なっ・・・なっ・・・!!
あたしはもちろんのこと、みんな松井君に視線が集中した。 そして、その後その視線はあたしへと変わった。
「え・・・?話してたって・・・いつ?」 きょんちゃんがたずねた。 みんなといる時のことを思っていたのだろう。
・・・・・・っ!!
黙ったままのあたしの代わりに、また松井君が話しだした。
「・・・・・・さっき、トイレの近くで話してたでしょ。木村先輩と。」 「え・・・え〜、そうなの?」 美樹は松井君を見たあと、またあたしに目をやった。
・・・こい・・・つ!! ・・・やっぱり・・・見てたの? ・・・・・・って・・・言うか!?・・・普通。
あたしは、松井君を睨んだ。 相手は、悪びれる様子もなく焼きそばを食べているが・・・。
「・・・ほんとに?木村先輩と話してたのかよ!?」 ケンちゃんが興味津津に聞いてきた。 みんなの目もそれを物語っている。
〜〜〜っんもうっ・・・こうなったら・・・
「・・・あの人が・・・木村先輩・・・なんて・・・知らなかったし・・・」
とことんしらをきろう。 この場を逃れなきゃ・・・。
「なになに?何を話してたの?」 美樹はあたしの心境などわかるわけもなく、質問が止まらない。 「え・・・何って・・・その、応援・・・のお礼を言われただけだよ。」 「そうなの!?わざわざ言いに?」 「・・・・・・偶然会ったからじゃない?」 「ふ〜ん・・・で?どうだった?」 「は!?・・・何が?」 「だから〜、かっこよかった?」 「え・・・あぁ・・・うん、まぁ・・・」 それはウソでは、ないな・・・ 「そっか〜、智子がかっこいいって言うんだから、本当だろうな〜。」 「なんだよ、それ。」 ケンちゃんがすかさず聞いていた。 「だって、智子、そういうのお世辞とか言わずに、はっきり言うから。」 「・・・なるほど・・・」 納得の様子だ。
「――っ、それよりさ、この最後のあたしもらっていい?」 なんとかこの話題から離れたく、みんなの関心を鉄板へと集中させた。 聞くと同時に、残りのお好み焼きを口にほうばった。 「ああっ!!てめぇっ、それは俺のだろー!!」 案の定ケンちゃんが、それに食いついてきた。 「〜〜ん・・・むしゃむしゃ・・・ほよい・・・ほんだもん・・・」(←早いもんだもん、と言っている) 「っとに、おまえはそれでも女か!口にそんないっぱい入れやがって〜。」 ケンちゃんがあきれながら、箸をおいた。 どうやらあきらめたらしい。 「もう〜、智子ってば〜。」 「あはははは〜。」 美樹ときょんちゃんと田口君もこっちに気がいってる様子だ。
とりあえず・・・逃れたか・・・
「・・・・・・そんなんで、よく告白されたよな。」
「「えっ!?」」「ぶっ!!」
一瞬にして、またもや空気が変わった。
みんなの視線は再びあの男に。
あたしは、口の中身が少し飛び出てしまった。
〜〜〜なっ!!なんなの・・・こいつは〜!!
「・・・こく・・・はく?・・・うそっ!!ほんとにっ!?」 「えーっ!!えーっ!!マジかよー!!」 「すごーい!!・・・」 4人のテンションはヒートアップしていってる。
「リョーマ君の言った事ほんと?木村先輩に告白されたの〜!?」 美樹がきょんちゃんの横から身を乗り出してきた。 その質問に、みんな一斉に注目した。
〜〜〜っ・・・なんで・・・?
「おいっ、山田!どうなんだよ?」 なかなか白状しないあたしに、みんなは今か今かと待ちわびている。
あたしは俯いていたが、だんだんと怒りがこみ上げてくるのがわかった。
口の周りを、おしぼりでひと拭きし、コップを手に取る。 が、すでに中身が空っぽだったことに気づき、きょんちゃんの水をもらうことした。
「・・・これ・・・飲んでいい?」 「へ・・・あぁ、うん、いいよ・・・」 きょんちゃんは、異様に冷静な態度のあたしを少し不思議に思っていた。
ゴク・・ゴク・・ゴク・・
一気に飲み干し、コップをテーブルの上にドンっと置いた。
そして、この怒りの矛先を、当然のように松井君に向けた。
「・・・なんなの?・・・なんで言うのよっ。」 「「・・・・・・」」 あたしの様子に、さっきまで質問攻めだったみんなは黙ってしまった。
「・・・なんでって・・・木村先輩のこと知ってるくせに嘘つくからだろ?」 「だからって、なんで余計なことまで言うの!?っていうか、覗き見してたわけ?」 「・・・別に〜、そっちが勝手にいただけじゃん。覗き見なんて言い方すんなよな。」
・・・このセリフ、いつしかあたしがこいつに言ったことだ。
それがわかると、ますます怒りがこみ上げてきた。
「・・・あんたね〜、今あんたが言ったことは、あたしより木村先輩に対して失礼でしょ?みんなにペラペラと話して、悪いと思わないの?」 「・・・へ〜・・・かばうんだ。」 「なっ・・・かばうとか、そういうんじゃないでしょ!?」 「・・・俺、試合の後木村先輩におまえのこと聞かれてたし、どっちみちみんなにバレるのも時間の問題だったんじゃね?」 「なっ・・・!!」
・・・そうなの!?・・・じゃなくてっ!!
「とにかくっ、今ここで言うことじゃないでしょ!!なんなの、さっきからその態度。人が話してんのに・・・箸をおきなよ!!」 先ほどから焼きそばを食べる手を、いっこうに止めようとしないことも、今のあたしには腹立だしかった。
ずっと目線を鉄板に向けていたが、その言葉であたしのほうを向いた。いや睨んできたと言ったがいいか。
なっ・・・なんであんたが睨むのよっ!!
「っまぁまぁ・・・この辺でやめとこうよ。」 田口君が、松井君の態度が変わって何かを感じたらしく、仲裁に入った。 「・・・そうだな・・・まぁ、店の中だし、他のお客さんに迷惑だよ。」 ケンちゃんも辺りを見回し、その場をなだめようとした。
・・・確かに、あたしの声は大きかった。 でも、さっきまで騒いでたくせに、何をいまさら!! あたしは、なおも止めることができなかった。
「・・・無神経にもほどがあるんじゃない?」 少し周りの事も考えて、静かめの声で言った。 「・・・はぁ?・・・無神経はどっちだよ。」 「なんでよっ、なんであたしが無神経なの!?」 すぐに声の大きさは元に戻ってしまった。 「・・・おまえ、木村先輩とつきあう気あるの?」 「はぁ!!??なんでそんなことあんたに答えなくちゃいけないわけ?」 「・・・その気もないのに、思わせぶりな事言うなって言ってんだよ!」 それまで、静かなトーンだった彼もだんだん声が大きくなっていった。 「な・・・によ・・・それ・・・」
・・・思わせぶり?・・・あたしが・・・?
「・・・好きな奴いるくせに、なんでその場ではっきり断んねーんだよ。それこそ木村先輩に対して失礼だろっ。」
―――っ!!・・・こいつ・・・また余計な事を・・・!!
「へっ?・・・好きな奴・・・いんの?」 それを聞き逃すわけでもなく、ケンちゃんが間に入ってきた。 きょんちゃんと田口君もその質問に同意のようで、あたしを見てきた。
「・・・あんたって・・・ほんっと、最低っ!!」 「・・・だから、最低はあんたでしょ?」 「・・・あっそ・・・言っとくけどっ、あたし別にもう先生のこと何とも思ってないからっ!!だから、どういう風に答えようと、接しようと、あんたに最低とかっ、無神経とかっ、言われる必要ないんだけどっ!!」 「「・・・・・・っ!!」」 あたしはカバンから財布を出し、千円札をバンっとテーブルに置いた。 そして席を立った。
「・・・・・・悪いけど、先帰る。」 「えっ・・・智子っ!!」 美樹は引き止めてみたが、あたしは聞き入れることもなく、店から出て行った。
その後のみんなは・・・というと。
「・・・先生って・・・言ってたよな・・・。」 ケンちゃんが驚きながらも、確認するようにつぶやいた。 「あぁ・・・うん。山田の好きな奴って・・・先公・・・なわけ?」 田口君が目の前のきょんちゃんに聞いた。 「えっ・・・わか・・・んない。そんな話聞いたことないし・・・美樹知ってた?」 「えっ・・・いやぁ・・・よくわかんない・・・。」 美樹がこんなところで本当の事を言えるわけがなかった。 ただ、目の前にいる幼馴染のことをジーっと見ていた。
「でも・・・久しぶりにあんな怒った山田見たな〜・・・おい、リョーマ。ちょっと言い過ぎなんじゃねー?」 田口君が、のどの渇きに気づき水を飲みながら聞いてきた。 「・・・まぁ・・・裏番長、復活ってとこだな。」 ケンちゃんが、ボソッと言った。 「・・・裏番長?」 きょんちゃんが、前にも聞いたことあるな、という感じで聞き直した。
ガタンッ・・・ 松井君は、席を立つとポケットから財布を出し、千円札を2枚出した。 そして、ケンちゃんの前にすでに置かれていた千円札を手に取った。 「・・・山田の分、俺が出すわ。」 「え・・・あー、そう・・・か。でも一人千円もかかんないんじゃね?」 ケンちゃんがメニューの値段に目をやった。 「・・・とりあえず出しとくから、後で返してよ。」 そういうと、荷物を持つとその場を離れようとした。 「えっ・・・なに?おまえも帰んの?」 「・・・・・・謝るだけ、謝ってくるわ・・・」 「・・・そっか・・・」 それ以上は誰も何も言えず、店から出ていく松井君を見送った。
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