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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第20回   仲直り
昼休みの動揺から帰りのホームルームまで、あたしは尾上先生をまともに見ることができなかった。
なんとなく、違う意識を持ってしまった自分に嫌悪感を抱いた。

先生もなんの気を使うわけでもなく、いつものように担任の任務をこなしていた。
これといって、あたしと普段から関わってるわけではないので、特に話しかけてくることもなく・・・。

帰宅の準備にとりかかる。
カバンの中のノートに気付く。
昨日遅くまで書いたきょんちゃんとの交換日記だ。
今日は一言も話してないし、目も合ってない。
あたしからなんて、いけそうにもなかったし・・・。
仕方なくそれには手をつけず、教科書をカバンに押し込んだ。

そしてスポーツバックを手に取った。
ジャージと体操服が入っているが、問題はこれをどうするかだ。
昨日は即効学校を後にしたけど・・・部活、どうしよう・・・。
1年の時は先輩たちと違って、ジャージの下に体操服を着用してするものだった。
今日も・・・さぼる、か。
っていうか・・・もう辞めとく?

テニス部に入ったのは、きょんちゃんと一緒だったからだ。
小学校の時から、テニス自体に憧れてて中学生になったら、やろうって決めたんだったな・・・。
でも・・・こんなことになったら、テニス部に所属する意味もなくなりそう。
たいして頑張ってなかったし、この頃からあたしは物事に対して一生懸命するってことに欠けていた。
今だって変わりない。
すぐに辞めるという判断が出てきてしまうんだもん。

スポーツバックを元に戻し、カバンを持って教室を出た。


下駄箱に向かい、シューズから靴へと履き替える。
「・・・と・・もこ・・・」

呟くような声で呼び止められた。
クラスの半分以上は帰宅していたので、周りに人はほとんどいなかった。
トントンとつま先を地面にたたきながら振り向いた。
今日名前で呼ばれたのは、ひとみとその子だけになる。

「―――っ!!」

・・・きょんちゃん・・・

意外な相手に驚いた。
よりによってきょんちゃんがあたしに話しかけてくるなんて・・・。
あたしはとっさに辺りを見回した。
クラスの連中が、もしくは他のクラスで弘子たちと仲がいい子がいないか。
そしてすぐにきょんちゃんに駆け寄った。

「・・・どした?・・・なんかあった?」
泣きそうな顔に見えて、ついそんなことを口走った。
「―――っ・・・」
きょんちゃんは、うつむいて首を横に振った。
「・・・じゃあ・・・」
次の言葉を探していたら、きょんちゃんはポロポロと泣き出した。
必死に我慢していたものが次から次へとこぼれるように・・・。
「ちょっ、きょんちゃん!?」
こんなに泣いているきょんちゃんを目の当たりにするのは初めてでとまどった。
「―――っ、ひっく・・・ひっく・・・とも・・・こっ・・・ひっく・・・」
「・・・どうしたの?大丈夫?」
きょんちゃんの肩に手を置いた。
「うっ・・・ひっく・・・ひっく・・・めんっ・・・」

泣きじゃくっていてまともに言えてないが、あたしはすぐにわかった。

・・・きょんちゃんが謝っているのが。

「・・・ひっく・・・うっ・・・ひっく・・・ごめっ・・んね・・・っく・・・」
「・・・きょんちゃん・・・」
肩に置いた手は、きょんちゃんによって時折動いた。
「あた・・・し・・・ひっく・・・どうして・・っく・・・いいかわかん・・・ひっく・・・なくって・・・でも・・・このままっ・・・なんて・・・ひっく・・・いやで・・・」
必死に泣くのをやめようと、両手で涙を拭いだした。
「・・・智子と・・・っく・・・このままなんて・・・ぜったい・・・ひっく・・・やだからっ・・・ひっく・・・」
「―――っ!!」

あたしは堪らず、きょんちゃんを抱き締めた。

「・・・ごめんね・・・あたしこそ・・・ごめん。」

勝手な行動をとった申し訳なさと、さっきまできょんちゃんとの仲をあきらめていた自分への腹立だしさと、こうして泣きじゃくってあたしのところへ来てくれたありがたさと、・・・あたしをまだ親友と思っていてくれた嬉しさでいっぱいになった。

あたしたちは、とりあえず裏庭にきた。
ここなら来るとしたら先生くらいだろう。

「・・・とまった?」

校舎と庭との間のコンクリートに溝があり、そこに足を入れて座り込んだ。
下は水っ気もなく汚れる心配はなかった。

「・・・うん・・・たぶん・・・ズルッ・・・」
鼻水を必死におさえる。
「くすくすっ・・・はいティッシュ。」
「・・・ありがと。」

昨日の美樹とあたしみたいだ。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

しばし沈黙になった。
でもそれは心地よかった。
何も話さなくても分かり合えた気分だった。
チラっときょんちゃんの持っていたスポーツバックに目をやった。

「・・・部活いいの?」
「・・・そういう智子は?」
「・・・あたしは・・・さぼろうかなって・・・」
「・・・じゃ、あたしも・・・」
「・・・そっか・・・」
「・・・うん・・・」

そしてまた静かになった。
・・・はずが・・・。

「―――、―――!」
「―――、ぶはははは〜!なんだよそれ。」
「ちょ、マジだって。」

数人の男子生徒の声が近付いてきた。
こっちに来てるということは・・・この先の焼却炉に行くのかもしれない。

「―――っ!」
とっさに立ち上がった。
クラスの人たちじゃないかもしれないが、今はまだ、あたしときょんちゃんのツーショットを見られるのは良くないと思った。

「きょんちゃんっ!やっぱ今日は部活行った方がいいよ。」

そういってきょんちゃんの荷物を持って手渡した。

「でもっ・・・。」

きょんちゃんもあたしの様子と同じで少し動揺が隠せない。
かと言って、すんなり行けるほどでもなかった。

・・・そうだ!

急いでカバンから、渡すことはないとあきらめたノートをきょんちゃんにあげた。

「―――っ!これっ・・・」

ゆっくり受け取りあたしを見た。

「・・・家で呼んで。あたしの気持ち全部書いてあるから。これからの事とかも・・・。」

あたしはまだ声の主たちが来ないか、見回した。

「・・・わかった・・・」
「・・・うん・・・じゃ、また明日ね。」
「うん・・・明日ね。」

きょんちゃんはホッとしたように別れを告げた。

きょんちゃんの姿が見えなくなってすぐ、3人の男子生徒が姿を現した。
相変わらず、会話をしながら・・・。
あえてその人たちの顔を確認することなく、荷物を持って去ろうとした。

「それでさー・・・ん?」

一人の生徒があたしの後ろ姿をとらえたのだろう。
他の二人も視線を向ける。

「・・・山田じゃん、何してんの?」

・・・聞き覚えのある声だ。
そして同じセリフを連日で言われた。

「・・・・・・別に・・・」

あたしも同じようなセリフで返した。
嫌々振り返った先には、サッカー部の1年3人がいた。

同じクラスの田口 武。
1組の野村 健二。
同じく1組の松井 リョーマ。

みんな・・・苦手なタイプばかりだ。


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