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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第104回   104

松井君の登場で、きょんちゃんと田口君がそろってこっちのグループに入ってきた。

仕切り直しの乾杯の音頭を、当たり前のようにケンちゃんがとる。

「ところで、おやじさん大丈夫なのか?」
ケンちゃんが話を切り出す。
「まぁ、今んとこは。」

話によると、松井君のお父さんは今日の昼間に、胸の痛みを訴え、救急で診てもらい検査したところ、狭心症と診断されたみたい。
聞いたことのある病名だが、あたしなんかに詳しいことがわかるはずもなく・・・。
油断できないが、安静をとっていれば今のところ大丈夫だそうだ。
今日は大事をとって、一晩入院するらしい。
面会時間が終わるまで付き添っていて、今頃の登場だという。

本当なら、この2次会にだって来るつもりはなかったが、前々からわかってたことだからか、お父さんから行くように何度も言われ、渋々やってきたみたい。
それに、ケンちゃんや田口君が、何度か連絡を入れてたのもあるだろう。


松井君の前に、残った料理が並べられる。
飲み物はウーロン茶を頼んでいた。
車で来たから、酒は飲めない、ということだ。
それに対しケンちゃんが、「車を置いてタクシーで帰れ!」と言っても、まるで聞き耳を立てないのが松井君。


「でも、松井君に会えてうれしいっ。ねぇ、相変わらず3人ってよくつるんでるの?」
弘子が前の席から身を乗り出してくる。

楽しそう・・・弘子は松井君に想いを寄せていたから、なおさらか。

「そうだなぁ・・・でもこうしてそろうのは久しぶりだな?」
田口君が松井君に聞き直す。
「・・・おまえの結婚式以来じゃね?」
「そっか・・・そう言われればそうだ!」
「昔はさ〜、よく集まってサッカーしてたのによ〜・・・こいつときたら、会社の方のフットサルに力入れやがって・・・この裏切りもんが〜!俺と会社どっちが大事なんだよ!!」
ケンちゃんはそう言いながら、松井君の肩に腕を回した。

・・・サッカー・・・今でもやってんだ・・・

「・・・しょうがねーだろ・・・会社のは遊びじゃねーんだし、大会とかもあるしさ。」
松井君は、焼き鳥を頬張りながら言い返した。
「何だよそれっ!俺とのことは遊びだっていうのか!?」

なに・・・このちょっとした男女のトラブル・・・みたいなかけあい。

「・・・おまえだって、同窓会の話出るまで連絡なかったじゃん。」
「アホっ!なんで俺ばかりが連絡しなきゃいけね―んだよっ!いつでも俺が相手してくれると思うなよ〜!」
「・・・・・・はいはい。」
松井君は、何を言っても無駄だ、という感じで軽くあしらう。
「まぁまぁ、こうして会えたんだし・・・この歳にもなると、そうそう時間とってまで会うってこと難しいじゃん。それぞれ事情あるし。」
そんな二人をなだめる田口君。

3人の光景を見て・・・自然と頬が緩んでしまった。


「しかし・・・田口が一番に結婚するとはな〜・・・」
ケンちゃんが今度は田口君に絡んできた。
「はっはっはっ。まぁな!」
田口君は、自慢げに返事をする。

「・・・ってことは・・・松井君もまだ独身なの?」
あたしも気になったことを弘子が聞いてきた。
「・・・まぁ。」
松井君は、一言答えただけだ。

「っ・・・ぷぷぷぷっ、こいつ、この間フラれたんだと。」
「おまえな〜・・・」
松井君は、ケンちゃんの暴露に反撃しようと思ったが、そのことも諦めた感じだ。

「え〜〜っ!!松井君がふったんじゃなくて!?」
弘子が聞き直した。
「何言ってんだよ!リョーマはフラれてばっかだよ!」
「うっそだ〜〜っ!!だって、中学ん時は、ふってばっかだったじゃん!しかも冷たくあっさりと・・・あたしもフラれた張本人だからほ〜く覚えてるわ・・・」
後半は虚しそうに言っていた。

「弘子好きだったもんね〜、松井君のこと。」
酔ったせいか、珍しくきょんちゃんも話に加わった。
「・・・そういえばさ・・・今思い出したんだけど・・・松井君の告白されてるとこ、あたし見たことあるよ。」

―――っ・・・え?
もしかして・・・あのこと?
バレンタインデーの・・・っ

きょんちゃんの続きの話に意識が集中してしまった。

「・・・たしか・・・ねぇ、智子も一緒じゃなかった?」

「―――っ!!・・・え?」

まさか、あたしに振ってくるとは・・・でも・・・そうなると、やっぱりきょんちゃんが言ってることって・・・っ

「ほら〜・・・3年の時だっけ?」

・・・・・・3年?

「・・・なんかの行事の時で・・・文化祭だったかな?・・・そこははっきりしないんだけど、偶然見合わせたって感じで、二人でキャーキャー言ってたよね?」

「・・・・・・そう・・だったね、そうえいば・・・」


なんとか返事したものの・・・
そっか・・・実際の告白現場に居合わせたのは、3年の時じゃん。
あたしってば、また夢のこととダブらせてしまって・・・

気の抜けたあたしの返事はさほど気にされず、話が続いている。

「そんな松井君が今じゃフラれてんのか〜・・・なんか、そんなの淋しいな〜。」
弘子が残念そうに言った。

「なに言ってんだよ!リョーマがフラれてんのは、そもそも根っこに原因があるんだよ。こいつって、昔っからどっか冷めてるっていうか、無表情というか・・・そんなこいつがモテてたのもおかしいけど、大人になると、そんなんで彼女が満足するわけねーだろ?」
ケンちゃんは、いかにもわかりきった感じで、話を続ける。

「ちゃ〜んと、言うべきことは言う!伝えるべきことは伝えるっ!!それが男ってもんだろ!?リョーマにはそれが欠け過ぎてんだよ!だから、相手との心のコミュニケーションがとれてねーんだよ!ま、体の方はバッチリか!?ぶはははは〜っ!!」

・・・最後は下ネタで締めたけど。
ケンちゃんの言ってることが、あたしには変な意味で、すごく伝わった。

もしかして・・・夢の中での彼は・・・まさしくケンちゃんが言うとおりだったのかも。
ケンちゃんとのトラブルの時・・・あの時の松井君は、あたしに対して嫉妬してるって感じがまるで感じられなかった。
そのことは、最後病院で会った時に、口にして言ってくれたからわかったけど。

無表情なことに腹立ててたけど・・・・・・実は違ってたのかも・・・

・・・―――はっ!!なに考えてんだ!?
また変な思考が働いたよ・・・

現実に戻り、今の考えを打ち消すかのように、注文していたカクテルを、水でも飲むかのように、ゴクゴク飲み干した。

「やっぱりさ〜、松井君には ずっとモテてるってイメージ定着してて欲しいもんっ。」
弘子が松井君に微笑みかける。

「おい、こらそこっ!近すぎだよ。だいたいおまえ一児の母親だろ?ったく、子供の面倒はいいのかよっ!」
ケンちゃんがだいぶ酔っ払ってきたみたいで、辛口になる。
「もう〜っ、現実に戻さないでよ〜っ、今日くらいゆっくりしてきてって、ダンナに言われてるんだから〜っ。」
「はっ・・・大したダンナだな。・・・心が広いっ!!・・・男は・・・そうでなくっちゃ!!」

最初はけなすかと思いきや、褒めるのか・・・完全に酔ってるな。

そんなことを思いながら、残ってるビールを飲む・・・

「・・・ん?・・・おいっ!こら山田っ!!」
ケンちゃんの罵声がこちらに飛んできた。

「・・・なに?」
静かに返事をする。
「なに?じゃねーよ!・・・おまえさっきから一人でグビグビ飲みやがって〜・・・隣なんだからっ、リョーマに酒を注げよっ・・・ほんっと気が利かねーな〜・・・そんなんだから、結婚もできねーんだよっ・・・」

・・・・・・こいつっ・・・松井君は酒は飲まないって言ってんのに・・・明らかに始めより口が悪くなってるし、あたしに気を使うなんてこともない。

だいいちっ・・・ほんとなんで、あたしの隣に松井君が座ってんの!?
それだけで、あたしはいっぱいいっぱいなのに〜〜〜っ・・・

「・・・待てよ・・・こうしてみると・・・今完全にフリーなのって・・・おまえら二人じゃん!」
ケンちゃんはそう言いながら、並んで座っているあたしと松井君を指で交互に指した。

・・・――!!

「・・・おい・・・この際おまえらつきあっちゃえよ〜っ!」

なっ・・・に、言い出すんだ、こいつは〜〜っ!

ケンちゃんの余計な一言に周りのみんなも盛り上がる。

「いいねいいね〜っ!」
「智子〜、うらやましいっ!!」

この騒ぎのせいで・・・あたしは急に酒のピッチが速くなってしまった。


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