「ごめんなさいね、せっかく来てくれたのに・・・」 「あ・・・いえ・・・」
美樹のお母さんが紅茶とお菓子を出してくれた。
「あの、おかまいなく・・・」 一応大人としての言葉を交わす。
リビングに通されて待っていたが、当然のように美樹は部屋から出てきてはくれなかった。
「・・・こんな事初めてでね・・・おばちゃんもどうしていいか。」
親として何もしてやれない情けなさからか、少しまぎらわすように笑っていた。 その表情はあたしの胸にズキンときた。 美樹だけじゃなく、ここの家族みんなをも苦しめてたんだ。
なんてことをっ・・・。
改めて自分のしてきたことを悔やんでしまう。
「・・・あのっ、迷惑かもしれませんが・・・美樹が会ってくれるまで、待たせてもらっても構いませんか?」 「え・・・?でも、部屋から出てくるかどうか・・・」 「お願いします!!」
必死に頭を下げた。 ここであきらめてはだめだ。 ちゃんと美樹に謝らなきゃ。 許してくれないかもしれないけど、でも謝らなくちゃ。
「・・・ありがとう・・・遅くならない時間には帰ってね。おうちの人心配するから。」
にっこり笑って言ってくれた。とても優しい笑顔だった。
「・・・はい、ありがとうございます。」
美樹の部屋の前まで案内してくれた。
「美樹・・・山田さん会ってくれるまで待ってくれるって。少しでもいいから顔だしたら?」 「・・・・・・」 「・・・はぁ、こんな調子だけどいいかな?」
美樹のお母さんは、再度念を押した。
「あぁ、はい。構いません。好きで来たので・・・話したいこといっぱいあるし・・・」 「・・・そう。」 そういうと、台所の方へ戻った。
あえてあたしに何も聞いてこない。 なぜ来たのか、いったい学校で何があったのか、あたしはどういう関係なのか。 いろいろ聞きたいだろうし、知りたいだろう。 それが今のあたしにとっては助かった。 いじめてた子が直々家に訪れるなんて、親としては嫌だろうし・・・。 でも後から考えたら、わかってた上で何も聞いてこなかったのかもしれない。 美樹のお母さんは・・・。
「・・・美樹?・・・聞こえてる?」 「・・・・・・」 「・・・いきなり来てごめんね。」 「・・・・・・」 「・・・でも・・・どうしても美樹に会いたくて・・・」 「・・・・・・」 「・・・勝手なのは充分わかってんだけど・・・でも、美樹が部屋開けてくれるまで・・・本題には入らないから・・・」 「・・・・・・」 「ちゃんと、顔見て話したいし・・・」 「・・・・・・」
一向に返事が返ってこない。 覚悟してたけど、長期戦になるかな・・・?
「・・・それよりさ、美樹のお母さんって美人だね。会ってびっくりした。あまりにもうちの親と違いすぎるし・・・歳も若そうだもんね。」 「・・・・・・」 「それにやっぱり、東地区ってうちらの南地区より進んでるから、おしゃれだよね。なんかこの辺住宅街って感じだし、家いっぱいありすぎて迷っちゃった。あたしの隣近所、徒歩数分歩かないとないもん。回覧板回すの面倒なんだよね。お母さんよくあたしに頼むしさぁ。裏は山だしぃ。」 「・・・・・・」
あたしはかまわず、どんどん話し続けた。
「あぁ、そうそう。帰りにさぁ、えっとなんだったっけ・・・?生活指導の・・・あ、黒田だ。そう黒田!!あいつに自転車の止め方の事でこっぴどく怒られてさぁ・・・まぁ、あたしが悪いっちゃ悪いんだけど、でも元はと言えば松井君のせいでさー。朝ギリギリで学校着いて止めるとこ1台分見つけて、さぁ、止めようと思ったら、横取りされてさー。文句言ったら、オバタリアンか?って言われて!ムカつくと思わない?あのすかした感じほんっと生意気だわ。あれでよくモテるよな〜、不思議・・・そういえば、松井君て東小だっけ?昔っからあんな感じなの?・・・まぁ、どうでもいっか。・・・あとさぁ・・・」
あたしは、適当な会話をいくつもした。 朝テレビつけた時に流れてた、この時代のワイドショーのこととか、新聞のテレビ欄に載ってた、この時代のドラマの話とか・・・。 でも、だんだん話のネタもつきてきた。
・・・えっと〜・・・他になんかないかなぁ・・・
「・・・あ、そうだ。面白いこと教えよっか。ほら、ノストラダムスの大予言?ってのあるじゃん。世紀末に人類が滅亡するってやつ。あれね〜・・・まったくの嘘なんだよー。なぁんてことなく、平和に過ごせるんだよ。でも・・・環境問題とかのこと考えると、いずれは滅亡するだろうね・・・形ある物壊れるってね・・・・・・っ!!」
しまった!!あたしまた変なこと言っちゃった。 こんなこと言う中学生いないでしょ!? う〜ん・・・ま、いっか・・・
「あとね〜・・・そうだなぁ・・・あぁ、そうそう!キムタクっ!!実はね・・・工藤静香と結婚するんだよ。あ、だいぶ先の話だけどね。これは超驚いたよ〜。あ〜、あと中山美穂も結婚して子供できたんだよね〜。」
この頃、あたしは中山美穂の大ファンだった。 今もだけど・・・憧れる芸能人だ。
「・・・キムタクって・・・SMAPの木村拓哉・・・?」
「うん、そうだよ。あぁ、まだキムタクって略してなかったっけ?・・・・っ!!」
・・・え・・・?今・・・しゃべった?・・・よね?
とっさに、座り込んでいた態勢が立ち上がった。 当たり前のように会話が繋がったけど、数分間あたし一人でしゃべり続けてたのに・・・
ガチャ・・・
ドアのぶが回った。
一瞬にして緊張が走る。
17年ぶりに美樹との再会だ・・・
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