「ばっ、おまえなっ、いきなりはないだろ?徐々にって言ってたじゃんか。」 佐々木先輩は、木村先輩の腕を引っ張った。 「・・・そうだけど・・・なんかまわりくどいや、そういうの。」
・・・・・・は?
「でもさっ、絶対いきなりは引くって・・・ね!そうでしょ!引くよね?」 佐々木先輩は固まってるあたしに聞いてきた。 「・・・え、・・・あの・・・意味が・・・よく・・・」 あたしはこの事態の流れを整理整頓していた。
・・・・・・っていうか、誰に言ってんだ? 美樹?・・・ではなくて・・・きょんちゃん?
「・・・もういいよ、お前の言う通りしてたら、なんかめんどくさい。」 「なんだよ、それ〜。人がせっかくうまく事を進めてやろうってしてんのにさ〜。ま、いいや・・・こうなったら、口は挟まないよ。俺さき戻ってるわ。」 そう言って、木村先輩の肩を手でポンっと叩いてからグラウンドの方へ向かった。
・・・え・・・え?・・・え!?・・・なんの話? 「あ〜、えっとごめんね。いきなりで・・・」 佐々木先輩を見送ったあと、木村先輩はあたしに視線を戻した。 「・・・前々から気にはなってたんだけど・・・今日来るなんて知らなかったし・・・野村達と仲いいのも知らなくて・・・ましてや、今このタイミングで言ってんのもおかしいんだけどさ・・・」
・・・・・・なんで・・・あたしはこの人と二人っきりになる必要があるんだ? ・・・・・・なんで、佐々木先輩はさきに戻ったの?
「・・・その・・・俺と、つきあってほしんだけど・・・。」 また同じことを言っている。 「・・・あ・・・あの・・・だれ・・・と?」 あたしはいまだに事を把握できていなかった。 「え・・・誰って・・・だから俺と・・・」 そう言って、木村先輩は自分の事を指さした。
いやいやそうじゃなくて・・・
「・・・・・・だれ・・・が?」 「え?・・・山田・・・さん・・・」 そして、今度はあたしに向かって指をさした。
・・・えっ・・・えっっ・・・
「え―――っっっ!!・・・あ・・たし・・・?」 心の中の叫び声は、思わず口に出ていた。 「・・・そんなに、驚く・・・こと?」 あまりのあたしの態度に木村先輩も驚いている様子だ。
・・・いやいや、驚くでしょ!! っていうか、なんで?・・・まさか・・・ 「・・・あの・・・人違い・・・じゃないですか?」 後から考えると、なんてアホな質問をしたんだろう。でも、思った事をすぐ聞いてしまうあたしは、そんなこと今は気にもしていなかった。 「え・・・いや・・・本人目の前で、間違えないし・・・」 「あ・・・そうですか・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」
お互い沈黙になってしまった。
・・・・・・どうしよう・・・どうしたらいいんだ? こんな展開、ありえないっしょ!? このあたしが?告・・・白・・・? うっそ〜・・・。
あたしの様子をうかがい、木村先輩は口を開いた。 「あ・・・ほんといきなりだったから、ごめんな。・・・ほんとは少し話ができればって思ってたんだけど、なんか、ついつい・・・・・・佐々木が言った通りだったな。あいつは、友達の話とか、周りの環境から話を始めて、徐々に親しくなってからって、言ってたんだけどね。なんか、俺あせっちゃったみたいだな。ははっ。」 無理して、笑顔を作っているのがわかってしまう。 それに対し、すごい罪悪感が出てきてしまった。 「・・・・・・あの・・・すみません・・・その、びっくりして・・・。」 あたしは何かを言おうとしたものの、結局うまく言葉が出てこない。 「あ〜・・・いいよいいよ。当然だし。まぁ・・・先に言っちゃったけど・・・最初は友達としてでもいいから、これから学校とかでも、話しかけていいかな?」 「え・・・あぁ・・・はぁ・・・」 なんとなく、そういう返事しかできなかった。 「ほんと!?・・・ありがと。あっ、友達待ってるんだったね、ごめんごめん。長いこと引き止めて・・・それじゃあ・・・また。」 「・・・あぁ・・・はぁ・・・」 木村先輩は、こんな中途半端なあたしに対しても、最後まで笑顔で接して去って行った。
・・・・・・マジで・・・?
一人残されたあたしはしばし呆然としていた。
あたし・・・あの先輩と、面識ないよな・・・あの頃はもちろん、今日の今日まで・・・ ・・・なんで?・・・なんか、あたしこの状況になってから、関係ない人との係わりがかなり変わってるんだけど・・・。
美樹に関しては、そうなるようにあたしがしたからなんだけど。 ケンちゃんや田口君に松井君・・・この人たちと仲良くなってることすら考えられないことなのに、ましてや、あんな先輩から告白されるなんて・・・。
・・・・・・なんか、過去を変えてしまっている罪悪感が、ひしひしと感じてきた。 自分だけならまだしも、周りの人の気持ちが、あたしがここにいることで本来そうなることじゃないのに、そうしてしまっているような・・・そんな気がしてきた。
・・・・・・あ、みんな待ってるや・・・行かなきゃ。 とりあえず、考えるのは後にしよう・・・ひとまず、落ち着こう・・・。
自分に言い聞かせ、あたしは校門へと歩いて行った。
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