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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第41回   41
なっ・・・なっ・・・!!

あたしはもちろんのこと、みんな松井君に視線が集中した。
そして、その後その視線はあたしへと変わった。

「え・・・?話してたって・・・いつ?」
きょんちゃんがたずねた。
みんなといる時のことを思っていたのだろう。

・・・・・・っ!!

黙ったままのあたしの代わりに、また松井君が話しだした。

「・・・・・・さっき、トイレの近くで話してたでしょ。木村先輩と。」
「え・・・え〜、そうなの?」
美樹は松井君を見たあと、またあたしに目をやった。

・・・こい・・・つ!!
・・・やっぱり・・・見てたの?
・・・・・・って・・・言うか!?・・・普通。

あたしは、松井君を睨んだ。
相手は、悪びれる様子もなく焼きそばを食べているが・・・。

「・・・ほんとに?木村先輩と話してたのかよ!?」
ケンちゃんが興味津津に聞いてきた。
みんなの目もそれを物語っている。

〜〜〜っんもうっ・・・こうなったら・・・

「・・・あの人が・・・木村先輩・・・なんて・・・知らなかったし・・・」

とことんしらをきろう。
この場を逃れなきゃ・・・。

「なになに?何を話してたの?」
美樹はあたしの心境などわかるわけもなく、質問が止まらない。
「え・・・何って・・・その、応援・・・のお礼を言われただけだよ。」
「そうなの!?わざわざ言いに?」
「・・・・・・偶然会ったからじゃない?」
「ふ〜ん・・・で?どうだった?」
「は!?・・・何が?」
「だから〜、かっこよかった?」
「え・・・あぁ・・・うん、まぁ・・・」
それはウソでは、ないな・・・
「そっか〜、智子がかっこいいって言うんだから、本当だろうな〜。」
「なんだよ、それ。」
ケンちゃんがすかさず聞いていた。
「だって、智子、そういうのお世辞とか言わずに、はっきり言うから。」
「・・・なるほど・・・」
納得の様子だ。

「――っ、それよりさ、この最後のあたしもらっていい?」
なんとかこの話題から離れたく、みんなの関心を鉄板へと集中させた。
聞くと同時に、残りのお好み焼きを口にほうばった。
「ああっ!!てめぇっ、それは俺のだろー!!」
案の定ケンちゃんが、それに食いついてきた。
「〜〜ん・・・むしゃむしゃ・・・ほよい・・・ほんだもん・・・」(←早いもんだもん、と言っている)
「っとに、おまえはそれでも女か!口にそんないっぱい入れやがって〜。」
ケンちゃんがあきれながら、箸をおいた。
どうやらあきらめたらしい。
「もう〜、智子ってば〜。」
「あはははは〜。」
美樹ときょんちゃんと田口君もこっちに気がいってる様子だ。

とりあえず・・・逃れたか・・・

「・・・・・・そんなんで、よく告白されたよな。」

「「えっ!?」」「ぶっ!!」

一瞬にして、またもや空気が変わった。

みんなの視線は再びあの男に。

あたしは、口の中身が少し飛び出てしまった。

〜〜〜なっ!!なんなの・・・こいつは〜!!

「・・・こく・・・はく?・・・うそっ!!ほんとにっ!?」
「えーっ!!えーっ!!マジかよー!!」
「すごーい!!・・・」
4人のテンションはヒートアップしていってる。

「リョーマ君の言った事ほんと?木村先輩に告白されたの〜!?」
美樹がきょんちゃんの横から身を乗り出してきた。
その質問に、みんな一斉に注目した。

〜〜〜っ・・・なんで・・・?

「おいっ、山田!どうなんだよ?」
なかなか白状しないあたしに、みんなは今か今かと待ちわびている。

あたしは俯いていたが、だんだんと怒りがこみ上げてくるのがわかった。

口の周りを、おしぼりでひと拭きし、コップを手に取る。
が、すでに中身が空っぽだったことに気づき、きょんちゃんの水をもらうことした。

「・・・これ・・・飲んでいい?」
「へ・・・あぁ、うん、いいよ・・・」
きょんちゃんは、異様に冷静な態度のあたしを少し不思議に思っていた。

ゴク・・ゴク・・ゴク・・

一気に飲み干し、コップをテーブルの上にドンっと置いた。

そして、この怒りの矛先を、当然のように松井君に向けた。

「・・・なんなの?・・・なんで言うのよっ。」
「「・・・・・・」」
あたしの様子に、さっきまで質問攻めだったみんなは黙ってしまった。

「・・・なんでって・・・木村先輩のこと知ってるくせに嘘つくからだろ?」
「だからって、なんで余計なことまで言うの!?っていうか、覗き見してたわけ?」
「・・・別に〜、そっちが勝手にいただけじゃん。覗き見なんて言い方すんなよな。」

・・・このセリフ、いつしかあたしがこいつに言ったことだ。

それがわかると、ますます怒りがこみ上げてきた。

「・・・あんたね〜、今あんたが言ったことは、あたしより木村先輩に対して失礼でしょ?みんなにペラペラと話して、悪いと思わないの?」
「・・・へ〜・・・かばうんだ。」
「なっ・・・かばうとか、そういうんじゃないでしょ!?」
「・・・俺、試合の後木村先輩におまえのこと聞かれてたし、どっちみちみんなにバレるのも時間の問題だったんじゃね?」
「なっ・・・!!」

・・・そうなの!?・・・じゃなくてっ!!

「とにかくっ、今ここで言うことじゃないでしょ!!なんなの、さっきからその態度。人が話してんのに・・・箸をおきなよ!!」
先ほどから焼きそばを食べる手を、いっこうに止めようとしないことも、今のあたしには腹立だしかった。

ずっと目線を鉄板に向けていたが、その言葉であたしのほうを向いた。いや睨んできたと言ったがいいか。

なっ・・・なんであんたが睨むのよっ!!

「っまぁまぁ・・・この辺でやめとこうよ。」
田口君が、松井君の態度が変わって何かを感じたらしく、仲裁に入った。
「・・・そうだな・・・まぁ、店の中だし、他のお客さんに迷惑だよ。」
ケンちゃんも辺りを見回し、その場をなだめようとした。

・・・確かに、あたしの声は大きかった。
でも、さっきまで騒いでたくせに、何をいまさら!!
あたしは、なおも止めることができなかった。

「・・・無神経にもほどがあるんじゃない?」
少し周りの事も考えて、静かめの声で言った。
「・・・はぁ?・・・無神経はどっちだよ。」
「なんでよっ、なんであたしが無神経なの!?」
すぐに声の大きさは元に戻ってしまった。
「・・・おまえ、木村先輩とつきあう気あるの?」
「はぁ!!??なんでそんなことあんたに答えなくちゃいけないわけ?」
「・・・その気もないのに、思わせぶりな事言うなって言ってんだよ!」
それまで、静かなトーンだった彼もだんだん声が大きくなっていった。
「な・・・によ・・・それ・・・」

・・・思わせぶり?・・・あたしが・・・?

「・・・好きな奴いるくせに、なんでその場ではっきり断んねーんだよ。それこそ木村先輩に対して失礼だろっ。」

―――っ!!・・・こいつ・・・また余計な事を・・・!!

「へっ?・・・好きな奴・・・いんの?」
それを聞き逃すわけでもなく、ケンちゃんが間に入ってきた。
きょんちゃんと田口君もその質問に同意のようで、あたしを見てきた。

「・・・あんたって・・・ほんっと、最低っ!!」
「・・・だから、最低はあんたでしょ?」
「・・・あっそ・・・言っとくけどっ、あたし別にもう先生のこと何とも思ってないからっ!!だから、どういう風に答えようと、接しようと、あんたに最低とかっ、無神経とかっ、言われる必要ないんだけどっ!!」
「「・・・・・・っ!!」」
あたしはカバンから財布を出し、千円札をバンっとテーブルに置いた。
そして席を立った。

「・・・・・・悪いけど、先帰る。」
「えっ・・・智子っ!!」
美樹は引き止めてみたが、あたしは聞き入れることもなく、店から出て行った。

その後のみんなは・・・というと。

「・・・先生って・・・言ってたよな・・・。」
ケンちゃんが驚きながらも、確認するようにつぶやいた。
「あぁ・・・うん。山田の好きな奴って・・・先公・・・なわけ?」
田口君が目の前のきょんちゃんに聞いた。
「えっ・・・わか・・・んない。そんな話聞いたことないし・・・美樹知ってた?」
「えっ・・・いやぁ・・・よくわかんない・・・。」
美樹がこんなところで本当の事を言えるわけがなかった。
ただ、目の前にいる幼馴染のことをジーっと見ていた。

「でも・・・久しぶりにあんな怒った山田見たな〜・・・おい、リョーマ。ちょっと言い過ぎなんじゃねー?」
田口君が、のどの渇きに気づき水を飲みながら聞いてきた。
「・・・まぁ・・・裏番長、復活ってとこだな。」
ケンちゃんが、ボソッと言った。
「・・・裏番長?」
きょんちゃんが、前にも聞いたことあるな、という感じで聞き直した。

ガタンッ・・・
松井君は、席を立つとポケットから財布を出し、千円札を2枚出した。
そして、ケンちゃんの前にすでに置かれていた千円札を手に取った。
「・・・山田の分、俺が出すわ。」
「え・・・あー、そう・・・か。でも一人千円もかかんないんじゃね?」
ケンちゃんがメニューの値段に目をやった。
「・・・とりあえず出しとくから、後で返してよ。」
そういうと、荷物を持つとその場を離れようとした。
「えっ・・・なに?おまえも帰んの?」
「・・・・・・謝るだけ、謝ってくるわ・・・」
「・・・そっか・・・」
それ以上は誰も何も言えず、店から出ていく松井君を見送った。


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