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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第21回   21
ジャージ姿の3人は、ごみ箱をそれぞれ抱えていた。
掃除がこんな時間までやってないだろうから、きっと部室のだろう。
テニス部に限らず、大抵の運動部員の1年の服装はジャージだ。

「・・・うわさをすれば・・・だな。」
ボソッと呟いたのは、野村君だった。
「――っおいっ!ケンっ・・・」
この二人のやり取りを聞き逃さなかった。
あたしはとっさに田口君と目を合わした。向こうは、しまった・・・というような感じだ。
「・・・どんなうわさ?」
あたしは静かに問いただした。
「え、いや・・・そんな大したことじゃ・・・」
「・・・だから、なに?」
「・・・えっと・・・ほら、あれだよあれ・・・」
必死に違う事を言おうと考えてるのが丸分かりだ。
そんな田口君を見て、口を開いたのは野村君だった。
「・・・はっきり聞けばいいじゃん、この際。」
「――っおまえな・・・・」
「・・・ごまかしきれないんじゃね?」
「・・・・・・」
さらに松井君も加わった。
「・・・言うまで、この場から逃してくれなさそうじゃん。」
そういって、あたしを見た。
・・・なにもそこまでするつもりは・・・
一瞬ひるみそうになったけど、あきらめたかのように田口君が見てきたので、また戦闘モードに入った。
「・・・今朝の事だよ。」
すぐに弘子たちとの言い合いだとわかった。まぁ、田口君でなくとも誰ぞや今朝の事は話題にしているだろう。
「・・・それが?」
でもあたしはあえて続きを促した。
「・・・女子って、もともと何考えてんのかわかんない時あるけど・・・昨日までつるんでたのに、あの大喧嘩だろ?しかも、あの北田泣かすなんてさ・・・」
・・・ようするに、あたしが悪人とでも・・・
「・・・山田って・・・実は・・・その・・・」
だんだん言いにくそうになる。
・・・早く言いなよ・・・
少しイライラしてきた。
「・・・裏番長?とか思ってさ・・・」
・・・は?裏・・番長・・・って・・・なに、その表現・・・
「「――っぷ、くくくくっ・・・」」
野村君と松井君は同時に堪えるように笑いだした。
さきほど、聞こえていた会話はこれのようだ。
もっと他の言い方がないんだろうか?・・・まぁ、悪人には変わりないか・・・
「また笑うっ!俺はマジメに思ったんだぜ!?」
田口君の顔は真剣そのもののようだ。
「・・・マジメに思おうが、思うまいが・・・そんなだっさい表現勝手にしないでよ。」
あたしはあきれながらも、言い返した。
「いや・・・だってさ、昨日からおまえ変じゃん。」
「・・・変?」
そこだけ強調した。
「え・・・いや、その・・・なんか人格変わったみたいになってさ・・・顔もなんか、違うし・・・」
そう言って、あたしの顔をジロジロ見回した。
「・・・顔は、眉毛いじって、髪の毛少し切っただけ!性格はもともとこんな感じ!今までが・・・ちょっと大人しかっただけ!他には?なんか聞きたい事あるのっ!?」
「・・・いや・・・ない・・・です・・・」
いつもからかわれ、言われっぱなしだった田口君に言いたい事いえて、ちょっとした満足感を感じた。
「っぷぷ、おもしれ〜。・・・あ、そうだ!」
野村君は、お腹を押さえて笑っていたが、思いついたかのように言いだした。
「まだあるじゃん、山田に聞きたい事。」
そういって、田口君の肩に手を回し、ニヤニヤとした。
「え!?・・・あっ・・・ばかっ!何言ってんだよ!!」
急に顔を赤らめ、野村君の手を肩から離そうとした。
・・・なになに?この反応・・・
「いいじゃんか、協力してもらえよ。」
協力・・・?
田口君の反応といい・・・話が違うことになってるな・・・
――っ!!もしかして・・・
「・・・きょんちゃん・・・のこと?」
ボソッとつぶやいた。と同時に3人ともあたしの方を見た。
そして、みるみるうちに田口君の顔が今以上に真っ赤になった。
「・・・すげぇ・・・っていうか、知ってたのか?」
野村君が驚きながら聞いてきた。
「え?・・・いや・・・知ってたというか・・・」
・・・知ってることだな・・・
頭がフル回転して思い出されたが、聞いたことある話だ。
田口君がきょんちゃんに想いを寄せているって・・・。でもそれは2年か3年の時に聞いたような・・・。
「・・・もしかして・・・」
言葉が出てこないかと思いきや、田口君は恐る恐る聞いてきた。
「・・・本人にも・・・ばれてる・・・とか?」
「・・・あ〜・・・それは、ない・・・」
・・・今の段階では・・・。
「ほんとか!?ほんとにだな!?」
・・・すごい剣幕。
「・・・うん・・・知らないと思うよ。っていうか、田口君そんなそぶりしてたっけ?」
「してね−よ!するわけね−じゃん!!」
・・・すごい必死。
「・・・なのに・・・なんでだ?なんで山田わかったんだ?俺態度出てなかったよな?」
「あ・・・うん・・・態度ではわかんないね・・・。」
「じゃあなんだ!?なんでわかったんだ?」
「え・・・」
なんでと言われても・・・
「えっと〜・・・勘・・・かな?」
「・・・かん?」
「・・・そう、・・・勘。」
苦しいかな・・・でもそれ以外思い浮かばないんですけど・・・。
「ほら・・・あたしに聞ききたいってのと、田口君のその反応とを考えたらそうかなって・・・」
「そっか・・・そうだよな・・・ってことは、・・・ケン!!お前が余計なこと言うからっ!」
田口君は野村君の胸ぐらをつかんだ。
「え?あぁ、わりぃ・・・」
「わりぃじゃね−よ!どうしてくれんだよ、こんなに早く他の奴に知られるなんて・・・しかも山田かよ・・・はぁ〜、もう・・・」
だんだん覇気がなくなり落ち込んでいく。
「じゃあさ、ばれたついでにほんとに協力してもらえばいいじゃん。」
「「はぁ?」」
あたしと田口君な同時に発した。
ちょっとちょっと・・・待ってよ・・・
「なぁ、山田。俺からも頼むよ。こいつマジみたいでさ、協力してやってよ。」
野村君は手を合わせてお願いしてきた。
「ちょっ、なんであたしが・・・」
「だって、中田と一番仲いいんだろ?いろいろ情報とかさ・・・」
「・・・・・・嫌だ。」
この言葉に田口君が異常に反応した。
「・・・なんで?・・・まさか・・・好きな奴いるの?」
一番知りたい事をついてきた。
「そういうことじゃなくて・・・」
「じゃあ、なんでだよ。」
「なんでって・・・そんなの決まってんじゃん、きょんちゃんは親友だからよ!」
「は?」
いまいち理解できない二人はジッと見ている。
「――っだから、大事な友達をなんで田口君とくっつけなくちゃいけないの?」
「・・・なんだよ、それ。どういう意味だよ!」
言われたことが少し理解できてきて、田口君は言い返してきた。
でも、ここは引けない。こいつらにきょんちゃんの情報売るなんてもってのほかだし、何よりきょんちゃんには・・・好きな人がいるんだもん!・・・小学校からずっと・・・。
「・・・そのまんまの意味よ。人の上げ足ばっかとってる奴が、いざ自分にされるとそのざまぁでしょ!?だったら、最初っから他人にするなっての!そんな人ときょんちゃんがくっついて欲しくない!第一、昨日あんたきょんちゃんに、食ってかかってたじゃん。松井君の事好きなのかどうかって。」
昼休みの序盤の出来事を指摘した。
「・・・それは・・・そうだけど・・・。」
あたしの猛攻撃に太刀打ちできてない感じだ。
「・・・まぁまぁ。」
間に入るように野村君が助けてきた。事の発端は自分にあるから、悪いとは思ってるみたいだ。
「昨日のは、あれだよ。ほら、ついつい怒らせるようなこと言ってしまったというか、本心じゃないこと好きな人の前でいってしまうってあるじゃん?」
・・・あぁ、よくいるね、そういう奴。好きだからこそ意地悪をしてしまうっての。ほんとに幼稚園戻ったら?ってか、松井君と一緒にいたの野村君だったんだ。事情をわかってるってことは・・・。
「・・・それに、こいつこう見えていいとこあるしさ。な、リョーマ。」
ずっと黙ったままの松井君に同意を求めた。
「・・・・・・さぁ・・・?」
ようやく出た言葉に一同振り向いた。
「・・・なんだよそれ・・・」
情けないくらいの声で田口君はつぶやいた。
「くすくす・・・冗談。まぁ、完璧とは言わないけど、いいところもあるんじゃね?」
「・・・あんまりフォローになってないぞ。」
野村君もボソッと答えた。
「ハードルあげてもしょうがないじゃん。どうせボロでるだろうし。」
・・・ほんとこの人って・・・・・・友達なの?
でも、ある意味あたってるしな・・・作り上げた自分なんてなんの魅力もない。そういうことわかって言ってんだろうか?だとしたらすごくない?13歳にして、もうそんなこと言えるなんて・・・。大人びているんじゃなくて、ほんとに同世代に比べたら大人じゃん・・・。
あたしは、そんな事を思いながら松井君を見ていた。すると目が合ってしまい、なんとなく目を逸らした。
「・・・協力するしないは別として、このこと黙っといてよ。」
松井君に再び話しかけられ、逸らした視線を戻した。
「・・・・・・」
あたしは無言で頷いた。それなら納得だし・・・。
「ほんとだな?絶対だぞ!」
急に態度を変え、田口君が強気で言ってきた。
「・・・いいません。言ったって何の得にもなんないし。」
あたしも言わなくてもいいのに、田口君の態度を見るとついつい余計な事を付け足してしまう。
「なんだよ、それ!・・・あっ、お前知らないだろう?俺って実はモテるんだぞ!」
・・・はぁ!?なに、自慢!?
「ほんとだぞ!その目信じてないだろ?」
あたしのあきれた顔に納得できなく突っ込んでくる。
「・・・別に・・・嘘ついてるとは思ってないけど・・・」
実際こいつはこれでよくモテていたからな・・・。
「・・・そういうことをわざわざ口にするのはどうかと思っただけ!」
「――っそれは、その・・・山田が俺のことあんまり良く思ってないと思ったからだよ!」
・・・はいはい・・・あえて無言にしておこう。
「・・・おい、そろそろ行かないと。」
松井君は置いていたごみ箱を抱えた。
「やばっ、そうだな。先輩たちに怒られるわ。」
野村君も思い出したかのようにごみ箱を抱えた。
「山田!・・・ほんっと言うなよ!その・・・特に・・・中田には・・・。」
「・・・言わないってば!」
・・・絶対に・・・!
再度念を押して、田口君も二人の後に続いた。

あたしも駐輪場に向かい、学校を後にした。


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