突然の訪問者に、あたし以外の3人も当然だが驚いた。 松井君ということもあるし、美樹と幼馴染ってことにもなおさら驚いていた。
松井君はリビングのソファに座らされていた。 いつもの無愛想な、不機嫌そうな態度で。
「ねえ、試食がてらに、これリョーマ君にあげてもいい?」 たった今出来立てのチョコレートを数個皿にのっけて、美樹はみんなに聞いた。 「え、・・・あぁ、うん、別にあたしはいいけど・・・。」 きょんちゃんの返事に一同頷いた。 「ありがとう。」 そう言うと、松井君のところに持って行った。 あたしら・・・もとい、あたし以外の3人は、続きの作業をしながら、それを見届けていた。
「リョーマ君、これ食べてみて。」 「・・・・・・毒味?」 「やだな〜、違うよ。でもまぁ、似たようなもんで味見。いつもはあたしとおねーちゃんからあげてたけど、今年はおねーちゃんいないから、あたしと、このみんなからのチョコってことで。ね!」 そう言って、美樹はあたしらの方を振り向いて目で合図した。 突然の流れにみんなはほんの少し顔を赤らめた。 誰もこの中で松井君に恋している子はいないけど、人気者の彼に自分らが作ったチョコをあげるのは、照れてしまうもんだろう。 「ほらほら食べてよ。作りたてだから、おいしーよ。」 受け取ったまま手が動かない松井君に、美樹は再度食べるよう促した。 「・・・・・・じゃあ、いただき・・・ます。」 横に添えた爪楊枝で刺して、チョコレートを食べた。 ―――っ・・・ みんなは見ないようにしながらも、ついつい松井君の反応を見入ってしまっていた。 「・・・どう?おいしい?」 もちろん美樹が、顔を覗き込むようにして感想を聞いた。 「・・・・・・うん、うまい。」 そう言うと、残りのチョコを次から次へと口に運んだ。 その様子を見て、こちらの集団から、ホ〜っというような感情が感じられた。 「でしょ〜!!これ以外もあるんだけど、まだ作ってないから、とりあえず今はこんだけね。後でまた持っていくから。」 「・・・うん、わかった。あー、俺今から出掛けるんだけど、帰り遅いから明日でもいいよ。」 「そっか。わかった。」 この二人の会話のやり取りに、思わず聞き耳を立ててしまっているのは、たぶんあたしだけではないだろう。 ただでさえ松井君が女の子と会話すること事態、珍しいことにもなっていたから余計だ。
「んじゃ、ごちそうさん。」 あっという間に平らげると、松井君は立ち上がり、玄関へ向かおうとした。 行くには、あたしらがいる台所を通っていかなければならない。 彼の行動を見入ってしまっていたからか、こちらに向かってくるとき目が合ってしまった。 ・・・・・・ 無言で、あたしの顔から下を見たかと思うと、他のみんなのも見比べるかのように見た。 そして、またあたしを見て言葉を発した。 「・・・・・・あんたも作ったの?」 「・・・・・・え?」 何故にそんな質問を、あたしに・・・? 「・・・・・・あんただけエプロンきれいなんだけど・・・。」 ―――っっ!! とっさに自分のエプロンを見た。そして松井君と同じく、みんなのと見比べた。 ・・・・・・確かに。というか、当り前で、みんなのエプロンにはココアパウダーらしきものが飛び散っていた・・・。 「・・・・・・あたしはっ・・・その、後片付け・・・担当で。」 恥ずかしくも、開き直るように答えながら、松井君に視線を戻した。 「・・・ふ〜ん・・・。」 少し馬鹿にするかのような、半笑いにも見える様子だった。 ―――っな、・・・何よ、その目は!! いつもは鋭く大きな目が、半分しか開いてない感じが余計にしゃくにさわった。 「・・・じゃあ、こいつ以外のみんな、どうもご馳走様でした。」 松井君はそう言うと、台所を出て行った。 「ちょっと!リョーマ君!智子だってね〜・・・」 美樹がフォローをしながら、彼を見送った。 ・・・・・・ふっ・・・・・いい感じじゃん・・・ 別に・・・・・・気にしない気にしない・・・・・あんなガキの言うことなんかっ!! ちょっとでも、あいつを気にしてた自分が馬鹿みたい!! ・・・・・・ん!!??・・・気にしてたって・・・・・・いやいや、そういうんじゃなくてっ!! ただ、美樹とのやり取りがあまりにも自然すぎて・・・元々何にも知らなかった松井君の姿に、ほんのすこ〜し、興味が沸いただけであって・・・。 ・・・・・・とにかくっ!! むかつくっ!!ただそれだけだっ!!
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