美樹の家を出て、5分経つか経たない頃・・・あたしの足は止まっていた。
・・・あれ?・・・こっち・・・だと思ったのに・・・
完全に迷ってしまった。 やばい・・・ただでさえ、遅い帰りなのに・・・。
ここの住宅街は、迷路のようにあちらこちらと道が分かれている。 もしかしたら、同じとこ通ってる可能性もあるし・・・。 もう一度美樹のとこに戻るのもあやしいな・・・。
そうだ。 ひとみに書いてもらった地図を見てみればいいんだ。
カバンから取り出し、近くの十字路の街灯の下へ移動した。
えっと・・・美樹の家から1回曲がったよね・・・ ・・・うんうん、ここはあってる・・・それで、たしか商店みたいなとこでまた曲がるんだけど・・・待てよ・・・もう閉まってて気づかなかったとか・・・?戻ったがいいのかな?
地図と来た道を見比べながらキョロキョロしていた。 ふと、先の方で自転車に乗ったまま止まっている人影に気づいた。 街灯の光が照らされる距離ではなく、暗くて顔ははっきり見えないが、足元ら辺は制服らしき格好に見える。
「・・・何やってんの?」
そう言うと、自転車から降りて、押しながら近づいてきた。
・・・え?・・・げっ!!・・・松井リョーマ。
今日この反応2度目だ。
「あんたって、この辺じゃ・・・ないよね?」
普通ここで知り合いに会えば、喜んで道を聞けるのに・・・なんでよりによって、こいつなの?そういや・・・東地区だったな・・・
「・・・ちょっと・・・用事で・・・。」
多くを語らず、降りていた自転車に乗り去ろうとした。
「・・・もしかして・・・山下のとこ行ってたの?」
−−−っ!! ・・・なんで?
あたしがブレーキをかけて確信したようだ。
「・・・やっぱりか・・・俺んち、あいつの近所だし、この辺の同級生って知れてるしな。」
・・・・・・
「・・・あいつ・・・いじめられてんだろ?クラスの連中に。」
・・・こいつも知ってんのか。まぁ、情報源は・・・
「田口が言ってたけど・・・」
・・・やっぱり。
「・・・あんたらなんでしょ?主犯は。」
−−−っ!!
「・・・まぁ・・・山田が率先してって感じじゃなさそうだけど・・・でも、共犯には変わりないか。」
・・・なに・・・こいつ・・・じわりじわりと・・・
「女子って、集団で行動すんの好きだよね。移動教室ん時も、トイレも・・・いじめも。」
・・・・・・
「・・・なに?追いうちでもかけてきたの?」
「ちがっ!!そんなわけないでしょ!!」
ずっと黙っているつもりだったが、思わず言い返してしまった。
「・・・たしかに・・・松井君の言う通りだよ・・・」 「・・・・・・」 「・・・いじめてた・・・率先じゃなくても・・・いじめてた。」 「・・・・・・」 「でも・・・もう・・・」
一瞬、弱気になりかけた。 でも・・・こいつに、いちいちさっきのこと言う必要もないか・・・
俯きかけたが、開き直るように顔をあげた。
「・・・認めたから満足でしょ?あたしが美樹んとこ行って何したって関係ないじゃん。」 「・・・そりゃあそうか・・・関係ないな。」
・・・なに、こいつ? もっと突っかかってくるかと思いきや、冷静に返してくる。 何考えてんの? よくつかみきれない。 やっぱ、苦手・・・というか、あの鋭い目つきに耐えられない。
端整な顔立ちなのはしょうがないにしても、ひるむことなく見てくるあの視線は、大人のはずのあたしが目を逸らしたくなってしまう。 なんか、見透かされてるような感じがして・・・。
「・・・じゃあ・・・いちいちからんでこないでよ・・・」
ブレーキを外し、ペダルをこいだ。
「・・・あのさ・・・」
松井君は言葉を発したが、あたしは振り向くことなく前へ進んだ。
「・・・そっち行っても行き止まりだよ。」
・・・へ・・・?
再びブレーキに手が掛かる。 やみくもに道を進んでいたが、見たくない相手をゆっくり振り返った。
「・・・やっぱり迷ってたんだ・・・」
少し呆れ顔をして、松井君は自転車にまたがった。
「・・・あんた家どこ?」 「・・・南地区・・・」 「・・・こっから1時間くらいかかるんじゃない?」 「・・・・・・」 「・・・道こっち。」
そう言って、今松井君が来た道に向かって自転車をこぎ始めようとした。
・・・え?・・・へ?
「ちょっ−−!!」
まさか−−−っ!!
固まったあたしを振り返った。
「・・・送るって言ってんの!早く来いよ。」
−−え〜っっ!!冗談じゃ・・・
「い、いいよ。あの・・・口で言ってもらえれば・・・」
断りながらもなんとなく頼ってしまった。
「・・・めんどい、動いたが早いよ。」 「え、・・・いや・・・でも、うち遠いし・・・」 「・・・誰が家まで送るって言った?あんたがわかる道までに決まってんじゃん。」
・・・あ・・・さようですか・・・
「早くしろよ。ただでさえ遅いんだから。」
・・・さっきまで威勢よく反発してたのに・・・このざまぁは何? ・・・恥ずかしくなってしまう。
何も言い返せなく、素直に松井君の後をついて行った。
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