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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第105回   105
「おいっ、ケン・・・寝るなよ?」
松井君は、静かになったケンちゃんを揺さぶった。
「・・・だい・・じょうぶ・・だよ・・・このやろ・・・むにゃむにゃ・・・」
半分夢の中みたい・・・

周りのみんなも、ほどよく酔って、会話がまばらだ。

あたしときたら・・・隣に座って1時間は経つだろうに・・・
松井君とは、一言も話していない・・・その前に、まともに顔も見れてない。

あまりにも、意識し過ぎてしまっている自分が嫌だった。
これって・・・変態もいいとこだ。

そのことを紛らわすため、酒のペースはさらに速くなる。

ふと・・・隣から話し声が聞こえた。



「・・・・・・こいつの言ったこと・・・気にすんなよ。」



はっきりと聞こえたが・・・誰に対して言ってるのか、全くわからなかった。
・・・が、ピリピリと意識している隣から・・・視線を感じる・・・



・・・・・・−――っ!!


もしやと思い、隣に目を向けると、もろに松井君と目が合ってしまった―――



「こいつ・・・酒癖悪いから・・・」



黙ったままのあたしに、再度付け足して話し掛けてきた。

「・・・・・・っ・・・あ・・・うん・・・」

やっとのことで、返事ができた。
いや、できてたのかどうか、わからない。

松井君の・・・あの目に・・・吸い込まれるかと思ってしまった。

またしても、口にお酒を運ぶ。
こうなったら、飲んでないといられないでしょ!



ケンちゃんは完全にダウンしており、田口君と松井君が話しているのが耳に入る。

「マジ会社キツイかも・・・」
「・・・今はどこも一緒だろ?」

内容は男ならではの、この100年に一度の大不況と言われていることだった。

「俺んとこ、車関係だから、もろだわ・・・リョーマんとこは?あんま関係ねーんじゃね?」
「そうでもねーよ・・・どっかが狂えばみんな共倒れなんじゃね?」
「そっか〜・・・そうだよな・・・サポーターする会社がヤバくなれば、それを頼りに試合するとこもヤバくなって、それに出場する選手が試合も出れずヤバくなる・・・そうなると、おまえんとこも打撃だな・・・まぁ・・・連鎖してるもんか。」

なんとなく・・・この会話が気になった。
もちろん、松井君のことが気になるのがあってのことだけど・・・仕事・・・何してるんだろ?
選手って・・・それに影響するって・・・

「でも、世界のミズ〇だろ!?ちょっとやそっとじゃつぶれねーよっ!」
田口君がそう言って、松井君の肩を叩く。

・・・ミズ〇・・・って・・・あのスポーツメーカーの・・・?



・・・・・・―――っ!!・・・まさ・・・か?
・・・サッカーだって、会社でやってるって・・・
いや・・・偶然だよ・・・
でもっ・・・やっぱり・・・っ!!

何度打ち消そうとしたあの夢の記憶・・・

松井君は言ってた・・・あの夢の中で・・・将来の夢を語ってた・・・

チームを作って、大会に出たいって―――
サッカーに関することだったら・・・なんでもいいって―――

それが、制作する側でも・・・ボールとか・・道具とか・・・なんでもいいって―――

ただの偶然と思えるほど・・・あたしは、冷静になってなかった。
考えれば考えるほど・・・熱い・・・体も・・・頭も・・・っ

・・・・・・
・・・・・・
――――――
――――――
――――――



その後の・・・あたしの意識はなくなっていた―――



なんかの、夢を見た気がした・・・

内容なんて、わかんなかったけど・・・
でも・・・すごく、ふわふわして・・・
気持ちよくて・・・

あまりの気持ちよさに、また深い眠りに入ってしまったんだ―――


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