3月に入り、卒業モードになってきた。 もっとも、あたし達在校生はいつもと変わらない生活を送っていたが・・・。
「ねぇねぇ、知ってる知ってる!?」 いつもの昼休み。 なっちゃんがどこからか戻ってきて、みんなが集まっているところにやってきた。 「なになに?」 平凡すぎる毎日にいいネタ話ができたと思い、みんなが食いついた。 「1組の子からさっき聞いたんだけど・・・あっ、美樹の方が知ってたかな?」 「え?何?何の事?」 自分のことを言われ、美樹は身を乗り出した。 「松井君のバレンタインデーのこと。」 ・・・・・・バレンタインデー?・・・・・・今頃そんな話? まだ1ヶ月も過ぎていないが、ずいぶん前の事に思える。 と同時にあたしは嫌な事まで思い返した。 「え〜、なになに?」 自分の幼馴染の事とわかり、余計に気になる様子だ。 「あのね、松井君、どうも一人だけからチョコ受け取ったらしいよ。」 「「え〜っ!!」」 「ちょっと、シーッ!!田口君に聞かれたらやばいよ。本人の耳にまでいっちゃうから。」 興奮気味のみんなを静める。 確かに田口君に聞かれたら当然ばれるな、噂話してたこと・・・ 「でもさー、ことごとくチョコの受け取り拒否してたって聞いたよ。あたしと智子そのひとつの現場立ち会ったもんね〜。」 きょんちゃんはあの告白シーンのことを言った。 「「そうなの!?」」 美樹となっちゃんとまどかは一斉にあたしら二人を見た。 「あ・・・うん・・・言っちゃまずかったかな・・・」 ついつい口走ったきょんちゃんは気まずそう。 「・・・まぁ、相手の名前言わなきゃ大丈夫じゃない?それより、ほんとなの?その話。」 あたしはフォローし、問題を元に戻した。 「あぁ、うん、そうそう。なんかね、放課後に貰ったらしいよ。」 「え〜!!マジで〜!!相手は?だれだれ?」 「それが相手は不明なんだって。」 「なにそれ?がせネタ?」 少しあきれて、まどか。 「ううん、部活の後、駐輪場で女子と一緒にいるとこ見た人はいるみたいよ。でも暗くてわかんなかったみたい。」 ・・・・・・ん? 「暗くてって・・・それじゃあ、リョーマくんだって違うかもじゃん。」 美樹も冷静に返した。 「それは確かに松井君なんだって。なんかその日、自転車パンクしたみたいで、尾上先生に修理してもらってたみたいだよ。次の日にそれ話してたらしいし。」 ・・・・・・ちょっと、それって・・・ 「へぇ〜・・・でも、チョコ渡してるのわかったの?顔すら見えてないのに。」 またしても、まどかは疑い深く問いただした。 「うん、その時はわかんなくって、このあとがまた驚きなんだけど、この間、松井君に告白して振られた子が、好きな子いないかしつこく問いただしたらしく、その時に誰かにチョコを貰ったことがわかったらしいよ。松井君本人が言ったらしいし。それで放課後一緒にいた子じゃないかって話が出てきてんのよ。」 ・・・・・・なんか変なことになってない?・・・・・・一緒にいたのは・・・あたし・・・のことか? 「そうなの!?え〜、もし本当ならすごくな〜い!?あの松井君を射止めたのだれ〜?」 一気にまた興奮状態になっている、まどか。 「・・・リョーマくんがそう言ったってことは・・・そうなのかなぁ・・・でも誰からとは言わなかったのかな?」 美樹は、何かが腑に落ちない感じで聞いてきた。 「あたしも聞いた話だからよくはわかんないけど、誰とかは言ってないみたいだよ。」 「そっかぁ・・・学校で貰ったのかなぁ・・・」 美樹はボソボソと呟きながら考えていた。 「ねぇねぇ、それって、何年生かもわかんないの?」 まどかは、美樹が言ってることは気にせずに次々と聞いた。 「え〜・・・わかんない。今犯人探ししてる最中ってことだけで。」 ・・・・・・犯人・・・って・・・ 「え〜っ、気になる〜っ!!でもさ、部活の後ってことは、1、2年でしょ?それで・・・あっ、智子っ!」 ―――ドキッ!! 突然あたしに話を振ってきた。 「なっ、・・・なに?」 「智子って自転車通学じゃん。駐輪場で見かけなかった?」 その質問にみんなの視線が集中した。 「え・・・いや・・・見て・・・ないなぁ・・・」 ・・・・・・そこで一緒にいたのは、あたしです・・・なんて今は言えない。絶対誤解されるし・・・。 「そっかぁ・・・そうそう見てる人いないのかなぁ・・・でも部活帰りで自転車の人って結構いるから、絶対見てる人いるよ。」 「だよね〜、なんか聞き込みしてるらしよ。また情報入ったら教えてって言っといたけど。」 「あたしも知りた〜い。ねぇねぇ、この話どこまで広がってんの?」 「とりあえず1組だけじゃない?でも時間の問題かもね。・・・あたし、もう一回聞いてこようかな?聞き逃してることあるかもだし・・・。」 「あたしもあたしもっ、聞きに行く〜!!」 そう言ったが早く、まどかとなっちゃんは、走って1組の教室へと向かった。
・・・・・・なんか・・・やばくない? ・・・・・・バレるの、時間の問題? ・・・・・・でも、待てよ・・・一緒にいたからって、それが問題の相手ってわけじゃないし・・・。 ・・・・・・っていうか、なんでそういう流れになってんの?ほんとに松井君がチョコ貰ったって言ったの? だとしたら、あたしのこと言ったの?・・・いやっ、それは絶対ないな・・・それは100%違う。断言できる。 「・・・すご・・・二人とも野次馬だね〜。」 嵐が去った後のように、静かにきょんちゃんは言った。 「・・・そうだよね・・・別に誰だっていいじゃんねっ。」 あたしはせめてここだけでもその話題から離れたかった。 「・・・どうした?美樹。さっきからなんか考え事?」 ずっと黙っている美樹にきょんちゃんが顔を覗き込んだ。 「あぁ・・・うん・・・もし、リョーマ君がほんとに貰った相手がいるって言ったんだったら・・・。」 あたしも美樹の続きの言葉が気になり目を向けた。 「・・・・・・あのさ・・・この話・・・二人だけに止めといてね。絶対、他の人に言わないでね。まどかとなっちゃんにももちろん・・・」 美樹は小声で話し出した。そして深刻に。 「・・・え?・・・なに?」 状況が変わって、戸惑うきょんちゃん。 「・・・・・・言うなって言うんだったら、言わないよ。」 そしてあたしの言葉にきょんちゃんも頷いた。 「・・・・・・その相手って・・・もしかしたら・・・おねーちゃんかも・・・。」 ・・・・・・へ?・・・・・・おねーちゃんって・・・ 「・・・・・・美加さん・・・ってこと?」 あたしはゆっくり聞いた。 コクン、と美樹は頷いた。 「うっそ・・・!!」 きょんちゃんは大声になりそうなのを手で口を押さえた。 「・・・・・・毎年、おねーちゃんと一緒にチョコ渡してたんだ。でも今年はおねーちゃん寮にいるからあげないのかなぁって思ってたけど、わざわざ送ってあげたみたい。・・・・・・前々から、なんとなく思ってたんだよね・・・ほら、うちら小さい頃からよく一緒にいたじゃん。あたしとリョーマ君ははっきりいって、おねーちゃんの言いなりに近かったんだよね。何をするにもリョーマ君、おねーちゃんにこき使われてて。でも、大きくなるにつれて、他の周りの女の子に対しての態度と、おねーちゃんに対しての態度があからさまに違っててさ。当然おねーちゃんの方が嫌なはずなのに、なんでも言うこと聞いててさ・・・まぁ、言われ慣れてそうなのかなぁって思う事もあるけど、でも、やっぱり近くで見てると、なんていうか、違う感情あるのかなって・・・。おねーちゃんの気持ちはよくわかんないけど、リョーマ君の方はって・・・あくまであたしの推測だよ。」 「・・・そう・・・なんだ・・・でも、ほんとだったら・・・すごいね。だって美加さんって確かあたしらより6つ?・・・上だよね。」 きょんちゃんは確認しながら聞いてきた。 「うん・・・でも、あたしもだけど、6つだからとかあんまり関係ないよ。一緒にいたらそんな年上に感じないし。それはそれでおねーちゃんが精神年齢がどうかと思うけどね。あはは。」 「・・・そっかぁ・・・でも、この学校では一番よく松井君の事知ってるの美樹だから、そう思うってことは・・・そうかも・・・ね。」 そういうと、きょんちゃんはあたしの方を見てきた。 「・・・・・・そうだね。」 あたしも、納得した。 そして、今の美樹の話を聞きながら、ある噂を思い出した。
それは高校になってからの事。 みんながそれぞれ高校正になって、何かしら大人びてきた頃、今まで彼氏彼女がいなかっった人たちでも、チラホラと交際というものが始まっていた。 だから、離れ離れになった同級生の情報がよく飛び交っていた。 その中でも、結構驚いたのが、松井君の交際の話だった。 付き合うこと事態驚きだったけど、その相手が大学生と聞いたことだ。 その時は、さすが元々大人びていた彼だったから、驚きながらでも納得していた気がする。
そして、今・・・この話と結びついた。 美樹の言ってることが、本当ならあの時聞いた相手は、美加さんだったかもしれない。 今、松井君が想いを寄せている美加さんと、何年か後には、つきあってるかもしれないんだ。 ・・・・・・なんか・・・すご・・・。 ある一組のカップルの過程を見たって感じ・・・かな。 まぁ、あんな美人のおねーさんがいたら、同じくらいの女子なんて、相手になんないか・・・。 しかも、思春期の男の子って、年上に憧れるらしいしなぁ・・・どっかの雑誌でみたことあるぞ。 「ほんとに言わないでね!!リョーマ君にも聞いたことないしっ。」 「・・・わかった。絶対言わないよ、ね、きょんちゃん。」 「うんっ、もちろんっ。」 こうして三人だけの秘密ができた。
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