20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:あの頃へ 作者:こまち

第37回   37
0−0で前半を終えた。
決して強豪相手に負けず劣らずの接戦で、惜しいシーンはいくつかあった。
一息つくため、あたしらはいつの間にか立ち上がっていた腰を降ろした。
と同時にあたしはある異変に気付いた。
・・・っ!!・・・まさか・・・!?
いや、でも待てよ・・・・・・そういえば、2年の時か・・・?
降ろした腰をすぐにあげて、あたしはカバンを手に取った。
「・・・どうした?」
隣に座っていたきょんちゃんがあたしの行動を不思議に思った。
「えっ・・・あぁ、うん・・・その・・・」
〜〜〜っえぇい!!恥ずかしがっても無理だ。この際・・・
「・・・実は・・・さ・・・その、なっちゃった・・・みたいで・・・」
「・・・え?・・・えぇ!?・・・そうなの?」
きょんちゃんは、わりと早くわかってくれた。
「なになに?どうしたの?」
あたしらのやりとりに美樹も加わった。
「あれだよ、あれっ!!」
周りに誰がいるわけでもないが、自然と小声になる。その様子と発言で美樹もピンッと来たようだ。
「そうなの!?え〜、大丈夫?」
とっさに美樹はあたしの後ろを見た。
「・・・わかんない・・・」
「早くトイレ行ってきなよ。」
きょんちゃんも後ろが気になりながら、言ってきた。
「・・・・・・それがその・・・なくって・・・」
「あぁ、そっか〜。予定より早かったの?」
美樹が何気に聞いていた。
「・・・・・・ううん・・・・・予定も何も・・・その・・・今日が、はじ・・・めて・・・」
だんだんと声が小さくなってしまう。
「・・・あ・・・そっか・・・ていうか・・・それならなおさらびっくりじゃん!」
「あたし持ってるよ。ちょっと待って・・・」
きょんちゃんはそういうとカバンをあさって、目的のものを取り出した。
巾着袋に入ったまま、あたしに手渡した。
「はい。早く行っといでよ。それかついていこうか?」
「あぁ、いいっ。それは大丈夫・・・じゃあ行ってくるね。確か来る途中にそれらしき建物あったよね?」
「えっと〜・・・うんっ。あったあった。」
「気をつけてね。」
「・・・うん。」
二人に見送られ、あたしは校舎の方へと向かった。

・・・・・・完璧に忘れてた・・・。
あたしはたった今、初経を迎えた。
以前も2年のこの時期に、あたしは初経になったはずだった。
それが今回も同じくらいになってる。
・・・・・・どちらも同じあたしなんだから当たり前なんだけど、すっかりないままの生活に慣れていて、身体の成長の事なんて、気にもしていなかった。
それに、あたしは普通より遅い方だったから、以前もやっとなったことを恥ずかしくもあり、少々ホッとしていたのを覚えている。
これでみんなと仲間入りなんだって・・・。

トイレをすんなり見つけることが出来て、事を済ませる。
ほんとに、始まってすぐだったから大事には至っていなかった。
安心してホッとしながらトイレを後にし、またグラウンドの方に向かっていた時だ。
「・・・・・・山田?」
―――っっ!!
すぐに呼ばれた方を振り返る。聞き覚えのある、その声の主へ・・・。
・・・・・・数ケ月振りに呼ばれた名前。
・・・・・・そして、その姿。
「・・・・・・せん・・・せい・・・。」
そう呼ぶことが、やっとのことだった。

「・・・やっぱり〜、山田か〜。なんだ、久しぶりだな〜。」
相変わらずの笑顔で、近づいてきた。
「また、どうしてここにいるんだ?」
あたしとの距離が1mくらいのところで止まった。
「・・・え・・・っと、サッカーの・・・練習試合で・・・。」
あたしは話の流れを止めないようにと、必死に答えた。
「・・・サッカー?・・・あれっ?お前って・・・サッカー部・・・のマネージャーでもしてたっけ?」
「いやっ・・・その、頼まれて・・・応援に・・・」
「ほ〜、応援か〜。・・・ん?ってことは、うちのサッカー部と暁中(あたしらの学校名)が試合してんのか?」
「・・・はい・・・今、前半終わったとこです。」
「そっか〜、知らなかったな〜・・・よしっ、ちょっと見てみよう。今何対何だ?」
尾上先生は、訊ねながらグラウンドの方へ歩き出した。
あたしも、追いかけるように足を進めた。
「・・・まだ0−0です。」
「そっか〜、まぁ、ここ強いのは聞いていたけどな。でも、暁が今日来るとな。良かった〜、見回り当番で。」
「見回り?」
「あぁ、休みは先生らみんなで交代で学校来てんだよ。まぁ、警備員変わりだよ。雇うと人件費高いしな。」
「・・・そうなんだ。・・・じゃあ・・・ほんと偶然なんだね・・・。」
「ほんとだよ。またこうして山田に会えるとはな。何ヶ月ぶりだ?えっと〜・・・」
「・・・4ヶ月・・・」
あたしは前々から考えていたことなので、すんなりと答えた。
「・・・そっか〜・・・もうそんな経つか〜、早いな〜・・・」
先生はしみじみと言った。
「・・・それより、おまえ・・・」
そう言うと先生は、後ろを歩いていたあたしを振り返った。そして、ジーっと見てきた。
―――っ!!・・・えっ・・・なっ、なに・・・!!??
あたしは、動くに動けず、見られるがままだった。
「・・・・・・老けたな・・・。」
・・・・・・は?・・・・・・はぁ〜!!??
みるみるうちに、顔が違う意味で赤くなっていった。
「ちょっ、なにそれっ!!??」
「・・・・・・私服のせいか・・・中学生には見えんぞ?」
「・・・どうせなら・・・大人っぽくなったって言えないの?」
「まぁ、そういう意味でも間違っちゃいないけどなぁ〜・・・」
「・・・先生っ・・・相変わらず失礼な発言ですよっ!!」
「・・・くすくすっ・・・おまえこそ、相変わらず生意気なんだよ。」
そう言って、久しぶりに先生の手があたしの頭に触れた。
そして同じように、緊張が走った。
でも、その後はあたしはすんなり受け答えができていた。
「そりゃあ、成長してませんからっ。なんせ、中学生だもんっ。」
「はっ、そういう時だけ、子供ぶる。っとに調子いいよな〜。」
ほんと・・・自分でも予想外に先生と会話ができていて、安心した。
もっと、てんてこまいになってしまうかと思っていた。
最初はさすがにびっくりしたけど、でもだんだんと前のような先生とのやりとりができて嬉しかった。

グラウンドまで来たところで、暁中のところにたどりつく前に、応援していたここの女子生徒達が尾上先生の存在に気付いた。
「あ〜っ、尾上先生〜。応援!?」
あたしが隣にいようが関係なく、数人近づいてきた。
「おっ、お前ら来てたのか?」
先生の顔見知りみたいで、すぐにうちとけた。
「何?先生今日当番?」
「そうなんだよ。っとに忙しい休日なのにさ〜・・・」
「うっそだ〜、ヒマしてたんでしょう?どうせ。」
「なんだと!?・・・よくわかったな・・・」
「きゃははははっ、当たり前じゃ〜ん・・・」
・・・・・・なんか・・・やけに・・・楽しそう・・・
しかも、さっきから・・・・・・タメ口ばっかだし・・・
・・・・・・注意なし・・・か!?あたしには散々言っといて・・・!
先生の顔を思わず睨んでしまっていた。
そして視線を周りの女生徒に戻したところで、一人の子と目線が合った。
・・・・・・え?・・・・・・何?
なんとなく・・・嫌な感じがした。
するとすぐにあたしから視線を外し、先生を見て笑って言った。
「ねぇ、先生。一緒にこっちで応援しようよ。」
そして、先生の腕を引っ張った。
「あ−・・・うん、まぁ、あとでな。」
「え〜!!なんで〜!?」
他の女子も言い返していた。
「ちょっと、前の学校の奴らんとこ行ってからな。」
そう言って、先ほど引っ張られた腕を、ゆっくりとほどいた。
「・・・っ、なんで?先生は今ここの先生でしょ?どうして前のところが優先なの?」
納得いかず、強気で先生を引き止めた。
「・・・優先とかじゃなくて・・・とりあえずだよ。・・・今でも前でも、みんな生徒には変わりないから。」
・・・・・・先生・・・。
あたしだけじゃなく、みんなも無言になってしまった。
「・・・・・・そうやきもちやくなよ〜っ。すぐ戻ってきてやるからさっ。」
その場の雰囲気を変えるためか、先生はお茶らけて見せた。
「そっ・・・そんなんじゃないよ。・・・もうすぐ調子に乗るんだからっ。別に戻ってこなくていいよーだ。」
そう言いながら、笑って元の場所へ戻って行った。
そして先生は、暁中の控えの方へ進んだ。

今でも前でも・・・生徒に変わりない・・・か・・・
いつまでもあたしの心に残っていた言葉だった。

休憩時間はまだ残っており、尾上先生の突然の登場で、暁中の生徒らは喜んでいた。
当然1年生らは知らない先生だけど、2、3年正は関わりがあったので、話に花が咲いた。
あたしは美樹ときょんちゃんの所へ戻った。
「そっか〜、尾上先生って、ここだったんだね〜。すっかり忘れてた〜。」
きょんちゃんらしい発言だ。
「・・・・・・あたしも・・・忘れてた・・・。」
美樹はそう言いながら、少しあたしの事を気にかけてる感じだ。
「・・・・・・日曜なのに、なんでいたのかな?」
そう続けた。
「・・・なんか、休みの日は、先生たち交代で見回りしてるんだって。警備員変わりに。」
「ふ〜ん・・・それで、今日偶然いたんだ・・・。」
「・・・そうみたい。」
「あたしも先生のとこ行ってこようっと。」
きょんちゃんは、みんなが集まっている場所へと走って行った。
「・・・・・・美樹は?行かないの?」
「・・・・・・智子こそ・・・」
「・・・・・・あたしここにくるまで、話してたから・・・。」
「・・・・・・そっか・・・・・・良かったね・・・偶然でも・・・会えて。」
「・・・・・・うん。・・・良かった・・・」
あたしは素直にそう思えた。
「・・・・・・あたしも挨拶してくるね。」
美樹はそういうと先生の方へ向かった。

美樹ときょんちゃんの存在にも気づいて、先生は嬉しそうだった。
・・・・・・そりゃあ、そうだよね・・・・・・
みんな、大事な大事な・・・生徒なんだもんね、先生にとって・・・。
ここにいるみんなも、あっちにいるみんなも・・・。
そして先生は、あたしらとは違う環境の生活になっている。
学校が違えば、人も違うんだから当たり前なんだけど・・・。
でも、いつまでも立ち止まっててはいけないんだ、そういう風に思えてきた。

そして・・・あたしは心の中が、きれにスーッとなった気がした。
告白もしていない恋が、今完全に終わったはずなのに・・・
あたしは、なんでか悲しいという気持ちより、スッキリした気持ちの方が強かった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 19737