次の日・・・ 「智子!おはよ〜。」 昨日と同じく、ひとみと駐輪場で一緒になった。 「おはよ〜。」 あたしは手を振りながら応えた。
この頃って、すんなりと壁がなくなりやすいというか、躊躇することなく友達になれる。 歳とるにつれて、最初は探り探りで、その人の性格とか、周りの環境とか、勝手に模索してしまうもんなぁ。そういう接し方ってすごい疲れるもんだけど、それが自分を守る術だったのかもしれない。下手に近づきすぎて、後で困るようなことがないようにって・・・。
廊下でひとみと別れ、自分のクラスへ・・・。 3日も経つと、教室に入ることもよそよそしさが無くなってきた。 「・・・おっす。」 席につきカバンから教科書を取り出していると、前の席にこちらに向かってドカッと座ってきた。 「・・・あ・・・おはよ・・・。」 当然ここの席の人物ではなく、少し不機嫌そうな態度だ。 あたしは一瞬、手が止まったがまた動き始めた。 「・・・昨日の事だけど・・・」 「・・・なに?」 「・・・絶対に言うなよ。」 「・・・はぁ〜・・・しつこいよ、田口君。」 あたしはカバンを机の横にかけながら、彼を見た。 「――っ、だってよ・・・おまえ・・・俺の事、あんま好印象持ってないだろ?」 ・・・否定はできない 「・・・だから・・・俺の事、みんなに言いふらして笑いもんにしようとか思ってないか?」 「・・・はぁ?」 っとに、何言ってんだか・・・言いたい事は山ほどあるけど・・・ 「・・・そんなこと思ってない!それに昨日の事言うってことは、犠牲になる人も出るから、それだけは絶対に言いません!!」 1時間目の教科書を机の上でドンっと整えた。 「・・・それならいいんだけど・・・」 「・・・そうだ・・・代わりといっては何なんだけど・・・」 「・・・なんだよ・・・」 「・・・あたしのこともう二度とからかわないでよね。」 「えっ・・・」 「・・・とぼけても無駄だよ。散々人の事ネタにしておもしろがってたでしょ?それをするなって言ってんの!」 「・・・わかったよ・・・でも・・・ほんとなんだろ?」 「は?なにが?」 「・・・だから、あいつの事好きなんだろ?」 田口君はそう言うと、前の席に座っている近藤君に視線を向けた。 「・・・・・・」 「・・・俺・・・協力しよっか。」 「はぁ〜!?やめてよ!」 即答で断った。 「なんで?・・・あ〜、照れんなよ。」 ・・・こいつ・・・さっき言った意味理解してないんじゃない? 「・・・照れてない!・・・好きでもない人とくっついてどうすんの?」 あたしはなんの迷いもなくこの言葉が出た。実際、今のあたしは近藤君に対してなんの興味もなかった。とうの昔に諦めた人だから当り前といえば当たり前なんだけど、それでも懐かしいとか、もう一度ときめくといった感情は、全く出てこなかった。 「えっ・・・ほんとにかよ。好きじゃね〜の?」 どうやら、照れてはぐらかしている様子には見えなかったようで、驚いた感じだ。 ふと、周りの視線に気がついた。 あたしと田口君が会話していることが注目を浴びているようだ。 こんな風に話す事なんて滅多にないし、あたしと会話をしていること事態が浮いているんだ。 「・・・・・・もう席戻ったら?そこの席の子座れなくて困るんじゃない?」 あたしは話を終わらせようとした。 「え?・・・あぁ・・・」 田口君は一瞬周りに目をやった。そして立ち上がりながら続けた。 「・・・昨日言ったこと、撤回するわ。」 「・・・・・?」 何のことかわからず、田口君を見上げてしまった。 「・・・裏番長は山田じゃないみたいだな。」 「・・・なに・・・言ってんの?」 「・・・まぁ・・・おまえとは仲良くしてやるよ。」 「・・・はぁ?」 田口君は笑いながら、自分の席へ戻った。 ・・・仲良く・・・してやるって・・・・・・頼んでないっつ−の! ・・・・・・でも、まぁ・・・いっか。 あたしもついつい笑ってしまっていた。
1時間目の授業が終わり、休憩時間になった。 次は移動教室なので、みんな早々と用意して教室から出ていく。 あたしはトイレに行っていたので、移動するのは遅い方だった。 机の中から、次の教科書を出すためゴソゴソと探していると、昨日よりははっきりとした声で名前を呼ばれた。 「・・・智子。」 あたしはすかさず、その相手を振り返った。 「――っ・・・」 そして、同時に周りに人がいないか確認した。 「・・・智子、いいよ。」 そんなあたしの態度に、笑って言ってきた。 「・・・いいって・・・きょんちゃん・・・」 「もう・・・みんなに隠れてとか・・・そんな風に智子と接したくない・・・それに・・・あたしは智子と一緒にいたいし・・・。」 きょんちゃんはそう言って、ノートを差し出した。 「・・・・・・」 あたしは無言で受け取った。 「・・・あたしも言いたい事全部書いから読んで。そして・・・またずっと 智子とこの日記書いていきたい。」 「・・・・・・うん・・・わかった。・・・ありがと。」 あたしはきょんちゃんの強い意志が伝わった。 だからもう躊躇しなかった。 もし、きょんちゃんに万が一のことがあったら、あたしが守る。そう決心した。
それからはあたし達は今までのように接した。 もちろん冷たい視線は飛んできた。 でもそんなの気にせずに、二人でやりたいように過ごした。 だって、あたしときょんちゃんは後悔したくなかったから・・・。
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