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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第115回   リョーマside  5


予定より、遅くなった事を詫びて、データを送信した・・・
しばらくして、返信が届く・・・「了解」とのこと。
もう電源を切ってよさそうだ。

冷蔵庫から、ビールを取る。
座ることなく、その場で飲み干す。

ゴク・・ゴク・・・・プハァ〜・・・

そして、さっきからモヤモヤしている頭を、クシャクシャっと掻き回す。
ずっと頭から離れない・・・山田のことが・・・っ

女の泣き顔を見たのは初めてではない。
むしろ俺の前で、女は泣いてばかりだった。

仕事とどっちが大事なの?
何を考えてるかわからない。
本当は、好きじゃないんじゃないか。

そういう理由がほとんどで、今まで何人かとつきあってきたが、最後はみんな俺から去っていった。
そのことを決して何とも思ってないわけでもなく・・・かといって未練があるわけでもなく・・・
自分で言うのもなんだが、俺という人間はなんて冷たいんだ・・・そう思っていた。

でも、山田に関しては、明らかに今までの女と違う。
普段気にしてもなかったことが・・・いや、俺にとっての普段と違ってた。
あいつと過ごしたのなんて、ほんの数時間。
しかもまともに会話したのはほんの30分足らず・・・
なのに、山田と接したわずかな時間が・・・すごく心地よかった。

・・・懐かしい・・・そんな気もした。
変だ・・・同級生とはいえ学生の頃、あいつと関わったことなんて、俺の記憶では全くといっていいほどないのに・・・

・・・・・・っ――!!

ふと、思い立ったかのように、部屋へと向かう。
そして押入れにしまい込んである、卒業アルバムを探しだした。

このアルバム自体、目にするのは何年振りだ?
懐かしく昔を振り返る性格ではないので、こんなことしている自分がおかしくも思える。
クラス写真を捲る・・・1組・・・2組・・・3組・・・っ!!

・・・いた・・・そっか、ケンと同じクラスだったんだ。
だからか?
居酒屋で、やけに楽しそうに絡んでいた姿を思い出す。
そして、そのことをちょっと気にしてしまう自分がいた。

ここに写っている山田は、さっきまでいた山田と違う印象に感じた。
歳をとった、ということはもちろんだけど・・・なんか、うまく言い表せないのがもどかしい・・・
でも・・・この時、なんでこいつと関わることがなかったんだろうと、中学時代の自分を少し責めてみた。
まぁ・・・あの頃の俺は、誰とも接するの拒んでたから無理か。

母親を幼いころに亡くしたせいか、誰かに甘えてはいけない、男なんだからたくましくなくちゃいけない・・・心のどっかでそう感じてた。
それが、人と深く関わるのを避けてたのかも・・・

それが人の目によっては、クールとか言われ・・・先輩たちには嫌がらせを受けてたのも思い出す。
それでも、ケンや田口、いい先輩もいて、それなりに楽しく過ごしてたっけ。

女に関しては・・・今となっては、あまり会わなくなった幼馴染のことを思い出す。

同じ年の山下 美樹。
いじめによって転校してからも、たまに実家に帰った時は会っていた。
中学のサッカー部の先輩でもある人と結婚したのは、さすがに驚きだった。
この間の正月会った時は、すっかり母親が定着してたな・・・

そして、6つ上の・・・美加。
今や3児の母親か・・・。

幼い頃からずっとそばに居て、世話を焼いて、本当の弟のように接していてくれた。
俺はいつしか、そんな美加に恋心を抱いて・・・

中学の時なんて、思春期の真っ只中だったから、余計に想いが強くなってた気がする。
そんな俺の気持ちも通じてか、高校に入ってから、やっと美加が俺のことを受け入れてくれた。
その事はうれしくてうれしくて・・・だからだろう。
もう美加を離したくないという気持ちが強すぎて・・・俺は空回りしていた。

歳のこともあり、早く大人になりたかった俺は、相当無理してた。
そしてそれは、美加にとって荷が重かったんだろう。

つきあいだして・・・半年もたたないうちに別れを告げられた。

そのことに、俺はショックを受けていた・・・いや、そのはずだった。
でも、実際には・・・けっこう平気な自分がいて・・・

あんなに美加のこと・・・あんなにずっと想っていたのに・・・それがあまりにもあっさりとしていたものだったから、自分の冷酷さに、改めて気付かされたんだ。

結局俺は・・・人を本気で好きになれないんじゃないか?
そんなことすら思ってしまった。

現に、社会人になってから、いつもつきあいだすのは向こうからのきっかけで・・・自分から必死に追いかけたことも、好きで好きでたまらない、という感情も・・・まだ味わったことがなかった。



そんな俺が・・・そんな冷めていたはずの感情が・・・今は違う。
なんだこれ・・・?
なんだっていうんだよ・・・っ

何にこの感情をぶち当てればいいのかわからず・・・もう一度冷蔵庫へ向かい、ビールを手にした。



翌日になり、おやじを病院へと迎えに行った。
帰りに寿司が食いたいとか言って、仕方なく一応退院祝いとして食べに行った。
そして、その日もあっという間に過ぎて、次の日から、またいつもの生活が始まった。

1時間かけて、仕事場へ向かう。
朝は7時過ぎに出かけ、夜は9時、10時の帰り。

仕事をしている時はいいんだけど・・・部屋に入り、紙袋に目をやる。
山田が忘れていった上着だ。

これがここにある限り、俺のこの感情は消えることがないんじゃないだろうか?

そんな大袈裟とも言える気持ちに・・・ある決心した。

そして、この間取り出したアルバムを再び捲る。
この当時は、後ろの方に、生徒と先生の連絡先が載せられていた。
大抵が実家の住所だ。
今の山田の近況を聞いたわけではないから、この住所に山田がいるとも限らない。
結婚はしていないとしても、家を出て一人暮らしをしているかも・・・。
そんなことを思ったが・・・どっちみち、行ってみなきゃ居どころがつかめない。

週末に、山田の実家に行くことにした。



ナビを頼りに車を進める・・・というか・・・同じ町に住んでいながら、こっちのほうに来るのは初めてだった。

こんな山奥に・・・人が住んでんのか?
そんな失礼な事を考えてしまう。
そして、ポツポツと、民家らしき建物が見え始める。
そのことで、間違いはないと内心ホッとした。

それから数分走ったところで、数メートル先の民家の前に、車が路駐されており、その横に人の姿も捕らえた。

―――っ・・・山田だ・・・

それ以上進むのをためらってブレーキをかける。
車の窓越しに誰かと話をしている。

――っ・・・もしかして・・・男・・・?

ありえることだ。
独身とはいえ、彼氏がいないとは聞いてないし・・・

なんとなく気になり、車中の人物に目をやる。

・・・・・・・中田?
そうだ・・・中田 京子だ。

そう確認した時だ・・・山田がこっちを見た。
そして、この間と同じように・・・俺を見て固まった。

そんな山田の様子を伺い、中田もこちらに目をやる。
すると何かを察してか、一言山田に告げてから、車を発進させた。

俺とすれ違う際・・・なんか嬉しそうにも見える表情をして、少し頭を
下げて行った。
・・・俺も軽く会釈をする。


このまま、車にいるつもりもなく・・・渡すつもりの上着の入った紙袋を手に持ち、車から降りた。
そして、立ち止まったままの山田に近づく・・・

「・・・いきなり来て・・・ごめん・・・これ、忘れてたから・・・」

そう言いながら、紙袋を差し出した。
当然山田の住所を知るはずのない俺が、ここをどうやってわかったのか、説明しといたほうがいいだろう。

「・・・住所・・・卒業アルバムの最後の方に載ってたから・・・それを頼りに・・・」
そう言うと、山田はさらに顔を俯いた。

「・・・・・・ありがと。」

「・・・・・・」
「・・・・・・」

やっぱり、いきなり家に来たのはまずかったか?
・・・でも、すぐに引き返すほど俺は・・・気の利くやつではなかった―――



「あのさ・・・ちょっと・・・時間いい?」



「―――っ・・・え?」



「・・・・・・せっかく・・・天気いいし・・・ドライブでも、どう?

このまま・・・すぐに別れるのは嫌だった。
ただそれだけだ。
そんな子供じみた誘いに山田は・・・



「―――っ・・・・・・うん。」



そう言ってくれた。

俺は・・・やっと確信した。
わけわかんない感情が、なんなのか。
いや・・・すぐにわかってたのを認めたくなかったのかもしれない。

こいつと話してみたくて・・・
こっちを見てほしくて・・・
泣いてたことが気になって・・・
男が来てると勘違いして・・・
そうじゃない事にホッとして・・・
今こうして目の前にこいつがいて・・・
俺は山田に・・・会いたかったんだとわかって・・・

あの夜、山田と再会して・・・出会って・・・俺は、一目惚れしてたんだ―――

顔はもちろんのこと・・・山田がかもしだす雰囲気が、俺にとってすごく、心地よかったんだ―――


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