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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第38回   38
ハーフタイムが終了し、試合が引き続き再開された。

尾上先生は、こっちの生徒らに声援を送った後、向こうのベンチに向かい応援をしていた。
そして数分経った頃、自分の本来のするべきことに戻って行った様子だ。
先生の姿は見えなくなっていた。

あたしらは、前半戦と同じく応援に熱が入った。
そして、残り10分のところで、松井君のパスから3年生がシュートを決めた。
それが勝利の決め手となった。
初めてここの学校に勝ったんだ。
練習試合とはいえ、みんな本当の試合のように喜んでいた。

勝利の余韻がまだ冷めないまま、部員らはベンチで話がはずんでいる様子だ。
「すごかったね〜。」
「うんっ!なんか感動したっ!!」
美樹ときょんちゃんもまだ熱が冷めやまぬ感じだ。
「・・・ほんとすごいね・・・。」
あたしだって、正直こんなに入り込むとは思ってもいなかった。
「なんかさー・・・こんなに応援に力いれたらさぁ、お腹空かない?」
美樹が立ち上がった。
それに合わせ、あたしときょんちゃんも立ち上がった。
「確かに。もうお昼だしね。帰りなんか食べてこうか。」
「うんうん、そうしよ。」
3人の意見が合い、帰り仕度をする。

せっかくみんなで盛り上がってる所に申し訳なかったが、ケンちゃんか田口君、松井君の誰でもいいから、一応声をかけてから帰ることにした。
黙って帰るのも、ちょっと悪い気がするし。
なるべく他の部員の人たちに気付かれないように、遠くから目で追っていた。
そして、ケンちゃんが気付いてくれ、あたしらの方に走ってきた。

「いや〜いや〜、応援サンキューな。」
・・・めっちゃご機嫌。
「すごかったね〜、ケンちゃんかっこよかったよ〜。」
美樹が素直に思ったままの事を言った。
「だろ〜?惚れてもいいよ〜。」
「あははは、またまた〜、十分モテてるじゃん。」
「いやいや、何人でもオッケ〜だよん。・・・あっ、山田はかんべんな。」
そう言って、あたしに手を合わせてきた。
・・・こっの〜っ・・・
少しでもかっこいいと思えてしまった事を後悔した。
「・・・・・・こちらこそ、遠慮しときますっ。っていうか、試合も終わったことだし、あたしら帰るね。」
「え〜っ!?もう?」
異常に驚いている。
「・・・だって、お腹も空いたし、もうすることないじゃん。」
「はぁ〜・・・ほんとに山田は・・・。」
なに?・・・なによそのため息交じりの言い方。
「どうせ、昼からも用事ないんだろ?だったら、俺らと飯食いに行こうぜ。」
「え・・・」
あたしら3人は顔を見合わせる。
「一緒にって・・・だって、まだやることあるんじゃないの?」
突然の誘いにあたしは抵抗してみる。
「もう解散するとこだよ。いつまでもここの学校いられなし、後片付けは1年の仕事だから。ちょっと、校門のとこで待ってろよ。田口とリョーマにも話してくるから。わかったな?」
そう言いながら、ケンちゃんはみんなの方へ走った。
「えっ、ちょっと・・・ケンちゃん!!」
あたしの声に止まることなく、手を振りながら満面の笑みで行ってしまった。
・・・おいおいおいっ・・・勝手に話を進めるなよ・・・
「・・・どうする?」
あたしは、美樹ときょんちゃんに困った顔でたずねた。
が、二人はあたしとは違う様子だ。
「・・・なんか楽しそうだね。」
「・・・うん、さっきの試合のこともいろいろ話したいし・・・」
「・・・行こうか?」
「うんっ、行こう行こう!」
どんどん盛り上がっていっている。
「えっ、ちょっ、待ってよ。ほんとに!?」
あたしはこんな流れに行くとは思わず、二人を止めた。
「どうせなら、人数多い方が楽しいし。いいじゃん、智子っ。」
「行こうよ〜、智子っ。」
・・・・・・なんか・・・嫌とは・・・言えなくなってしまった・・・
「・・・う・・ん、わかった・・・。」
なんだかんだで、ケンちゃんの思惑通りに事が進んでるのが、非常に気にくわないんだけど・・・。

先に美樹ときょんちゃんには校門へ行ってもらった。あたしは念のためもう一度トイレへ行きたかったから。
まぁ、最初の一日目はたいした出血もないから、大丈夫みたいだ。

トイレから出て、周りを少し見渡してみる。
・・・・・・いるわけ・・・ないか。
・・・・・・って、未練ったらしいか・・・。
最後に一目、尾上先生に会えないか期待していたが、それらしき姿はなかった。

が、前の方から、同じ学校の男子生徒が二人歩いて来ていた。
さっきの試合にも出場していた3年生だ。
それに、あたしらがケンちゃんに呼ばれた時に、話しかけてきた人たちだ。
名前は知らないが、けっこう有名な二人だから顔は覚えている。
一人は、タイプ的にいくとケンちゃんみたいなムードメーカーっぽい感じで、もう一人は、明るいがまじめといった感じだろうか。
まぁ、話した事もないから実際どんな人かわからないけど。

・・・どうしよう、知らんぷりして通り過ぎるのもなぁ・・・かといって、話すこともないし・・・
あたしは少し戸惑いながらも、その人たちの横を通り過ぎようとした。

「さっきは応援ありがとね。」
「・・・へっ!?」
そんなこと言われるとは思わず、二人の方を見た。
言ってきてくれたのは、ムードメーカーっぽい人だった。
・・・あっ、なんか・・・言わなきゃ・・・
「あ、・・・いえ・・・おめでとう・・・ございます・・・」
・・・「おめでとう」って・・・なんか変だな。練習試合なのに・・・
言った事を後悔していたが、もう一人の先輩がにっこり笑ってくれた。
「ありがと!」
す・・・すごい、さわやか〜・・・
思わず見とれてしまった。
「・・・あ、・・・それじゃあ・・・」
なんとなくこれ以上ここにいることに耐えきれず、その場を離れたかった。
この3年生も、顔立ちはあたしからしたら苦手なタイプのイケメンだったので、どう接していいかわからなかった。
「あっ、ねぇ!」
そんなあたしを最初に声をかけてきた先輩が呼び止めた。
「・・・はい・・・?」
思いがけない展開にあたしは、立ち止まった。
「・・・あのさ、今日の応援って、誰か目当てだったの?」
「えっ、・・・いえ・・・ケンちゃ・・あ〜っと、野村君に頼まれて・・・。」
・・・なんで、そんなこと聞くんだ?
もしかして、応援来たのまずかった?とか・・・?
あたしはいろんなことを一瞬で考えてしまった。
「そっか〜・・・じゃあ、誰かの彼女とかじゃないの?」
「えっっ!!ち・・・違います!!」
何?なんなんだ?
「他の二人も?」
「え・・・あ〜、はい・・・」
・・・ん?・・・なにが聞きたいんだ?
・・・・・・もしかして・・・・・・狙いは・・・あの二人・・・か?
「そっかそっか〜、いや〜、3人ともかわいいから絶対誰かの彼女だと思ってたよ。」
・・・3人って・・・無理やり増やしてない?
・・・ほんとは、二人って言いたいんじゃ・・・。
冷静になってきたあたしは、事の流れを把握しだした。

こういう展開、以前にもあった。
直接本人にではなく、とりあえず友達のあたしから情報を得ようとする手段。
高校の時に、きょんちゃんの事であったなぁ。
その時も先輩に聞かれたっけ。
ましてや、今は美樹もいるからどっちのことかはわからないな・・・。

「あっ、自己紹介してなかったね。」
・・・・・・別に、されても・・・
「俺、佐々木 耕介。3年2組でサッカー部の部長やってんだ。」
・・・ほう・・・部長か・・・そういや、何かと仕切っていたな・・・
「んで、こいつは同じく3年2組の木村 太郎。」
――っぶっっ!!
思わず吹き出しそうになった。
一瞬、ニュース番組の人の顔が出てきてしまって・・・同姓同名か・・・。
「どうも。」
その木村先輩とやらが、またもやまぶしい笑顔を見せてきた。
「あ・・・どうも・・・」
つられて、笑顔になってしまう。絶対ひきつっているだろうけど。
「で?そっちは?」
「えっ?・・・あたし・・・?」
佐々木先輩は、悪気もなく聞いてきた。
・・・・・・必要・・・か?
そう思いながらも、この流れに逆らえず自己紹介することにした。
「えっと・・・2年2組・・・で、山田・・・智子です・・・」
「へ〜、じゃあ智子ちゃんでいい?」
・・・いきなり・・・下の名前かよっ。
心の中でつっこむも、一応返事をする。
「あ〜・・・はぁ・・・」
「ほかの二人のうち一人は名前わかるんだけど。山下 美樹・・・ちゃんだったよな。同じ小学校だったからさ。」
ふ〜ん・・・東小学校か・・・ってことは、松井君とも同じか・・・。
「もう一人は?なんて名前?」
・・・・・・もしかして、きょんちゃん狙い?
だとしたら、田口君・・・やばくない?
あたし、教えない方が・・・・・・でも、同じ学校だし、いずれバレる・・・か。
どんどんあたしの予想は膨らんでいった。
「・・・中田・・・京子です。」
「ふ〜ん、京子ちゃんかぁ。なに?3人とも部活やってないの?」
「・・・美樹は、なにも。あたしときょんちゃんはテニスを・・・」
「・・・きょんちゃん?・・・ていうんだ。へ〜、テニス部なんだ〜・・・。」
やばっ・・・なんとなくきょんちゃんという呼び名を言ってしまったことが、いけないような気がしたから。
きっと、この佐々木先輩なら・・・
「で、美樹ちゃんときょんちゃんは?もう帰ったの?」
・・・やはり・・・もうあだ名で呼んだか・・・。
「・・・いえ・・・向こうで待ってるんで・・・あの、もう行きますね。」
とっととこの場を去っておくべきだった。
あたしは、言いながらその場を離れだした。
「・・・あのさっ・・・」
意外に、木村先輩の方が呼び止めた。
それに対し、佐々木先輩も意外と思ったのか、木村先輩のほうを見た。
「あ・・・えっと・・・。」
勢いよく呼び止めたわりに、だんだんと声に覇気が無くなっていく。
・・・・・・何か、頼まれる・・・とか?
「その・・・っつきあって、欲しいんだけど・・・。」
・・・・・・は?


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