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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第40回   40
「あ〜、来た来た。おいっ、こら〜っ!!おせ〜ぞ、山田〜っ!!」
校門から松井君以外の4人の姿が見えた。
あたしに向かって、ケンちゃんが叫んでいる。

「あ・・・ごめんごめん。」
トボトボと歩いていたが、みんなのところまで走って行った。

「何してたんだよ〜。まさか迷子にでもなってたのか?」
「え・・・いや、別にそういう訳じゃ・・・」
「混んでたんじゃない?ほら・・・応援の女子いっぱいいたし・・・。」
あたしが理由をなかなか言えないのを、美樹ときょんちゃんは違うことを気遣ってくれたみたいだ。
「まぁ、いいじゃん。それよりリョーマ君は?」
その問いを、あたしに向かって聞いていることに気付いた。
「え・・・?松井君?・・・知らないよ。」
「あれっ?マジで?おっかしーな〜、あいつもトイレに行ったはずなんだぜ。」
ケンちゃんが校舎の方を見渡した。
「・・・うそ・・・そうなの・・・?」
・・・なんとなく、ドキッとした。
・・・でも・・・それらしき姿・・・見てないよ・・・まさか、さっきの・・・見られてないよね・・・?

そんなことを思っていると、向こうからその本人がやってきた。
「来た来た。・・・ほんとに山田にしろ、リョーマにしろ、人を待たせるなよな〜。」
またブツブツと文句を言っている。
いつものあたしならここですぐに言い返すだろうが、今は先ほどからの不安でそれどころじゃなった。

「なんだよ〜、おっきい方でもしてたんか?」
デリカシーのない言葉をケンちゃんが言った。
「・・・おまえじゃあるまいし・・・」
いつものことだからか、冷静に返した。
「なんだよ〜、まるで俺がいつもウ○コしてるみたいじゃんか!」
「・・・・・・ケンちゃんっ!今から食べに行くってのに・・・」
さすがに美樹がケンちゃんの暴走を止めた。
「・・・ほんとケンは下品だよな〜。」
田口君が付け足した。
「・・・おいっ、こら・・・俺にそんな口たたいてもいいのか〜?」
・・・完全なる脅しだな。
でも、この脅しに田口君が引っかかるのは無理もない。
こうして、愛しのきょんちゃんと共に過ごせる時間を作ってもらったのは、ケンちゃんに間違いないし。
「・・・あはは、冗談だよ。さぁっ、みんな揃ったし、いこっか。」
「そうだね、お腹空いちゃった。」
きょんちゃんも田口君の合図に合わせた。
気付けば、この二人いつも近距離の位置にいるなぁ・・・。
ふとそんなことを思ったが、一瞬、松井君と目が合ってしまいそっちに気が取られた。

・・・・・・まぁ・・・大丈夫・・・だよね?

あたしは、集団の後ろについていった。

バス停の近くに、お好み焼きの店があったので、そこに入った。
お昼時という事で、少々混んでいたが、あたしらが座れる席は空いていた。
あたしの前に、ケンちゃん。
きょんちゃんの前に、田口君。
そして美樹の前に、松井君。
女子と男子と分かれて、向かい合って座った。

「えっと〜・・・とりあえず、ミックスを4人前と焼きそばでもたのもっか〜。」
常に仕切っているケンちゃんの意見にみんな賛同した。
そして、コーラで乾杯をとることにした。

「え〜、本日は〜、お日柄もよく〜・・・」
ケンちゃんが、そんなありがちな挨拶をしだした。
それを、狙い通りに美樹ときょんちゃんはクスクスと笑っている。
あたしは、いつものとおりにあきれて見ていた。
「こうして我々暁中が、勝利を手にすることができました。これもひとえに、ここにいる女性人の応援と、そしてこの僕の活躍がっ、何よりの勝因に違いありませんっ!!」
「・・・・・・もういいか?」
松井君は、先にゴクゴクとコーラを飲んだ。
「あ〜っ、こらっ、今いいところだったのに〜・・・」
ケンちゃんのそんな言葉にも耳を貸さず、鉄板の上で焼かれているお好み焼きをひっくり返そうとしている。
「こっちもひっくり返そうか?」
美樹も特に気にすることなく、松井君と同じようお好み焼きに手をやった。
「おいおい、山下まで〜・・・」
「・・・はいはい、ケンちゃんがすごいすごい。そういうことで、かんぱ〜い!!」
代りにあたしが続きの乾杯の音頭をとった。
「・・・・・・いちばんのおいしいところを〜・・・」
納得いかない様子だが、みんなはもうお好み焼きにしか目がいっていない。
それにあきらめた様子で、ケンちゃんも食意地に走った。

初めて来た店だけど、お腹も空いてるからか、なかなかおいしかった。
まぁ、お好み焼きでそうそうまずいところもないだろうけど。

試合の話が盛り上がり、周りに迷惑じゃないかと思うくらいの笑い声が店中に広がる。
そして、美樹の言ったことから、話題が変わった。

「でもさー、サッカー部って、かっこいい人ばっかだよね〜。3年生ってほとんど彼女いるんでしょ?まどかが言ってたけど。」
「あ〜・・・そうだなぁ。俺の知ってる限りじゃ・・・二人以外は、いるんじゃね?」
「へ〜、すご〜い。確率で言うと、90%以上・・・って感じ?」
「そうだな・・・そういっても嘘じゃないよな。あと二人だって、前いたけど別れたとかって聞いたぞ。」

・・・・・・なんとなく・・・話題が変わって欲しかった。
・・・・・・嫌な予感がする。

あたしの心配をよそに話はどんどん盛り上がっている。

「え〜、じゃ残ってる先輩ってだれだれ?」
美樹はどんどん核心に近づいてきた。
「えっと〜、杉浦先輩と木村先輩。」

―――っっ!!

みんなに変に思われないように、必死に平然さを装った。
内心ドキドキだったが・・・。

「杉浦・・・って、杉浦 宏?」
美樹は、目の前の松井君に確認した。
「うん、そう。」
「そっか〜・・・」
「知ってるの?」
美樹の反応にきょんちゃんが聞いてきた。
「あぁ、うん。同じ小学校だからね。・・・じゃあ、木村先輩って?」

・・・・・・大丈夫、大丈夫。
普通にしてたら、バレるわけないし・・・。

異様にのどが渇いてあたしは、水をゴクゴクと飲んだ。

「うんとね〜、背番号5番の人。わかんないかな〜・・・あっ、ほら、お前らが学校ついた時に話しかけてきた先輩らいたろ?」
「え〜・・・佐々木先輩は・・・わかったけど。あとは、何人かいてわかんなかったな・・・」
美樹は必死に思い出している様子だ。

・・・・・・あの時、いた・・・か・・・

あたしも心の中で思い返してみた。

「どんな感じの人?」
美樹はまだその人物を知りたい様子だ。
「そうだな〜・・・」
ケンちゃんが考えていると、田口君が代りに答えてきた。
「・・・まぁ、さわやかって感じじゃない?背はスラーっとしてて。」

・・・・・・確かに。

「え〜っ?・・・やっぱわかんないや・・・ねぇ、覚えてる?」
その質問はあたしときょんちゃんに向けられた。
「・・・ううん、あたしも覚えてない。なんか一斉に見られてたから、あんまり顔見てないもん。」
きょんちゃんはそのまま思った事を言った。
「そうだよね〜・・・ねぇ、智子は?わかる?」

――っ!!・・・きたよ。

恐れていた展開になった。

・・・・・・でも・・・大丈夫、同じように知らないって言えばいいんだし・・・。

「・・・さぁ・・・・・・わかんない。」
そう言って、また水を飲んだ。
コップの中の水はなくなってしまった。

「だよね〜、まぁ、いっか。こんど部活の時にでも見ようっと。」
「なに〜?そんな木村先輩のこと気になるの〜?」
ケンちゃんが冷やかすように言ってきた。
「え〜、だって、どんなにかっこいいか見てみたいじゃん。一人身ならなおさら。」
女子独特の興味本位だ。

なんとなく、この話題も終わりそう。
そう思って安心した時だ。

「・・・・・・さっき、山田が話してた人じゃん。」

そう言ったのは、あたしから一番遠くに座っている松井君だった。


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