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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第15回   会話
ジーッ、ジーッ、ジーッ、ジーッ、・・・

自転車のランプを付けている為、ペダルをこぐ度に音が辺りに響く。
まだ7時前だというのに、暗いせいか住宅街には、たまに車が通るくらいで人通りがなかった。

どの辺を通ってるのかは分からず、ただただ前を走る松井リョーマから遅れをとらないように必死についていった。
ライトのせいで、昼間より自転車のペダルが重いのもあるし、彼のスピードの速さに足がついていかなくなりそうだった。

住宅街から少し車の通りの多い道に出てきて、信号につかまり止まることになった。

・・・はぁ、はぁ、・・・しばしの休憩・・・助かる・・・

必死に呼吸を整えた。

・・・やっぱ、道聞くだけでよかったかも・・・早く知ってる道になんないかなぁ・・・しんど・・・

「・・・体力ねぇな・・・」

−−−っ!

あまりの呼吸の荒さが聞こえてか、松井君は振り向いた。

「・・・悪かったね・・・っていうか、松井君が速すぎると思うんだけど・・・」
「普通っしょ、これくらい。」

・・・そうですか・・・

「毎日自転車通学なんだろ?嫌でも体力つくんじゃね?」
「・・・そんな・・・鍛えながら乗ってないもん・・・」
「じゃ、部活は?入ってないの?」
「・・・一応・・・テニス部。」
「ふ〜ん・・・男子の練習はキツイって聞いたことあるけど、女子は違うんだ。」
「・・・たしかに・・・」

ふと部活の事を思い出す。
力を入れていた活動ではなかったな・・・のんびりやっていた記憶がある。
仲良しの集まりが楽しくテニスをしていたって感じか。
顧問もそんな専門じゃなかったよな・・・

「・・・けなしたつもりなのに、図星かよ・・・」

松井君は少しボソっとつぶやいた。
信号が変わり横断歩道を渡りだした。

あたしも気合いを入れこぎ出した。
が、先へ進むスピードがさっきまでより遅いことに気付く。

・・・もしかして・・・気つかってくれてんの?こいつ・・・

力を抜いてこげるようになった。

「・・・今7時だろ?あんたんち着くの8時過ぎんじゃね?」

腕時計を見ながら話題を変えてきた。

「う〜ん・・・そうだね。」
「そんな時間に帰って親に怒られないの?」
「・・・わかんない・・・」
「なに?・・・親に見放されてんの?」
「そういう意味じゃなくて!・・・ただ・・・あんまり遅く帰ったことないし・・・」
・・・この頃は・・・
「ふ〜ん・・・」
「・・・人の事より自分はいいの?」
「だっていつもこのくらいの時間だし、俺は。」
「え?・・・あぁ、そっか・・・サッカー部だったね。」

部活帰りで、会ったってことか・・・まぁ、今の時間ならそうだな・・・部活って、6時くらいまでやってたからな・・・

「・・・へ〜、俺がサッカー部って知ってんだ。」

少し笑うように言ってきた。

ん?・・・なんか勘違いするなよ・・・

「そりゃあ、有名でしょ?」
「・・・なんで?」
「なんでって・・・人気者の松井君だからじゃん。嫌でも情報入ってくるっての。」
「ふ〜ん・・・情報ねぇ・・・単なる噂話が多そうだけどね・・・」

嫌味のつもりで言ったけど、本人にしたらさほど嬉しくなさそうだな・・・
たしか、あたしがこの時に聞いた松井君の情報は、モテまくってて当然とか、自分の事知らない奴はここにはいないとか・・・とにかくかなりの高飛車だったらしいことだったよな・・・

「・・・うれしくないの?」
「・・・・・・」

はっ!!
あたしってば何聞いてんの?
率直に思った事を口に出したが、こんな質問相当の嫌味だよな・・・

「・・・はっきり言って・・・迷惑。」

答えてはくれないかと思いきや意外な答えが返ってきた。

「人のこと探って、作り上げて・・・あんたが言ったのと同じで、勝手に人のこと決めつけんなって感じ?」

・・・そうなんだ・・・ん?待てよ・・・

「・・・そういえば・・・何でその時大笑いしたの?」
「え?いつ?」
「だから、あたしが松井君にそう言った時!」
「あぁ・・・なんか意外で。」

・・・意外・・・

「まぁ、山田のことあんま知らなかったから、そんなズバズバ物言う奴とは思ってなかったからさ。あまりにも見た目とのギャップの違いに笑えた。・・・あぁ・・・でも、こんなこと言ってる俺もみんなと一緒か・・・あんたが怒るの当然だわ・・・」

・・・なんか・・・こっちが意外だわ・・・こんな奴とは・・・
・・・ん?・・・あっ、ここの通り知ってる!!

「あのっ−−!!」

ブレーキをかけ、呼びかけた。

キキッ!!
松井君も止まって振り向いた。

「ここで大丈夫。こっから道わかるから。」
「あっそ。んじゃ・・・」

そう言って自転車の向きを変えあたしと向き合う形になった。

「・・・気をつけて。」
そのまま今来た道を戻って行った。

「あ、・・・ありがとっ・・・」
「・・・どういたしまして。」

振り返ることなく、松井君は先へ進んだ。

・・・はぁ〜・・・さぁてと・・・急いで帰るか・・・

帰りの道中、あたしは松井君との会話を思い返していた。

人から聞いた話を鵜呑みにはするなって・・・今までも散々経験したことから学んでいたはずなのに・・・

松井君のことはもろにそのことだったな・・・あたしが今まで印象を持っていた彼とは少し違っていた。
そのせいか初めて彼と出会ったわけではないのに、すごく新鮮に感じた。


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