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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第103回   103

さっきの盛り上がりで、みんなだんだんと何組かのグループ別れ出して、飲み始めた。
あたしは始めの席から動くことなく、飲み続ける。

「ナイスアシストっ!!」
そう言いながら、半分空いたコップにビールを注いで来た。

―――っ!!・・・野村君だ。

「これで、田口も未練なくなったんじゃない?」
黙ってるあたしに、続けて話してくる。
「まぁ・・・どっちみちフラれてる運命だったろうけど・・・はははっ。」

あたしもなんとなく笑みがこぼれた。

「ところで山田って、まだ独身なわけ?」
「えっ・・・まぁ・・・売れ残ってます・・・」
「へ〜・・・じゃあ、俺で手打たない!?」

―――っ・・・なっ・・・なっ・・・!!

あまりにもあっさり言われて、聞き間違えたかと思った。

「あ〜っ、ケンちゃんまたそうやって口説いてる〜っ!!」
弘子が聞いていたらしく、間に入ってきた。

「何がだよ〜、変な言い方すんなよ!俺は山田とこうして再会して、運命を感じて言ってるんだよっ!」
「またまた〜、あたし知ってんだから〜。ケンちゃん10も年下の彼女いるんでしょ!?」

―――!!・・・10・・も年下!?
マジで・・・?

弘子の言葉に思わず野村君を見てしまった。

「ばかやろっ!なんで年まで言うんだよ!俺がロリコンみたいじゃん!!」
「近いもんがあるでしょうが!!ほんっとに・・・田口君のこと言えないじゃん!自分だって隙あらば浮気しようとしてっ。」
「ったく・・・冗談に決まってんだろ!?山田だって、俺なんか相手にしてくれないわ、なぁ?」
そう言って、あたしに目をやった。

不覚にも、少し本気にとらえた事を恥ずかしく思う・・・
そのことを紛らわすためにも、強気で言い返してしまった。



「・・・当然っ!あたしにだって、好みがあるわ・・・ケンちゃんは、例外だね。」

「「・・・・・・」」

一瞬、間が空いた。
・・・―――!!
その事で、思わず「ケンちゃん」と呼んでしまった事に気付いた。

「・・・このやろ〜、言いやがったな〜っ!後で後悔しても知らねーぞ〜っ!」
野村君はそう言いながら、あたしの頭を腕で回し、ヘッドロックしてきた。
あえて、あだ名で呼んだことを気にせずに・・・接してきてくれた。

「――っちょっ・・・痛いってば〜!!・・・――ケンちゃんっ!!」

そのことをあたしも気にしないように、また「ケンちゃん」と呼んだ。



やっとケンちゃんのヘッドロックから解放され、髪型を整える。
ケンちゃんは笑いながら、お酒を手に取った。
そして口に進めながら、視線の先に誰かを捕らえたんだろう。
コップをテーブルにドンっと置くと、その相手を呼んだ。

「・・・――おいっ!!こっちこっち!!」

店の入口の方に向かって、手招きをしている。

誰か遅れて来たんだろうか?
そんなことを思いながら、入口から背を向けていたあたしは目をやった。



・・・・・・――――――っ!!



その相手は、こちらのメンバーに気付き近づいてきた。

「やっと来たか〜っ、もう来ないかと思ったよ。」
ケンちゃんは立ち上がり、その人の腕を引っ張ってきた。

「・・・え・・・もしかして・・・」
弘子を始め、他のみんなも遅れてきた人物に目をやる。



「・・・俺も来んのやめとこうかと思ったけど・・・おやじが行けってうるさいし・・・」



あの頃と・・・夢の中と、多少違う声だ・・・少し低く感じる。
背は立っているせいか、さらに高くなってるような・・・顔は面影を残しつつも、年相応の顔立ちで、ちょっと渋めが入ったというか・・・。

一言でいえば・・・やっぱり、かっこよかった。



「・・・松井君・・・だよね?」
弘子が話しかける。
「え・・・あぁ・・・はい・・」
余所余所しく答えた。

「いや〜〜〜っ、久しぶり〜〜〜っ!!」
弘子は今まで以上にハイテンションになる。

「なにが、・・・はい。だよ!ほらっ、突っ立ってないで飲もうぜ!」
ケンちゃんに導かれるまま、こっちの席に近づいてきた。

―――っ・・・・・・
なんとなく、俯いてしまう。

もう来ない・・・会えないと思っていた彼が・・・・・・突然現れ、あたしの頭はパニクっていた。


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