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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第22回   22
次の日・・・
「智子!おはよ〜。」
昨日と同じく、ひとみと駐輪場で一緒になった。
「おはよ〜。」
あたしは手を振りながら応えた。

この頃って、すんなりと壁がなくなりやすいというか、躊躇することなく友達になれる。
歳とるにつれて、最初は探り探りで、その人の性格とか、周りの環境とか、勝手に模索してしまうもんなぁ。そういう接し方ってすごい疲れるもんだけど、それが自分を守る術だったのかもしれない。下手に近づきすぎて、後で困るようなことがないようにって・・・。

廊下でひとみと別れ、自分のクラスへ・・・。
3日も経つと、教室に入ることもよそよそしさが無くなってきた。
「・・・おっす。」
席につきカバンから教科書を取り出していると、前の席にこちらに向かってドカッと座ってきた。
「・・・あ・・・おはよ・・・。」
当然ここの席の人物ではなく、少し不機嫌そうな態度だ。
あたしは一瞬、手が止まったがまた動き始めた。
「・・・昨日の事だけど・・・」
「・・・なに?」
「・・・絶対に言うなよ。」
「・・・はぁ〜・・・しつこいよ、田口君。」
あたしはカバンを机の横にかけながら、彼を見た。
「――っ、だってよ・・・おまえ・・・俺の事、あんま好印象持ってないだろ?」
・・・否定はできない
「・・・だから・・・俺の事、みんなに言いふらして笑いもんにしようとか思ってないか?」
「・・・はぁ?」
っとに、何言ってんだか・・・言いたい事は山ほどあるけど・・・
「・・・そんなこと思ってない!それに昨日の事言うってことは、犠牲になる人も出るから、それだけは絶対に言いません!!」
1時間目の教科書を机の上でドンっと整えた。
「・・・それならいいんだけど・・・」
「・・・そうだ・・・代わりといっては何なんだけど・・・」
「・・・なんだよ・・・」
「・・・あたしのこともう二度とからかわないでよね。」
「えっ・・・」
「・・・とぼけても無駄だよ。散々人の事ネタにしておもしろがってたでしょ?それをするなって言ってんの!」
「・・・わかったよ・・・でも・・・ほんとなんだろ?」
「は?なにが?」
「・・・だから、あいつの事好きなんだろ?」
田口君はそう言うと、前の席に座っている近藤君に視線を向けた。
「・・・・・・」
「・・・俺・・・協力しよっか。」
「はぁ〜!?やめてよ!」
即答で断った。
「なんで?・・・あ〜、照れんなよ。」
・・・こいつ・・・さっき言った意味理解してないんじゃない?
「・・・照れてない!・・・好きでもない人とくっついてどうすんの?」
あたしはなんの迷いもなくこの言葉が出た。実際、今のあたしは近藤君に対してなんの興味もなかった。とうの昔に諦めた人だから当り前といえば当たり前なんだけど、それでも懐かしいとか、もう一度ときめくといった感情は、全く出てこなかった。
「えっ・・・ほんとにかよ。好きじゃね〜の?」
どうやら、照れてはぐらかしている様子には見えなかったようで、驚いた感じだ。
ふと、周りの視線に気がついた。
あたしと田口君が会話していることが注目を浴びているようだ。
こんな風に話す事なんて滅多にないし、あたしと会話をしていること事態が浮いているんだ。
「・・・・・・もう席戻ったら?そこの席の子座れなくて困るんじゃない?」
あたしは話を終わらせようとした。
「え?・・・あぁ・・・」
田口君は一瞬周りに目をやった。そして立ち上がりながら続けた。
「・・・昨日言ったこと、撤回するわ。」
「・・・・・?」
何のことかわからず、田口君を見上げてしまった。
「・・・裏番長は山田じゃないみたいだな。」
「・・・なに・・・言ってんの?」
「・・・まぁ・・・おまえとは仲良くしてやるよ。」
「・・・はぁ?」
田口君は笑いながら、自分の席へ戻った。
・・・仲良く・・・してやるって・・・・・・頼んでないっつ−の!
・・・・・・でも、まぁ・・・いっか。
あたしもついつい笑ってしまっていた。

1時間目の授業が終わり、休憩時間になった。
次は移動教室なので、みんな早々と用意して教室から出ていく。
あたしはトイレに行っていたので、移動するのは遅い方だった。
机の中から、次の教科書を出すためゴソゴソと探していると、昨日よりははっきりとした声で名前を呼ばれた。
「・・・智子。」
あたしはすかさず、その相手を振り返った。
「――っ・・・」
そして、同時に周りに人がいないか確認した。
「・・・智子、いいよ。」
そんなあたしの態度に、笑って言ってきた。
「・・・いいって・・・きょんちゃん・・・」
「もう・・・みんなに隠れてとか・・・そんな風に智子と接したくない・・・それに・・・あたしは智子と一緒にいたいし・・・。」
きょんちゃんはそう言って、ノートを差し出した。
「・・・・・・」
あたしは無言で受け取った。
「・・・あたしも言いたい事全部書いから読んで。そして・・・またずっと
智子とこの日記書いていきたい。」
「・・・・・・うん・・・わかった。・・・ありがと。」
あたしはきょんちゃんの強い意志が伝わった。
だからもう躊躇しなかった。
もし、きょんちゃんに万が一のことがあったら、あたしが守る。そう決心した。

それからはあたし達は今までのように接した。
もちろん冷たい視線は飛んできた。
でもそんなの気にせずに、二人でやりたいように過ごした。
だって、あたしときょんちゃんは後悔したくなかったから・・・。


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