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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第25回   25
なんとか予鈴までには間に合った。
教室の前まで来て、美樹の足が止まる。

「・・・だい・・じょうぶ?」
様子を伺う。いくらあたしが守ると思っても、無理矢理連れ込むより、本人の意思で扉を開けた方がいいと思った。
「・・・うん・・・よしっ・・・!」
意志を固め、いざ扉に手をかけた。・・・が、その時だった。
「お〜、来たか〜。」
その場の緊張感を見事に打ち砕いてくれるような、のんびりとしたトーンで尾上先生が歩いてきた。
「〜〜〜っ・・・もうっ、先生・・・。」
あたしまでガックリきて、先生を睨む。
「なんだなんだ?どうした?」
力の抜けたあたし達に先生は終始のんびりしている。
「・・・どうしたじゃなくて・・・今あたしら気合いを入れてたの!」
あたしはガッツポーズをして見せた。
「気合い!?・・・はっ、あほかっ。」
あ・・・あほ!?ですと−!!
「そんなもんに力入れてどうする。もっと違うもんにしろっ。」
「違うもんって?」
あたしはすかさず聞いた。
「そりゃあ決まってるだろ。勉学だ勉学!」
「・・・はぁ?何言ってんの?」
「またそんな生意気な顔をするー・・・って、おい山田、今日はそれバッチリなのか?」
先生はあたしの頭に目をやった。
とっさに頭を手で隠した。まだ寝癖が多少残っている状態だ。
トイレで整える予定が、時間がなくてできなかったのだ。
「〜〜〜っっ、ほっといてください!レディーにそんなこと言うなんて先生失礼ですっ!!」
あたしは恥ずかしさで一杯だったが、必死に言い返した。
「ほ〜、そういう時はちゃんと敬語なんだな。感心感心・・・。」
むむむっ・・・
「・・・先生こそ、いっつも髪ボサボサだし、無精髭だし、ちゃんと身だしなみしてるんですか?」
「俺か?俺は自然体でいる主義なんだよ。わかってないな〜、やっぱガキだわ〜。」
が・・・ガキ〜!?
よりによって先生に言われるなんて、すごいしゃくなんだけど・・・。
「・・・あの・・・そろそろチャイムなるかも・・・」
美樹は、あたしと先生のやりとりに呆気をとられ気味だったが、廊下の時計を指さした。
と同時にチャイムが鳴った。
「よしっ、ほら入れ。普通にな。」
先生はあたしと美樹の背中を押した。
・・・普通・・・
「変に構えると余計おかしくなるぞ。普通でいろ、特に山田な。」
「・・・あたし?」
「そうだ。お前が山下の事思ってるのはようくわかるが、ガードが硬すぎると余計にこじれないものもこじれてしまうぞ。おまえらが普通にしてれば自然とみんなもそれになじんでくるよ。」
「・・・・・・」
「・・・何かあったら、そりゃあおまえの出番だろうけど・・・いや、その前に先生に言ってくれな。山田だとまた暴言吐くかもしれんしな。」
「なっ、ひっど〜い!」
「あはは、冗談だ冗談。ほら早く教室入れ。」
先生は、前の入口から教室に入った。
・・・そうだね、先生の言う通りだ。
普通・・・簡単そうで難しいかもしれない。
・・・でも、それが美樹を守る一番の方法かも・・・
「・・・はいろ。」
あたしは美樹の腕に手を回した。
「・・・うん。」

「こらー、席に着かんか−。ほら田口!席戻れっ。・・・ほら、山田、山下も席に着け。」
先生の言葉に一斉にみんなの視線が後ろに注目した。
もちろんあたしではなく、美樹の姿にだ。
「・・・・・・は〜い。」
あたしはわざと大きな声で返事をして席に向かった。
同時に美樹も自分の席に向かった。
「・・・じゃあ、今日の予定言うぞ。・・・」
先生は、それこそ普通にいつものようにホームルームを始めた。

クラスのみんなも気になりつつもあるけど、自然にふるまおうとしている。
全員とは言わないけど、美樹の事を心配していた人はいるはず。
・・・きっといつか、ほんとうに自然に普通に過ごせる事を望んでるよね。


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