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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第16回   一日の終わり
PM8:10

「ただいま〜・・・」

いつもと変わらないあいさつ。

はぁ〜・・・疲れたっと・・・

「ともちゃんっ!?」
バタバタっと慌てて母が台所から走ってきた。

・・・何事・・・?

「あ〜、遅かったじゃない?山下さんから連絡は貰ってたけど、それにしては遅いから何かあったのかと思ったわ〜。」
「・・・あぁ・・・いやぁ、ちょっと道に迷ってて・・・」
「そうなの?もうどこかで電話してくれば良かったのに〜。10円くらい持ってなかったの?」

・・・そうか・・・公衆電話・・・ということね。
ケータイなんてないもんね・・・

「まぁ・・・いいじゃん。こうやって無事帰ってこれたんだし・・・」
「そういう問題じゃないでしょ!結果論であって、何かあったらどうするの!?」
「・・・ごめん・・・なさい・・・」

何年振りかに親に怒られ謝るはめになってしまった。
でも自然とでてきた言葉だった。

「・・・手、洗って来なさい。ごはん温めるから。」

母は、あたしが素直に謝ったからか、それ以上は怒らなかった。
靴を脱ぎ、カバンを階段のとこに置いたまま洗面所へ向かった。

長いこと母の言葉に対して正面から受け入れなくなってた。
またいつものこと、口うるさい文句が始まった。
それくらいにしか考えてなかった。
でも、さっきの母の表情といい、態度といい、軽くあしらうことができなかった。

昨日母と会っていたのに、今ここにいる母が久しぶりに感じてしまった。
確かに17年前の母なんだから、久しぶりといえば久しぶりなんだけど・・・。

結婚して遠くに嫁いだ友達が言ってた言葉を思い出す。

離れて暮らすと親とケンカすることがなくなったって。
素直に親の言うことを聞き入れるようになったって。

なんとなく、それに近い気がした。


夕飯を済ませ、お風呂に入ることにした。

服を脱いで、改めて中学生の自分だと確信させられる。
決して、豊富な体つきとは言えないけど、今よりはましなラインしていたのに・・・。
なんとなく悲しい・・・あたしがかわいそうに思えてきた。

それに・・・この眉毛。
・・・ひどいよなぁ。
ゲジ眉もいいところ。
肌と髪の毛は、申し分ないというか、かえって嬉しいというか・・・。
まだニキビに悩まされてないから、ツルツルだわ。
当たり前なんだけど、スッピンでもOK。
髪型は・・・ちょっときついかな?
そういえばあたしが美容院というものに通い出したの高校入ってからじゃない?
だいだい近所にそんな洒落たとこなかったし・・・。
このパッツン切りは母にやってもらったんだった。
せっかくキューティクルさがまだあるんだから、それを活かせなくちゃだよなぁ・・・

テレビでやってるようなbefore―after気分で、自分の改造に入り込んでしまった。
この時はおしゃれに対してなんの興味もなかった。
へたにいじると、かえってそれが目立っていじめの原因になってる子もいたなぁ、そういえば・・・。

つくづくこの時代の・・・というか、自分らの周りの意識にあきれてしまう。

きっと明日から、本格的ないじめにあうだろう。
範囲も広がって、他のクラスにだって影響してくるに違いない。
でも・・・負けてたまるか!
たかだか中坊のいじめなんて、クソくらえ!!

不安のかけらがなくなって、むしろ来るなら来い!と言わんばかりに、戦闘モードに入っていた。


ふと、きょんちゃんとの交換日記を思い出し、カバンから取り出した。
再び、きょんちゃんが昨日書いた内容に目を通した。

・・・・・・よしっ!!

机に向かい、シャーペンを手に取った。
こうして、字を書くのも久しぶりだ。
でも、今も昔も本音ほど口ではなかなかうまく言えないもの。

こうした手段で伝えるのって、卑怯かもしれないけど・・・でもその方がいい時もある!

明日困ることになる宿題には手を触れず、日記を書くのに没頭した。

・・・やっぱり、きょんちゃんとは・・・このままなんて嫌だ。

時刻は11:30をまわった。
明日の準備を軽く済ませ、ベットに潜り込んだ。
と同時に睡魔に追いやられた。
いつもならこんな時間に起きてるのも平気なのに、今日はやたらと眠い。

朝から驚きの連続ということもあったし、何より人との触れ合いに真剣に取り組んだことがすごく体力を消耗したんだと思う。
ここ数年、特に最後の交際が終わってから、あたしは深く人と接していなかった。

人間不信に陥ったとか、こもりがちになったとかいうのではなく、ただただ面倒だから・・・。
一人でいる時間の気楽さを知ってしまったら、誰かと関わるのが嫌になった。
そんなあたしが、少なくともクラスの中で一番熱くなってる。
なんとなく笑っちゃうけどね・・・。


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