「・・・智子―っ!・・・智子―っ!!」
・・・ん?・・・う〜ん・・・
「・・・ともちゃんっ!!」
−−−カバッ!! ・・・・・・そっか・・・
またこの母の呼び方で目が覚めた。
・・・やっぱり、この姿・・・か。
あきらめてはいたが、少し期待もしていた。 寝て、覚めたら元の世界に戻ってるんじゃないかと・・・。
ガチャッ!!
「もう〜、毎朝毎朝同じことー。何回言ったら起きるの!!目覚ましセットしてないの?」
・・・この頃は部屋まで起こしにきてくれてたっけ?
ふぁ〜・・・ねむ・・・ 「これっ!!」 まだしっかり眠気がとれてないあたしに、母は布団越しに叩いた。 「早くしなさい!!遅刻するわよ!!」 「・・・は〜い・・・」
しぶしぶベットから離れた。
「・・・ちょっと!・・・智子?」 「ん?なに?」 目をこするあたしの手を取って顔からよけた。 「・・・・・・」 「・・・な・・・何?」 まじまじと顔を見られてる。 「・・・あんた・・・眉毛いじったの?」 「あぁ・・・うん、まぁ。」 「なんで!?」 「なんでって・・・変だったからじゃん。」 「何言ってんの?中学生の分際でもうそんなことしてー!!・・・ちょっと・・・髪も切った?」 母の視線が眉から頭にうつった。 「・・・んもう!時間ないんだからいいでしょ?」
逃げるように下へ降りた。 「これっ!!智子!!」
洗面所に向かい顔を洗う。 少しはまともに見える鏡に映った自分とにらめっこする。
・・・・・・よしっ!頑張ろう!!
気合を入れ家を出た。
昨日と同じ所で、小学生の真美ちゃんと会った。 「ともちゃ〜ん、おはよう!」 相変わらず笑顔いっぱいで手を振っている。 「・・・おはよう!」 昨日はできなかった挨拶を交わした。 「今日も寒いね〜、ほら見て。」 そう言ってカイロを二つ見せた。 「お母さんに頼んで、2個持ってきちゃった。」 嬉しそうにほっぺたにこすりつけた。 ふふふっ・・・かわいいなぁ、ほんと。 「いいなぁ〜、あたしも明日そうしよう。」 あたしは笑って答えた。
「そういえば、中学ってチョコいいの?」 たわいもない会話をしていたが、真美ちゃんが聞いてきた。 「・・・ちょこ?」 何のことかわからず、聞き返した。 「うん、バレンタインの。」
・・・あぁ!!そのチョコね。そっかぁ・・・来月だもんな。
「えっと〜・・・持っていっていいかってこと?」 「うん。うちら今年からダメになったんだよ〜。去年、学校で食べた子がいたんだって。もうっ、いい迷惑だよね〜。」 「・・・へ〜・・・そうなんだ。・・・ってことは真美ちゃんあげたい子いるんだ。」 「うん!もちろん!」 これっぽっちも恥じらうことなく即答だ。 「す・・・すごいね〜・・・」 「なんで?みんないるよ?ともちゃんはいないの?好きな人。」 「え・・・いや・・・」 なんかあまりにも直球過ぎて、とまどってしまう。 「いい機会だから告白したら?」 「・・・え・・・いや・・・」 「のんびりしてたら、あっという間だよ。」
・・・・・・言葉がでてこない・・・
「あれ?で、結局いいの?チョコ。」 「・・・あ、・・・うん・・・」 ・・・たしか、禁止はされてなかったよあ・・・ 「じゃあ、あげなくっちゃ!」 「・・・いや・・・あたしは別に・・・それより真美ちゃんどうするの?学校がだめなら・・・」 「もっちろん、渡すよ。その子の家に行くもん。」 「・・・あぁ・・・そう・・・すごいね・・・」 「ライバル多いんだから、油断大敵だよ!」 「・・・そうなんだ。」
あはは・・・あたしが小学正の時とちがうなぁ・・・あたしがそういうの遅れてたのかな?
「まだ時間あるし、ともちゃんもあげる人見つけたら?あ、じゃあね。」 いつもの分かれ道に来て、真美ちゃんは手を振りながら走って行った。
「・・・あ・・・ばいばい・・・」
遅れをとりながら手を振り返す。
・・・こんな話真美ちゃんとしてたっけ? ・・・う〜ん・・・覚えてないなぁ・・・ ・・・あっ、やばい!昨日みたいになっちゃう。
止まっていた足を動かし、ペダルをこいだ。 幾分、昨日より足取りが軽い気がする。 この体に慣れてきたのかな? 昨日やたらと自転車こいだから、筋肉痛になるかと思ってたけどそんなこともないし。 待てよ・・・歳とると、筋肉痛って2、3日後にくるよな・・・? いや・・・体は若いから大丈夫・・・だよね・・・?
そんな不安を抱きながら、学校へと急いだ。
よしっ!今日はまだまだ空いてる。 駐輪場に自転車を入れてカギを抜いた。
「・・・おはよ。」
後ろから自転車を押しながらあたしに向かって挨拶をしてきた。
「・・・あぁ、・・・おはよ。」
ひとみだ。
「昨日、ちゃんと行けたみたいだね。帰りに美樹んち通った時、自転車止まってたからそうかなぁっと思って。」 「あ、うん。ありがとうね。書いてくれた地図でバッチリだったよ。」
・・・行きはね・・・あえて帰りのことは言わなかった。
「そっか・・・あそこの住宅街けっこうわかりずらいからどうかなって思ったけど、良かった。ちゃんと着いて。」 「・・・あはは、ありがと。・・・あっ!!・・・」 しまった・・・!! ひとみも自転車のカギを抜いたところで、あたしの言葉に驚いた。
「・・・どうしたの?」 「・・・ごめんっ!!」
両手を合わせて謝った。 ひとみは訳が分からずキョトンとしたままだった。
「・・・あたし、昨日美樹にひとみの伝言してなかった〜。ほんっとごめんっ!!」 「・・・え・・・?」 「ほら〜、よろしく言っといてって言ってたの、すっかり忘れてた〜。」 「・・・・・・」
ん?・・・反応がない・・・あっ!! ・・・あたし、呼び捨てにしてしまった。 昨日初めてしゃべったはずなのに、いきなり「ひとみ」はないよなぁ・・・。
「あ、・・・ごめん・・・いきなり呼び捨てて、馴れ馴れしかったね・・・あのっ・・・知り合いにおんなじ名前の子がいてさ・・・なんか、親近感わいちゃって、つい・・・」
・・・ちょっと、くるしいか・・・
「・・・ううん・・・いいよ、ひとみで。」
戸惑いがあったはずなのに、笑って言ってくれた。
「・・・あ、じゃあ、あたしのことも呼び捨てでいいから。」 「・・・うん・・・あの・・・」
ひとみは言いにくそうになった。
「何?」 「・・・ごめん、あたし山田さんの下の名前知らなくて・・・」 「あ、そっか、そっか。智子。知るの下に日ってかいた智。」 「あぁ、うん、わかった・・・ほんとごめんね。失礼だよね・・・」 「そんなこと気にしないで。クラス違うし、今まで接点なかったんだもん。当たり前だよ。」 「・・・ありがと。・・・美樹への伝言は・・・いいや。自分で言った方がいいもんね。」
ひとみは半笑いで言った。 きっと考えたんだろう。 このままではだめだってこと。
「・・・そっか・・・そうだね。じゃあ、あたし忘れててよかった〜。って都合いいか。」 「・・・っぷ、あはははは。」 「くすくすっ」
あたしたちは、それぞれの教室までしゃべりながら一緒に行った。
予定より少し早目の友達になれた。
|
|