それに、あれがナンパだったなんてその時はわかんなかったのっ。どっちみち追い払おうとしてたのっ。そしたらあんたが割り込んできたんでしょ?」
「・・・助けてあげたのに、そういう言い方するんだ。」
「誰がいつ頼んだ?そんなんで恩きせがましく言って欲しくないんだけどっ!」
「・・・まぁまぁ・・・二人とも落ち着いて。ほら・・・コーヒー飲んで。ねっ。」
話の種をまいた美加さんが、間に入ってきた。
「・・・なんか・・・二人って・・・似てるね。」
「「はぁ!!??」」
あたしと松井君は同時に美加さんの方を見た。
「・・・っぷ、あははははは。ほら〜、そっくりじゃん。クスクスクス・・・なんかいいね、言いたい事言い合えるって。」

・・・美加さん?
一瞬、笑っているんだけど、悲しそうな表情に見えたような・・・

「・・・言い合えるって・・・そんなきれいなもんじゃないでしょ?ほんとこいつ口悪いし・・・。」

すぐに美加さんへの疑問は飛んで行った
ギロッツ!!
それは、こっちのセリフっ!!
また言い返そうとしたけど、美加さんが止めに入ってくれた。

「リョーマっ。言い過ぎ!もういいでしょ。ごめんね、智子ちゃん。」
「あ・・・いえ・・・」

別に美加さんが謝ることじゃないし・・・。
そう言いかけたけど、なんとなく止めといた。

あたしは時計に目をやった。2時を回ったところだ。

「あのっ・・・あたし失礼しますね。」
カバンから財布を取り出した。
「えっ、もう?」
「はい・・・まだ見たい店あるし・・・。」
「そっか・・・あぁ!お金はいいからっ。」
「いや、でも・・・」
「ほんといいって。あたしが無理やり誘ったんだし。ねっ、しまって。」
「あ・・・はぁ・・・じゃあ、すみません。お言葉に甘えて・・・。」
「いえいえ。またさ、家にも遊び来てよ。あたしまだ2週間くらいは家にいるし。」
「あ、はい。わかりました。じゃ・・・」

美加さんにだけ笑顔で挨拶をした。

あっちだって、見てないだろうし。
ほんっと、松井君とどっか店に入ると、ケンカしてしまうな・・・
・・・いやいや、仕掛けてくるのは向こうだし・・・。
あたしに美加さんと一緒にいるところ見られたのが、そんなに嫌だったの?
・・・だったら、あたしに気持ちを白状してこなきゃいいんじゃんっ。

ほんと・・・何考えてんだかわかんないよ。


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