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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第36回   36
そして日曜日。

あたしら3人は、バスで向かった。
中学生にとっての、このバス代はすご〜く痛かった。
山田家のお小遣いは、月に3000円。
以前なら、食べ物にしか使っていなかったが、今のあたしは身だしなみ関係にばかり費やしていたので、とてもじゃないがお金が足りない。
部活の為、嫌でも太陽の下ばかりにいるから、紫外線対策はもとろんのこと、毎日のお肌のお手入れや、(化粧はさすがにしていけないが・・・)服装もこの時代に合わせたおしゃれに気を使っていた。
ほんとうなら、今日の服装だって新しのが欲しいくらいだったけど、買いに行く時間もなければ、自分の足だけでは、お店が遠くて買いに行けなかったのだ。

「・・・うわ〜・・・なんか他の学校入るの、あたし初めてだからちょっと緊張・・・。」
門をくぐったところで、美樹は辺りをキョロキョロしていた。
「あたしだって・・・部活で他校行ったことあるけど、ここは初めてだからなんか・・・変な感じ・・・。」
きょんちゃんも続けて辺りを見回していた。
「・・・・・・」
あたしは・・・、二人とは違う緊張をしていた。
・・・・・・日曜だから、いないかも・・・・でも、もしかしたら・・・
尾上先生の転任先の学校。
半分期待、いや、半分以上期待していた。

「とりあえず、グラウンド行ってみる?ここにはそれらしき人達いないもんね。」
「うん・・・あっちかなぁ。」
そして、探し歩いて数分。
だんだんと大勢の声が聞こえてきた。
ケンちゃんの言ったことは、まんざら嘘でもなく、数人の女の子たちが応援席らしきところに集まっていた。
知らない顔ばかりだから、きっとここの生徒たちなんだろう。

「・・・お〜、来た来たっ。お〜い、こっちこっち〜!!」
自分らの学校の生徒が集まっているところから、ケンちゃんと田口君が手を振っていた。
それと同時に、何人かの生徒たちがあたしらに注目した。
いくら同じ学校の人たちとはいえ、知り合いでもないのに見られるのは恥ずかしかった。
あたしらは、顔を下に向けながら、早足でケンちゃん達の方へむかった。

「〜〜〜ちょっとっ、大声で呼ばないでよ〜、恥ずかしいでしょ!」
あたしはケンちゃんの腕をパシッと叩いた。
「なんで〜?・・・あっ、大丈夫。だれも山田の事は見てないから。」
そう言って、美樹ときょんちゃんにニッコリと微笑んだ。
・・・こらこらっ。
「・・・あの・・・他の女子は?・・・まだ来ていないの?」
きょんちゃんは、自分らの学校の応援席を見渡した。
確かに、ここにいる女子はあたしら3人だけだった。
あとは、部員らしい生徒ばかり。
「えっ、・・・あぁ、・・・そうだね・・・来てないね。」
・・・なんかしらじらしい。
やっぱり、ただの企みだけか?
あたしは声に出さなかったが、ジーっとケンちゃんを目で訴えていた。
それに本人は気付いたようだが、なおもシラを切った感じで、
「まぁ、他の女子が来てくんなくても、お前らだけで十分だよ。ほらっ、みてみ!」
そういって、向こうのチームの応援席を指さす。
「だ〜れも、お前らより勝る奴なんていないじゃん!!」
・・・なんの勝負だよ・・・
ほんっと調子だけは相変わらずいいな・・・っていうか、指をさすな!指を!!
とっさにケンちゃんの手を下に降ろさせた。
「なんだぁ!?野村の彼女?」
3年生の何人かが、声をかけてきた。
そして、たった今ケンちゃんの手を触っている状態のあたしに目をやった。
・・・ん?・・・あたしのこと!?
思わず手をパッと引いた。
「まっさか〜。違いますよ。俺そんな趣味悪くないし。」
―――っこの〜!!
「・・・こっちだってお断りだっての!」
あたしはわざと冷静に返した。
そんなことでいちいち怒ってるのアホらしいし。
「そうなんだ、じゃあそっちの二人は?」
先輩らは後ろにいた美樹ときょんちゃんに目をやった。
「あのっ・・・同じクラスのよしみってことで、応援頼んだんすよ。」
すぐに、田口君が答えた。
まぁ、友達の彼女とは思われたくないわな・・・。
「じゃあ、あっちの方で見てる?ここだとボール飛んでくるかもだし。」
「・・・あぁ、うん・・・」
きょんちゃんが一番田口君と近い場所にいたから、返事をして誘導する彼の後を追った。
それに美樹とあたしも続いて。
田口君は、あたしらをこの場から遠ざけたいような感じだ。
きっと、自分の好きな子を先輩らに関わらせたくないんだろうな。
きょんちゃん、かわいいし・・・。
・・・っていうか、ほんとに好きなんだ。田口君・・・。
なんとなく、改めてそんな事を思ってしまった。

応援席まで来たところから、ウォーミングアップをしていた松井君が見えた。
その姿を捕らえた美樹は、こんな不慣れな場所にいたため、余計に安心するかのように、彼を呼んだ。
「リョーマ君っ。」
美樹の声に反応し、その場にあったボールをドリブルしながらこちらにやってきた。
「・・・・・・けっこう早かったね。」
「うん、まあね。念入りにバスの時刻表確認したもんね。」
そう言いながら、あたしときょんちゃんに相槌をうった。
それにコクンと頷いた。
あたしはなんとなく、松井君と話をするのをためらった。
わざわざ、先生のこと言ってたし・・・。

「ところでさ緑ヶ丘って強いの?」
美樹が松井君の蹴ってきたボールを見よう見まねで足で動かしてみる。
「あぁ、うん。県大会常にベスト4に入ってるし、かなり強いよ。うち今まで勝ったことないし・・・・・・あぶなっ!!」
美樹の足がボールに乗ってしまい、一瞬バランスを崩した。
話しながら様子を見ていた松井君は、とっさに美樹の腕を掴んだ。
「・・・あ、あははは・・・ごめんごめん、ありがと。」
「・・・気をつけろよ。」
そしてボールを足で奪い取り、リフティングをやり始めた。
美樹は元の位置に戻ってきた。
二人の態度はこれといっていつもと変わらなかったが、あたしときょんちゃんはなんとなく、変に意識してしまっていた。
・・・・・・なんか・・・たいした事じゃないんだろうけど、見てるこっちが照れてしまった//・・・。

「お〜い、集合!!」
部長らしき人が召集をかけた。
「いこっか、リョーマ」
田口君が、声をかける。
「あぁ・・・。」
そして二人は、みんなの元へ走って行った。

ミーティングらしきことが行われ、試合前の緊張感が伝わってきた。
たかが練習試合でも、気は抜けない様子だ。
円陣を組んで気合いの掛け声が、互いのチームからグラウンドいっぱいに響き渡る。
それぞれ自分のポジションに付き、その場で体を動かす。

応援目当ての3人は揃ってレギュラーだ。
そして・・・ホイッスルが鳴った。
補欠選手や1年生達の応援合戦が始まった。

はっきり言って、あたしはサッカーのことなんて、あまりわからない。
ゴールにさえボールが入ればいいんでしょ?くらいの知識しかない。
さすがに日韓ワールドカップの時は自国愛ということもあり、多少なりとテレビで観戦はしたが、ルールとか、何が違反とかはまるでわからない。
それでも、だんだんと見入ってしまっていた。
頑張っている3人の姿は、学校での普段の姿とはまるっきし違って、正直驚いた。
どのプレーが上手下手という区別もわからなかったが、3人とも決して下ではないことがこのあたしにでもわかる。
それに、顔がいいからモテるのはわかっていたが、それだけじゃないんだってことにも気づかされた。
さっきまで、むかついていたケンちゃんでさえ、少しかっこよく見えてしまう。
・・・・・・こんな姿見たら・・・好きになる女の子たちの気持ち、少しはわかってくるなぁ・・・・・・ただ単にあたしが今まで知らなかっただけだろうけどね。

最初は無言で観戦していたあたしらも、徐々に熱が入ってきた。
気がついたら、3人とも大声で応援しまくっていた。
こんなに、白熱したのは何年振りだろ・・・。


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