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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第33回   33
例の駐輪場での犯人探しは続けていたらしが、どうやら有力な情報は見つからなかったらしい。
毎日ヒヤヒヤとしていたが、数日たってバレないことがわかってホッとした。
ましてや、松井君の好きな人でもないのに、とばっちりを受けてもたまったもんじゃないし。

そうこうしているうちに、あと何日かで卒業式、修了式が近付いていた。
そして、あたしはまたある記憶を思い出すことになった。
それは・・・・・・離任式の事だ。
この時期になると、教師にとって当たり前のことだった。
・・・・・・あたしを思い悩ましていた、尾上先生は4月から、他の中学校に転任する。

あの時なんて、こんな事なんとも思っていなかったのに・・・。
正直この事実を知ったとき、ショックだった。
と同時に、やっぱりあたしは先生の事を好きだったのかも・・・とやっと自覚してきた。

「ねぇ、智子。・・・前聞きそびれたんだけど・・・」
また美樹と二人っきりになった時、聞かれた。
美樹は、わざと二人の時だからこそ聞いてるんだ。
「・・・・・・ほんとに先生のこと、なんとも想ってないの?」
・・・・・・あたしも・・・真剣に答えなくちゃ・・・。
「・・・・・・何度も、そんなことないって・・・思ってた・・・・・・でも・・・そう思うってこと事態が・・・・・・そうなのかなって・・・」
「・・・・・・そっか・・・このまま、何も言わず別れるの?」
「えっ、・・・何もって・・・言われても・・・」
はっきり言って、先生に対して何かを伝えるつもりはない。
そんなことできっこない。
言ったところでも、どうにもなんないし・・・。
「・・・・・・そりゃあ、先生と生徒って立場だから、そう簡単にはいかないだろうけど・・・でも、もう会えなくなるかもだよ。」
「・・・・・・」
確かに、転任して以来、尾上先生と再会したことはない。
二十歳の時の同窓会にも、3年の時の担任しか来てなかったし・・・。
「・・・・・・何も言わずに別れて・・・後悔するかもだよ。」
―――っっ!!
‘‘後悔‘‘その言葉にドキッとした。
あたしはこの状況になって、何度そう思って過ごしてきたか・・・。
後悔しないため、もう一度やり直してきた。
・・・・・・でも・・・恋愛の事なんて・・・幾つになっても、何度重ねても、臆病な自分がいる。人の為になら多少の困難乗り越えられるのに・・・。
結局、先生への想いを白状したものの、何かをする決断はつかなった。

そして、時間は過ぎ、離任式の日が来た。
舞台に上がって、転任する先生たちが紹介される。
尾上先生も、その中に並んでいる。
生徒代表から、花束を受け取り簡単な挨拶が繰り広げられる。

あたしは、なんとなくその姿を目にすることができなった。

式が終わり、個々に親しかった生徒達は、先生との別れを惜しんでいた。
個人的に花束を渡す生徒もいた。
一応3組からもみんなでお金を出し合って花束を渡したが、学級委員長が持って行ったんだろう。
帰りの時間が来て、だんだん生徒も少なくなってきた。
その日も部活があり、あたしは特に先生と接することなく校内をあとにしていた。
思えば、ここ数日先生とまともに会話をしていない。
自分の気持ちを認めたのが一番の原因かも・・・。
普通にしようとすればするほど、態度に出てしまいそうだった。

準備運動がてらに、学校の周りをきょんちゃんとまどかと走っていた。
テニス部だけに限らず、運動部のほとんどが始めに走っていた。
途中、地獄の坂道と呼ばれる場所があり、そこが体力をつけるためによしとされていたみたいだ。
元々体力のないあたしは、二人に遅れをとってしまった。

・・・はぁ、はぁ、・・・何度走っても・・・はぁはぁ・・・慣れないな・・・
走っていたはずの足は、すでに歩くのもやっとだった。
・・・ながっ、この坂道・・・
坂道の終わりを見上げるが、まだ半分はあるみたい。
「・・・・・・そんなんじゃ意味ないんじゃない?」
いつの間にか、後ろから誰かが走ってきていた。
あたしは息を整えながら、後ろを振り返った。
「・・・・・・余計なお世話・・・」
相手を確認すると、あたしは投げやりに答えた。
隣まで近づくと、相手も歩き出した。
「・・・・・・ちょっと、なんで松井君まで歩いてんの?人の事言えないじゃん。」
息は乱れておらず、平然としたままだった。
「・・・・・・別れの挨拶したの?」
人の質問には全く無視だ。
「は・・・?何・・・言ってんの?」
「・・・・・・尾上だよ。いいの?このままで。」
―――っっ!!何っ・・・なんで、こいつがそんなこと・・・。
「・・・あのさっ、前も言おうと思ってたんだけど、なんか勘違いしてない?別にあたしは先生の事なんて・・・。」
「けっこう強情だよね。」
あたしが言い切る前に松井君が言った。
「―――っ、何言って・・・」
「ま、あんたのことだから、意地でも認めたくないかもしんないけど、素直になれば?最後なんだし。」
〜〜〜っ、なんなのよ・・・なんで・・・?
「・・・・・・相手が先生だから、躊躇してんの?」
・・・んもうっ!!
「・・・そんなのっ・・・当たり前じゃんっ!!」
半ば、やけくそのようになり、白状してしまった。
このまま否定しても、彼には誤魔化しきれない気がした。
「・・・なんで?」
「はぁ!?・・・なんでって・・・そんなの決まってるでしょ!・・・何か言ってどうなるの?別にあたし・・・どうかしたいなんて思ってないし・・・どうにもなんないし・・・」
「・・・・・・なんか、山田らしくないんじゃない。そういうの。」
「なによっ、あたしらしくないって・・・そんな何でもかんでも思ってること言えるほど、あたし馬鹿じゃないよ。それに・・・先生からしたら、今のあたしなんて・・・相手にされるわけないでしょ・・・。」
「・・・・・・歳が離れてるからってこと?」
「・・・・・・それもそうだし・・・先生って立場だし・・・」
「そんなの、いい訳じゃん。関係ないじゃん。」
気のせいか、すごく強気な発言に聞こえた。
「・・・歳なんて、関係ないっしょ・・・」
そう付け加えた。
・・・・・・あ・・・・・・もしかして・・・・・・自分の事・・・?

その時、後ろから話し声が聞こえてきた。
サッカー部らしき何人かが、追いついてきたみたい。
それに気付くと、松井君はまた走り出した。
「・・・んじゃ・・・お先・・・」
「・・・・・・」
黙ったまま後ろ姿を見送った。
・・・・・・なんで・・・彼はあんなこと言ってきたんだろう。
決して、からかってる感じではない。
むしろ真剣に言ってきてくれた。
まだこの時の真意は、あたしにはわからなかった。


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