その日の夜、美樹ときょんちゃんからそれぞれ電話があった。 美樹には、先生のこと知らないと言ってくれたことと、松井君と仲直りしたかということ。 きょんちゃんには、とても電話で済みそうじゃなかったから、明日学校ですべて話すと約束をして電話を切った。
そしてお風呂に入りながら、今日の事を振り返っていた。
先生との再会。 突然の先輩からの告白。 松井君とのバトル、そして彼の気持ち。
一番心に残っていたのは・・・不思議と松井君の美加さんに対する気持ちだった。
なぜだろう・・・ あたし自身も先生への気持ちとか、美樹やきょんちゃん以上に話してしまっているし・・・ 以前とはまるで違う関係になって、彼への印象が今まで抱いていたものとは違うのは確実だ。なんとなく、もっと松井君の事を知りたくなっていた。
次の日。 約束通り、きょんちゃんに先生への恋心を白状した。 そして、今はそれがないという事も。 木村先輩からの告白も、美樹にも話した。
「え〜っ!?断るの?なんで?」 「友達からとしてつきあってみれば?」 美樹ときょんちゃんは、あたしの答えに猛反対のようだ。 「え・・・でも・・・やっぱり、最初から気がないのに思わせぶりのこともできないし・・・。」 「・・・リョーマ君に言われたから?」 美樹の言葉に少しドキッとした。 「・・・まぁ、それもあるけど・・・でも、ほんとあたしその気ないし。」 ・・・だいたいが、つきあえる訳がない。 ・・・だって、あたしはこの時代とちがうあたしだし・・・ はっきりいって、犯罪になっちゃうでしょ。 15歳と30歳が交際なんて・・・。
「そっかぁ・・・まぁ、智子がそう言うんなら、しょうがないか。」 「なんだぁ、智子に彼氏できるかなって、ちょっと期待しちゃった。」 「・・・なによそれ?きょんちゃん人のことより自分は?たかちゃんのこと最近話にもでてきてないんだけど。」 「えっ・・・いやぁ、まぁ、たかちゃんのことはもういいかなって思えてきて・・・。」 「そうなの!?」
・・・変だな・・・中学3年間は、確かたかちゃんのことずっと好きだったよな・・・?
あたしが思い返していると、美樹が隣でニヤニヤしながら言ってきた。 「そうか〜、加藤君のこと好きじゃないってことは・・・他にいい人いるんだ?」 「なっ・・・そんなこと・・・ないよ・・・」 否定しながらも少し顔が赤くなっていった。
・・・え・・・えっ・・・なに、この反応・・・
「またまた〜、昨日、いい感じだったじゃん。」
えっ!?・・・昨日!?
「ちょっと、美樹何言い出すの!?」 ますますきょんちゃんの顔は赤くなっていった。
「・・・どう・・いうこと?」 恐る恐る聞いてみた。 「うふふふふ・・・智子は途中で帰ったからわかんないだろうけど、きょんちゃんと田口君、いい感じだったんだよ〜。」
・・・・・・うっそ・・・
「なに言ってんのよ〜、違うってば〜。」 「照れない照れない、あたしとケンちゃんがどんだけ気使ってたと思うの?なるべく二人の世界に入らないようにってしてたんだから〜。」 「え〜っ、なんでそんなこと・・・」 「まぁまぁ、いいじゃん。楽しかったんでしょ?」
二人のやり取りは続いている。 固まったあたしをおいて・・・。
うそだ・・・うそだっ!・・・だって、田口君の片想いだったはずだよ!? きょんちゃんはたかちゃん一筋で・・・ あのっ、田口君と!? うそでしょ〜!!
「でも、田口君1年の時よりは大人になったと思うよ?人の悪口とか、冷やかしとか全然ないじゃん。智子だって、1年の時散々と冷やかされてたじゃん。」 「え・・・あぁ・・・うん・・・」
そうだ。 美樹の言うとおり、ここ最近の田口君は前ほど嫌に思えてない。 というか、ケンちゃんや松井君に比べたら、一番まともでは・・・とも思える。 明るくておもしろいのは変わりないし、テニス部の1年の子でも、田口君のことかっこいいって言ってる子いたっけ・・・
いやいや・・・それでも、ありえない話でしょ? きょんちゃんと田口君なんて・・・ ありえないよ・・・
「〜〜〜っ確かに・・・たの・・しい・・けど・・・。」 「でしょ〜!それに、田口君、きょんちゃんのこと好きだよ。なんか違うもん。あたしや智子に対しての態度と。ねっ、そう思わない?」 美樹があたしの方を見てきた。 「えっ・・・う・・・ん・・・よく・・・わかんない。」 うそをついてしまった。 ・・・ほんとのこと言えなし。 「そうだよ、そんなの美樹の思い過ごしだよ・・・他の子とだって仲良く話してるの見るし・・・。」 「え〜、でもでもっ、それでも二人絶対両想いだと思うよ〜。ケンちゃんだって、なんとな〜くそんな感じで言ってたもん。二人ってお似合いだよなって。」
ケンちゃんのやつ・・・一気に事を進めようとしてるな・・・
「そんなこと言ったって・・・あたし・・・ほんとまだよくわかんなくて・・・」 「・・・一緒にいて楽しんでしょ?」 きょんちゃんの様子に対し、美樹は真剣に聞いてきた。 「・・・うん。」 「もっと話したいって思う?」 「・・・うん。」 「じゃあ・・・もし誰かに田口君が告白されたらどう?」 「えっ・・・」 「なんとも思わない?それとも嫌?」 「・・・・・・いや・・かも・・・」 「・・・それが好きってことなんじゃない?」 「・・・・・・」
・・・信じられないけど・・・美樹の言う通りだ。 あきらかに、きょんちゃんは田口君のこと意識してる。 それに最近の二人の様子を思い返してみると、いつの間にか一緒にいることが多い。 きょんちゃんは・・・・・・好きなんだ、田口君のこと。
「・・・まぁさ、今まで友達の様に接してきたから、すぐに、なんてのは難しいかもだけど・・・ああ見えても、田口君って結構モテるからさ、グズグズしてると誰かに取られちゃうかもだよ。」 「・・・でも・・・変なこと言って、気まずくなるよりは・・・」 「んもう!!きょんちゃんってば、加藤君の時もそんな事言ってなかった?そうやって何にもしないで過ごしてたら、あっという間に中学生活終わっちゃうよ。」 「・・・そんなオーバーな・・・まだ1年と半年あるじゃん・・・」 「何言ってんの!!1年と半年しかないんだよ?」 「・・・う・・ん・・・」
今すぐに、きょんちゃんが何か行動できるわけがない。 消極的だもんな・・・
「・・・じゃあさ・・・あたしも美樹に聞きたい事あるんだけど・・・」 「なに?」 「・・・ほんとに、松井君のこと・・・幼馴染ってだけの感情なの?」
――!! ・・・密かにあたしも思ってたことだ。 昨日のとっさの手助けが思い浮かんだ。
「はぁ!?何を言い出すかと思ったら・・・そんなの当たり前じゃん。」 あっけらかんと答えた。 その様子は決してうそをついている感じでもないし。 「・・・ほんとに?」 「もうっ、ほんとだよ。そりゃあ、かっこいいし、サッカーうまいし、優しいけど・・・」
・・・優しい? そこは同感できないな・・・
「・・・なんていうか、小さい時から一緒にいたから・・・兄妹って感じかな?それに・・・リョーマ君が好きなのは・・・」 「あ、そっかぁ。美加さんって言ってたっけ?」 きょんちゃんが思い出したかのように言ってきた。 「えっ・・・あぁ・・・うん。」 「・・・・・・聞いたことは・・ないの?」 あたしは、聞いてみた。 「う〜ん・・・なんか聞けないや・・・聞いちゃいけないような気がして・・・。」 「・・・そっか・・・」
昨日の事も、言わない方がいいな。 口止めはされてないけど。
「じゃあさ、好きな人とか、気になる人はいないの?」 またもやきょんちゃんは質問してきた。 「え〜・・・そうだな・・・特に、いないなぁ・・・」 「な〜んだ、つまんない。」 「まぁ、もし好きな人できたらちゃんと報告するよ。きょんちゃんや智子みたいに心の中に秘めてないから。」 「「なっ!!」」 あたしときょんちゃんは同時に発して、そして笑った。
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