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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第112回   リョーマside  2


「おいっ、ケン・・・寝るなよ?」
さっきまで騒いでいたケンが、大人しくなったため声をかけた。
「・・・だい・・じょうぶ・・だよ・・・このやろ・・・むにゃむにゃ・・・」
・・・完全に寝てるな。

ケンの事は放っておいて・・・酒の肴ばかり食べていたからか、妙にのどが渇く。
ウーロン茶を飲もうと手をやると、隣でひたすら、一人晩酌している山田が目に入る。

こいつ・・・大丈夫か?
かなり飲んでるように思うんだけど。
隣に座って1時間は経つか・・・一言も話していないし、まともに顔も合わせてない。
というか、見たくても避けられてるし、しょうがないか・・・。

・・・ん?
・・・見たいのか、俺?

一瞬変な事を思ったが、それを打ち消し、違う考えが出てきた。
一度・・・確かめてみるか。
俺自身が避けられてるのか、はたまた嫌われてるのか。
どちらにせよ、良くは思われてないんだろうけど、理由もわからず嫌われるのは、なんとなくいい気持ちではない。
とりあえず・・・ケンの事、利用するか・・・



「・・・・・・こいつの言ったこと・・・気にすんなよ。」

山田は、自分に対して言われてると思っていなかったのか、反応がない。
・・・いや、これもそういう反応か?
・・・シカト・・・という。

だが、山田は、恐る恐るとこちらに視線を向けた。

そして・・・初めて目が合った―――

―――っ・・・

その瞬間・・・ドキッとした。
山田のことを、まともに見たのが初めてだったからか、同級生というか・・・初対面の女性に会ったような・・・そんな感覚だった。

そのことを、紛らわすかのように、後を続けた。
「こいつ・・・酒癖悪いから・・・」

「・・・・・・っ・・・あ・・・うん・・・」

山田は、俺の目を見て初めて、受け答えをしてくれた。
その時の感じで、勘違いだったってことがわかった。

俺は少なくとも、悪くは思われてない。
山田の視線に、嫌悪感はなかった。

でも・・・何か、言いたそうな・・・訴えたいような・・・そんな感じがした。
こんなことを考えてしまう俺は・・・どうかしてる・・・



2次会も、みんなの様子からして、終わりを迎えようとしていた頃・・・俺の予感は当たった。

田口と景気の話をしていたら・・・カタンッ・・・

音のした隣に目をやる。
と、同時に今度は腕に重みが・・・そして・・・ほのかに、甘い香りが・・・
香水の苦手の俺でも、嫌ではない香りだった。

・・・―――っそんなことを考えてる場合じゃない。

俺は、その重みの相手を支えた。
隣で飲み続けていた山田が、ついにダウンしたようだ。
目の前のコップが倒れてる。
中身が少しこぼれてる・・・飲みながら意識なくしたのか?
・・・――まさかっ・・・!
「・・・おいっ!・・・山田っ!?」
山田の肩を、軽くたたきながら声をかける。

「・・・んん・・・ん・・・スー・・・スー・・・」

規則正しい寝息が聞こえた。

・・・ホッ。
とりあえず、無事か・・・かなり飲んでたみたいだから、また病院行きが出たかと思ってしまった。

そのうちに、山田はズルズルと体が倒れ、完全に俺の足を枕と化してしまっていた。
・・・いわゆる膝枕だ。

山田をどかそうと体勢を動かすと、田口がおもしろ半分で、
「そのままにしといてやれば?せっかく気持ち良さそうに寝てんだから・・・」
と言ってきた。
さすがに、戸惑った。
が、それもそうか・・・と思い、そのまま寝かせといた。
ふと、山田を見下ろす。

・・・気持ち良さそうに寝てる。

なんとなく、笑みがこぼれそうだった。



そして完全にお開きになり、それぞれ帰り仕度に入る。
さすがに俺の膝から山田をおろし、もう一度声をかける。

「山田っ・・・おいっ、山田っ!」

中田や他のやつらも声をかけた。

でも、一向に起きる気配がない。

もう一人、同じ状態の奴がいる。
俺は、ケンを叩き起した。

「おいっ、ケンっ!・・・起きろって!・・・帰るぞっ!!」
「・・・う〜ん・・・う・・ん・・」

・・・こいつもダメだ。

仕方ない・・・ケンは送ってくか。
そう思い、ケンの荷物を先に持った。

「・・・ねぇ、松井君・・・」
俺を呼んだのは中田だった。

「・・・なに?」
「野村君送るの?」
「・・・そうなるね。」
「・・・じゃあ・・・ついでに智子もお願いっ!」
「・・・は!?・・・タクシーで一緒に帰るんじゃないの?」
突然の頼みに、当たり前の疑問が出てくる。
「あ〜・・・あたしこの後用事があって・・・」
・・・用事?
この後に・・・?
今何時だよ・・・10時は過ぎてるぞ・・・

そんなことも思ったが・・・
「・・・わかった・・・」
引き受けてしまった。

そして、自分の肩にケンの腕を回し、寝ボケまくってる状態だったが、車まで引きづるように歩かせて乗せた。
次に、山田だ。

スヤスヤ寝ている彼女を、ケンと同じように運ぶのは、さすがに気が引ける・・・というか、やっぱそれは、無理でしょ・・・

先に荷物と上着を車に運び、再び店に戻る。
あれだけ起こしても起きないんだから、気をつかうこともないんだろうけど・・・寝ている山田を起こさないようにと、ゆっくりと抱きかかえる。

そして、歩きだした時、
「・・・ん・・・」
一瞬起きたかと思い、顔を見下ろすが・・・笑ってる?

そんな山田を見て、また頬が緩んでしまった・・・


夢の中の二人を車に運び終え、店から出てきた集団の中から、中田を探した。
・・・が、姿が見当たらない。

やばい・・・家の場所聞こうと思ったのに・・・あいつ、もう帰ったのか?
仕方なしに、他のやつらに聞いてみた。

「え〜!?智子〜・・・どこだっけ?・・・あ〜・・・南だよ、南〜っ!」
その意見が、まともとも思えない。
かなり酔っているこいつらの意見は、当てにならなかった。

すごく・・・かなり、迷ったが・・・しかたない。
道端に置いて行くわけにもいかないし・・・とりあえず家に行くか・・・。


こうして俺は、ケンを先に家に送り届け、山田を自分の家へと連れていく羽目になった。


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