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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第35回   35
月日は流れ、中身が中学時代に戻ってしまってから、半年が過ぎた。
季節は夏に入り、制服も、とっくに夏服だ。

あたしは、すっかりこの生活になじんでいた。
友達との交友関係も、これといって何の問題もなく、いじめにあっていたはずの過去が今では嘘のようだ。
そのいじめられた相手とうまくいってないわけでもなく、だからといってすごく仲がいい訳でもなく、クラスメイトとしてのつきあいができていた。
それに以前と違うことがあり、美樹と2年でも同じクラスになっていた。
いないはずだった親友と共に過ごす毎日は楽しかった。
きょんちゃんとも変わらず同じクラスで、3人でよくつるんでいた。
まどかとなっちゃんとはクラスが別々になったけど、変わらず仲がいい。
まどかは部活でも一緒だし。

そして、あたしは2年生になり考え方を少し変えた。
最初の頃は、人間関係のことをやり直したくて、そうなるように頑張った。
でも、今はやるべきことをやりきろうと思い、勉学に励んだ。
決して、成績の良い方ではなかった学生時代。
これを変えることができたら、将来は違ってくるんじゃないだろうか。
もっと、人生観が広がるんじゃないだろうか。
知らなかった道にも進めるんじゃないだろうか。
そういう風に思ったら、学べる時に学ばなきゃ、って気持ちに思えてきた。
大人になって、ちゃんと勉強しておけば良かったってことも、幾度となく思っていたことだし。

「あ〜あ、期末最悪だったよ〜・・・順番落ちてたし・・・」
休み時間。
期末テストの結果がわかり、美樹が嘆いてきた。
「絶対、親に怒られる・・・智子は?どうだった?」
「・・・あたし?・・・まぁ、順位は上がってたけど・・・。」
そう言いながら、結果の表を目にする。
すかさず、それを美樹が奪い取った。
「あっ、ちょっと・・・」
慌てて奪い返そうとしたが、すでに遅し・・・
「・・・え〜っ!!・・・すごっ!!」
目を見開いている。
「・・・もうっ、美樹っ!!」
あたしはやっとのことで取り返した。
「・・・すごい・・・すごいよ。クラスで3番じゃん・・・全体でも15番だし・・・。」
少しの間にちゃっかり覚えてるし・・・。
「・・・・・・まぁ・・・前よりは頑張ったから・・・。」
一度習ったことだし、当然の結果といえば当然なんだけど・・・。
あたしとしてはもっと上を狙いたかった。
・・・まぁ、結局頑張ってもこの程度までなのかも。あたしの頭では・・・。

「次移動だよ、いこ。」
きょんちゃんが教科書を持って誘いに来た。
「あぁ、うん・・・」
あたしも急いで用意する。
「ちょっと、きょんちゃん!!期末順位何番だった?」
美樹は、きょんちゃんの両腕をつかんだ。
「えっ・・・えっと・・・」
あたしも気になった。
きょんちゃんは昔から頭が良かった。
常に10番以内に入っていたし。
高校も同じだったけど、成績別にわける方針だったから、一度も同じクラスになったことはない。
なんで、こんなあたしと頭のいいきょんちゃんが仲良くしてくれたのか、今となっては不思議なこと。
「・・・言うの?」
言うまで離さない勢いの美樹に、抵抗してみた。
コクンっ。
大きく頷く美樹に観念したようだ。
「・・・・・・5・・・番・・・」
「クラスで?・・・全体で?」
「・・・・・・ぜん・・・たい。」
「はぁ〜・・・」
力が抜けたように、きょんちゃんの腕から手を離した。
・・・すっご〜い・・・さすが、きょんちゃんだわ・・・
「・・・・・・あたし・・・このままじゃ駄目だね・・・どうしよ〜・・・」
「・・・まだ1学期じゃん。今度頑張れば。」
あたしはトントンっと教科書を揃え、席を立った。
「・・・簡単にいうけど・・・あたしこれでも今回頑張ったんだよ。ううん・・・今回といわず、今までだって・・・でも、いっつも似たり寄ったりの成績だよ〜。どうしよ〜・・・。」
いつまでたっても、次の準備に取り掛からない様子だ。
「・・・んもうっ・・・じゃあ、今度のテストの時、一緒に勉強しようよ。」
美樹の腕を引っ張った。
「・・・ほんと!?」
急に声が明るくなった。
「・・・うん・・・でも、あたしとしたからってどうにかなるとは思わないけど・・・あたし役に立てないよ。」
「そんなことないって〜、ねぇ、きょんちゃんも協力してくれるでしょ?」
「うん。いいよ。」
快く承諾した。
ま、きょんちゃんと二人でした方が断然いいだろうけどね。

あと2週間もすれば、夏休み。
遊ぶ予定も立てなくちゃ。
最近の昼休みの話題はその事ばかりだ。

今日もいつものように談話していたら・・・。
「ねぇねぇ。」
野村 健二がやってきた。
彼とは、2年になって同じクラスになった。
以前なら、彼があたしらに話しかけてくる事なんて考えられなかったが、今ではそれが当たり前になっていた。
「なに?ケンちゃん。」
美樹もいつものように返す。
親しい仲の女子は、たいていそう呼んでいる。
あたしときょんちゃんも最近ではそう呼ぶことに慣れてしまった。
もちろん最初はすごい抵抗があったけど・・・。
ずっと、「野村君」としか呼んだことないし・・・まぁ、彼の名前を呼ぶ機会も少なかったけど・・・。

「おまえらさ、今度の日曜ヒマ?」
自然と椅子に腰掛け、あたしらの輪の中に入り込んだ。
「日曜?・・・なんで?」
「サッカーの練習試合あるんだけど、応援来てよ。」
「「応援!?」」
あたしらは同時に聞き直した。
「そ、応援。」
ニコニコと笑顔で返す。
「・・・なんで?・・・しかも本番じゃなくて、練習試合を?」
あたしは納得いかず、質問攻めになった。
「対戦相手の応援さ〜、すんごい女子が多いんだよ〜。それで先輩たちも集めるから、俺ら2年も声掛けろってことでさ。」
「・・・じゃあ、あたしらじゃなくても・・・。」
「そういうなよ、山田ってつめてーな〜。」
・・・・・・わざとらしい・・・こいつの魂胆はなんとなくわかるんだよね・・・。
「いいじゃん、おもしろそ〜、行こうよ。」
「うん、そうだね。いこ、智子。」
美樹ときょんちゃんは行く気満々だ。
「ほら〜、山下と中田は優しーな。おまえも見習えよ〜。」
強気な態度であたしを追いつめる。
〜〜〜っ、この〜っ!!
どうせお目当ては、きょんちゃんに決まってる。
片想いしている田口君のために。

そもそも、あたしらと話すようになったのもきょんちゃんとの距離を縮めるためだったんだ。
新学期、クラスの掲示板が出されて、あたし達3人は一緒のクラスを喜び合っていた。
そこに、このケンちゃん、こと野村 健二と問題の田口 武がやってきた。
はじめの一言はケンちゃんの、
「よっ、裏番長!1年間よろしくなっ。」
・・・だった。
当然のように、あたし以外の二人はなんのことか意味がわからなかった。
「?・・・なに、裏番長って・・・?」
きょんちゃんが聞いてきたところが、相手の思う壺だった。
「山田と仲いいの?大丈夫?ひどいことされてない?なんかあったら、俺と田口に言ってよね。いつでも相談のるから。」
・・・・・・なんて奴だ。
あたし自身ケンちゃんの事をよく知らなかったから、こんないい加減な事をいう奴なんて思ってもみなかった。
これを機に、どんどんケンちゃんはあたしらと絡むようになって、元々同じクラスだったということで、田口君も以前より、話すようになった。
当然最初あたしは好印象は持てず、距離を保とうとしたけれど、後になってケンちゃんが、田口君の為に仲良くなるきっかけを作りたかったということで、あたしをダシにしたことを謝ってきた。
協力はいいから、せめて同じクラスのよしみで付き合って欲しいって。
その時の態度が、すごく友達思いに感じてしまったあたしは、しかたなく美樹やきょんちゃんに合わせて、この二人との関係を縮めていったわけだ。
だからというわけでもないが、自然とよく話すようになった人物がもう一人いた。

「今度の練習試合、応援来るんだって?」
昼休み。
トイレから教室に戻る途中、廊下ですれ違った、松井君に声を掛けられた。
「あ〜・・・うん、まぁ。美樹もきょんちゃんも乗り気だもん。あたしもついでにってことで。」
「ふ〜ん・・・ケンの思惑通りか・・・。」
「・・・ほんっと、友達思いの人だね。」
あたしは半分嫌味のように言った。
「・・・半分はそうかもだけど、半分は興味本位・・・だな。」
松井君は、特に田口君に協力するわけでもなく、かといって邪魔する訳でもなく・・・。
一歩遠くから見守るというか・・・上から目線でみてるというか・・・。
まぁ、人の恋路には興味なし・・・といったところか。
「・・・対戦の学校、聞いた?そこであるんだけど。」
「ううん、詳しいことは何にも。あたしはついていくだけだから別に知らなくても・・・。」
「・・・・・・緑が丘中だよ。」
「・・・緑・・・が丘・・・」
地元にある学校だから、聞いたことのあるのは当然だったけど、違う意味であたしは頭が一瞬真っ白になった。
「・・・・・・尾上のいるところ。」
―――っ!・・・やっぱり・・・
・・・っていうか・・・こいつまだ覚えてたか・・・。
「・・・・・・へぇ、そっか・・・」
あたしはそれ以上何も言えなかった。
最近頭の中から、消え去っていた人物だし、突然思い返されて、戸惑いが少々出てしまっていた。
その時、チャイムがタイミングよく鳴り、それを合図にあたしはその場を離れた。
「・・・じゃあ。」
「おー・・・。」
それぞれ教室に戻った。

あたしが次の授業に集中できなかったのは、言うまでもない。


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