20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:あの頃へ 作者:こまち

第29回   29
2月14日

無事にチョコレートは作り終え、それぞれ平等に持ち帰った。

美樹は、好きな人は今はいないみたいで、自分ら家族と一緒に食べるみたい。
まどかは、2組の好きな子に渡すつもりで、朝から緊張しまくっている。
なっちゃんは、夏過ぎからつきあっている同じクラスの彼氏に放課後帰りながら渡すみたい。
きょんちゃんは・・・というと・・・。

「え〜、やっぱりやめようかな・・・。渡せないよ〜・・・。」
昼休み。
あたしと裏庭で、きれいにラッピングされたチョコレートを握り締め、未だ渡すのを悩んでいた。
「・・・でも、せっかく持ってきたのに・・・。」
きょんちゃんが持っているチョコレートが、溶けてしまうんじゃないかと心配するようにも見た。
「〜〜〜っだって〜・・・へたに渡して気まずくなったら・・・今のままが、友達としてでも話せるし・・・。」
「・・・・・・」

きょんちゃんの好きな人は、小学校からずっと片思いしている加藤 隆志、通称たかちゃんである。
今はクラスが違うけど、会えば話はするし、いいお友達みたいな関係だ。
かといって、きょんちゃんが特別ではなく、仲のいい女の子は他にもいた。
だから、余計に自信が持てないのだ。
あたしが知っている二人の関係は・・・はっきりいって、何にもなかった。
結局、きょんちゃんは一度も告白をすることなく、中学を卒業して高校は別々になってしまい、そのまま会わなくなってしまっていた。
でも、あたしの記憶の中で、彼に対して一度くらい想いをぶつけていればよかった、と後悔していた姿があったから、あたしは今回は彼女を応援しようと決意した。

「・・・いつか、後悔するかもよ。」
「え・・・?」
「・・・このまま、想いを告げなくて後悔するより、思い切って告白して、自分の気持ちすっきりしたら?」
「・・・・・・できるかな?」
「・・・うんっ。きょんちゃんならできるっ!」
「・・・・・・よしっ!!あたし、頑張る!!」
「うんっ!!」
決心がついたその時だった。
「―――、呼び出してごめんね・・・。」
誰かの話し声が聞こえてきた。こちらに向かっているみたいだ。
ちょうど角の所にいたあたしらは、顔だけ覗き込むような形で声のする方を見た。
すると男女が二人歩いてきた。
そのうちの一人は、前もこの裏庭で会った松井君だった。
・・・・・・げっ、なんか、最近よく遭遇するなぁ・・・
この間の事もあり、なんとなく嫌な気もしたが、この微妙な空気にも気になり、そのまま見届けていた。

「〜〜〜っあのっ・・・」
女の子は同級生の子だった。
顔はこれ以上にないくらい真っ赤っかで、手には、小さな手提げ袋がかかっていた。
・・・あきらかに、これは告白シーンだ。
「〜〜〜っ・・・入学した時から・・・・その・・・ずっと好きで・・・・・・これ・・・受け取って欲しんだけどっ!!」
思い切って言い切り、袋を差し出した。
―――ひょえ〜っ!!
予想通りの展開にあたしもきょんちゃんも声には出さなかったが、心の声は一緒だっただろう。
そういえば、あたし松井君の告白されるシーン見るの初めてじゃないな・・・。
3年の時、偶然見た事を思い出す。
その時は、松井君だからということなく、告白現場に居合わせたことにテンションが上がっていたような気がする。
今の心境とは、少し違うのはあきらかだ。

「・・・・・・わるいけど、貰えない。」
しばしの無言の後に、松井君は答えを出した。
「・・・・・・受け取ってもらうだけでも、ダメ?」
女の子は、下を俯きながらあきらめきれない様子だ。
「・・・・・・受け取ったら、期待するでしょ?俺そういうの嫌だから。」
なんとなく冷たくも感じる応対だが、彼らしい気がした。
「・・・・・・」
「用事それだけなら・・・。」
それ以上なにも言えない彼女をその場に残し、松井君は校舎の方へ歩き出した。
そのまま行ってしまうかと思いきや、女の子は顔をあげた。
「―――っ、あのっ・・・好きな人いるの?」
・・・・・・っ!
さらに耳を傾けた。
「・・・いようがいまいが関係ないじゃん。あんたとはどっちみち関わるつもりないし。」
先ほどより、冷たい口調で言い放つと、止めた足を動きだした。

振られた女の子は、松井君が去った後、泣いていた。
そして、涙を堪えるようにして校舎へと戻って行った。

・・・・・・はぁ〜っ・・・
誰もいなくなるまで、あたしらは息を殺すかのようにその場に座り込んだままだった。
やっとあたしは口を開いた。
「なんか、見ちゃいけないもの見てしまったね・・・。」
「・・・うん・・・うわさは聞いていたけど、ほんとに松井君ってモテるし、あっさりと振っちゃうんだね。」
きょんちゃんも深呼吸を大きく吸って答えた。
「・・・・・・そうだね。まぁ・・・告白ばっかされてるとそういう風にもなっちゃうのかな。あたしにはよくわかんないけど・・・。」
実際、あたしは中学時代告白なんて、されたこともない。
高校の時は、物好きもいたということで、一人に・・・それでも一人だけだ。
「・・・・・・あたし・・・やっぱり無理。」
「・・・へ!?・・・無理って・・・」
「・・・・・・なんかさっきの自分と重なってしまって・・・」
「えっ、ちょっと、さっきのときょんちゃんのは全然違うでしょ?相手はたかちゃんだし、あんな風にはなんないよ!」
「・・・そりゃあ、松井君みたいに冷たくはされないにしても・・・でも、結果は同じ気がする・・・」
完全に消失してしまっている。さっきまで「頑張る!」なんて言っていたのが嘘のように・・・。
よりによって、こんな現場に居合わせるなんて。
あたしがその後、どんなに説得しても再びきょんちゃんのやる気は起こらなかった。



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 19737