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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第28回   28
突然の訪問者に、あたし以外の3人も当然だが驚いた。
松井君ということもあるし、美樹と幼馴染ってことにもなおさら驚いていた。

松井君はリビングのソファに座らされていた。
いつもの無愛想な、不機嫌そうな態度で。

「ねえ、試食がてらに、これリョーマ君にあげてもいい?」
たった今出来立てのチョコレートを数個皿にのっけて、美樹はみんなに聞いた。
「え、・・・あぁ、うん、別にあたしはいいけど・・・。」
きょんちゃんの返事に一同頷いた。
「ありがとう。」
そう言うと、松井君のところに持って行った。
あたしら・・・もとい、あたし以外の3人は、続きの作業をしながら、それを見届けていた。

「リョーマ君、これ食べてみて。」
「・・・・・・毒味?」
「やだな〜、違うよ。でもまぁ、似たようなもんで味見。いつもはあたしとおねーちゃんからあげてたけど、今年はおねーちゃんいないから、あたしと、このみんなからのチョコってことで。ね!」
そう言って、美樹はあたしらの方を振り向いて目で合図した。
突然の流れにみんなはほんの少し顔を赤らめた。
誰もこの中で松井君に恋している子はいないけど、人気者の彼に自分らが作ったチョコをあげるのは、照れてしまうもんだろう。
「ほらほら食べてよ。作りたてだから、おいしーよ。」
受け取ったまま手が動かない松井君に、美樹は再度食べるよう促した。
「・・・・・・じゃあ、いただき・・・ます。」
横に添えた爪楊枝で刺して、チョコレートを食べた。
―――っ・・・
みんなは見ないようにしながらも、ついつい松井君の反応を見入ってしまっていた。
「・・・どう?おいしい?」
もちろん美樹が、顔を覗き込むようにして感想を聞いた。
「・・・・・・うん、うまい。」
そう言うと、残りのチョコを次から次へと口に運んだ。
その様子を見て、こちらの集団から、ホ〜っというような感情が感じられた。
「でしょ〜!!これ以外もあるんだけど、まだ作ってないから、とりあえず今はこんだけね。後でまた持っていくから。」
「・・・うん、わかった。あー、俺今から出掛けるんだけど、帰り遅いから明日でもいいよ。」
「そっか。わかった。」
この二人の会話のやり取りに、思わず聞き耳を立ててしまっているのは、たぶんあたしだけではないだろう。
ただでさえ松井君が女の子と会話すること事態、珍しいことにもなっていたから余計だ。

「んじゃ、ごちそうさん。」
あっという間に平らげると、松井君は立ち上がり、玄関へ向かおうとした。
行くには、あたしらがいる台所を通っていかなければならない。
彼の行動を見入ってしまっていたからか、こちらに向かってくるとき目が合ってしまった。
・・・・・・
無言で、あたしの顔から下を見たかと思うと、他のみんなのも見比べるかのように見た。
そして、またあたしを見て言葉を発した。
「・・・・・・あんたも作ったの?」
「・・・・・・え?」
何故にそんな質問を、あたしに・・・?
「・・・・・・あんただけエプロンきれいなんだけど・・・。」
―――っっ!!
とっさに自分のエプロンを見た。そして松井君と同じく、みんなのと見比べた。
・・・・・・確かに。というか、当り前で、みんなのエプロンにはココアパウダーらしきものが飛び散っていた・・・。
「・・・・・・あたしはっ・・・その、後片付け・・・担当で。」
恥ずかしくも、開き直るように答えながら、松井君に視線を戻した。
「・・・ふ〜ん・・・。」
少し馬鹿にするかのような、半笑いにも見える様子だった。
―――っな、・・・何よ、その目は!!
いつもは鋭く大きな目が、半分しか開いてない感じが余計にしゃくにさわった。
「・・・じゃあ、こいつ以外のみんな、どうもご馳走様でした。」
松井君はそう言うと、台所を出て行った。
「ちょっと!リョーマ君!智子だってね〜・・・」
美樹がフォローをしながら、彼を見送った。
・・・・・・ふっ・・・・・いい感じじゃん・・・
別に・・・・・・気にしない気にしない・・・・・あんなガキの言うことなんかっ!!
ちょっとでも、あいつを気にしてた自分が馬鹿みたい!!
・・・・・・ん!!??・・・気にしてたって・・・・・・いやいや、そういうんじゃなくてっ!!
ただ、美樹とのやり取りがあまりにも自然すぎて・・・元々何にも知らなかった松井君の姿に、ほんのすこ〜し、興味が沸いただけであって・・・。
・・・・・・とにかくっ!!
むかつくっ!!ただそれだけだっ!!


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