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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第14回   迷子
美樹の家を出て、5分経つか経たない頃・・・あたしの足は止まっていた。

・・・あれ?・・・こっち・・・だと思ったのに・・・

完全に迷ってしまった。
やばい・・・ただでさえ、遅い帰りなのに・・・。

ここの住宅街は、迷路のようにあちらこちらと道が分かれている。
もしかしたら、同じとこ通ってる可能性もあるし・・・。
もう一度美樹のとこに戻るのもあやしいな・・・。

そうだ。
ひとみに書いてもらった地図を見てみればいいんだ。

カバンから取り出し、近くの十字路の街灯の下へ移動した。

えっと・・・美樹の家から1回曲がったよね・・・
・・・うんうん、ここはあってる・・・それで、たしか商店みたいなとこでまた曲がるんだけど・・・待てよ・・・もう閉まってて気づかなかったとか・・・?戻ったがいいのかな?

地図と来た道を見比べながらキョロキョロしていた。
ふと、先の方で自転車に乗ったまま止まっている人影に気づいた。
街灯の光が照らされる距離ではなく、暗くて顔ははっきり見えないが、足元ら辺は制服らしき格好に見える。



「・・・何やってんの?」

そう言うと、自転車から降りて、押しながら近づいてきた。

・・・え?・・・げっ!!・・・松井リョーマ。

今日この反応2度目だ。

「あんたって、この辺じゃ・・・ないよね?」

普通ここで知り合いに会えば、喜んで道を聞けるのに・・・なんでよりによって、こいつなの?そういや・・・東地区だったな・・・

「・・・ちょっと・・・用事で・・・。」

多くを語らず、降りていた自転車に乗り去ろうとした。

「・・・もしかして・・・山下のとこ行ってたの?」

−−−っ!!
・・・なんで?

あたしがブレーキをかけて確信したようだ。

「・・・やっぱりか・・・俺んち、あいつの近所だし、この辺の同級生って知れてるしな。」

・・・・・・

「・・・あいつ・・・いじめられてんだろ?クラスの連中に。」

・・・こいつも知ってんのか。まぁ、情報源は・・・

「田口が言ってたけど・・・」

・・・やっぱり。

「・・・あんたらなんでしょ?主犯は。」

−−−っ!!

「・・・まぁ・・・山田が率先してって感じじゃなさそうだけど・・・でも、共犯には変わりないか。」

・・・なに・・・こいつ・・・じわりじわりと・・・

「女子って、集団で行動すんの好きだよね。移動教室ん時も、トイレも・・・いじめも。」

・・・・・・

「・・・なに?追いうちでもかけてきたの?」

「ちがっ!!そんなわけないでしょ!!」

ずっと黙っているつもりだったが、思わず言い返してしまった。

「・・・たしかに・・・松井君の言う通りだよ・・・」
「・・・・・・」
「・・・いじめてた・・・率先じゃなくても・・・いじめてた。」
「・・・・・・」
「でも・・・もう・・・」

一瞬、弱気になりかけた。
でも・・・こいつに、いちいちさっきのこと言う必要もないか・・・

俯きかけたが、開き直るように顔をあげた。

「・・・認めたから満足でしょ?あたしが美樹んとこ行って何したって関係ないじゃん。」
「・・・そりゃあそうか・・・関係ないな。」

・・・なに、こいつ?
もっと突っかかってくるかと思いきや、冷静に返してくる。
何考えてんの?
よくつかみきれない。
やっぱ、苦手・・・というか、あの鋭い目つきに耐えられない。

端整な顔立ちなのはしょうがないにしても、ひるむことなく見てくるあの視線は、大人のはずのあたしが目を逸らしたくなってしまう。
なんか、見透かされてるような感じがして・・・。

「・・・じゃあ・・・いちいちからんでこないでよ・・・」

ブレーキを外し、ペダルをこいだ。

「・・・あのさ・・・」

松井君は言葉を発したが、あたしは振り向くことなく前へ進んだ。

「・・・そっち行っても行き止まりだよ。」

・・・へ・・・?

再びブレーキに手が掛かる。
やみくもに道を進んでいたが、見たくない相手をゆっくり振り返った。

「・・・やっぱり迷ってたんだ・・・」

少し呆れ顔をして、松井君は自転車にまたがった。

「・・・あんた家どこ?」
「・・・南地区・・・」
「・・・こっから1時間くらいかかるんじゃない?」
「・・・・・・」
「・・・道こっち。」

そう言って、今松井君が来た道に向かって自転車をこぎ始めようとした。

・・・え?・・・へ?

「ちょっ−−!!」

まさか−−−っ!!

固まったあたしを振り返った。

「・・・送るって言ってんの!早く来いよ。」

−−え〜っっ!!冗談じゃ・・・

「い、いいよ。あの・・・口で言ってもらえれば・・・」

断りながらもなんとなく頼ってしまった。

「・・・めんどい、動いたが早いよ。」
「え、・・・いや・・・でも、うち遠いし・・・」
「・・・誰が家まで送るって言った?あんたがわかる道までに決まってんじゃん。」

・・・あ・・・さようですか・・・

「早くしろよ。ただでさえ遅いんだから。」

・・・さっきまで威勢よく反発してたのに・・・このざまぁは何?
・・・恥ずかしくなってしまう。

何も言い返せなく、素直に松井君の後をついて行った。


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