タクシーに乗り合わせて、2次会会場となる居酒屋に到着する。
結局、ケンちゃんの強引な誘いに流されてしまった。 あたしとしては・・・あまり話すのを避けたかった。 思わず、夢のようにケンちゃんと接してしまいそうで・・・実際にはそんな関わりなかったのに、それは馴れ馴れし過ぎるだろう。 それに・・・「ケンちゃん」・・・そう呼んでしまいそうで怖かった。
2次会に出席したのは、3分の1くらいか。 小さな子供がいる人とか、次の日の仕事の関係とか、大人としての事情に逆らえない理由だった。 会場で一緒の席だった友人たちは、ほとんど欠席していた。 それだけ、家庭がある子が多いということを意味している。 だからここに残っているのは、少なくとも今日、明日の早朝はヒマな人の集まりとなっている。
「じゃあ・・・再び、カンパ〜イ!!」 ここからは、ほとんどケンちゃんの仕切りとなっていた。 「「カンパ〜イ!!」」 そのことをみんなが止めるわけでもなく・・・
またさらにみんなの酒のペースが速くなっていく。 そして、ついに同窓会ではありがちな話題へと突入した。
「え〜っ!?そうなの!?知らなかった〜!!」 「この際、今告白したら〜?」 「ぶはははは〜」
そう・・・実はあの時あの人のこと好きでした、というぶっちゃけトークだ。
あたしは、なるべく会話に触れず入らずと、隅っこの方でチビチビと飲んでいた。 ・・・が、それはこの男によって、邪魔された。
「あとはそうだな〜・・・あっ、そうだ、山田って1年の時、近藤のこと好きだったよな?」
――ぶっ!! 飲んでいたビールが吹きこぼれる。 慌てておしぼりで口元を押さえ、今その事をバラした田口君へと目をやった。
―――こい・・つっ・・・ほんっと、変わってないんだから〜・・・
「・・・そうだ・・・そうだったね!智子、近藤君のこと好きだったね〜。」 弘子が思い出したかのように入ってきた。 「おいっ、近藤!」 近藤君も2次会に来ており、話をふられる。 「おまえ、実のところどう思ってたわけ!?」 調子に乗った、田口君がはやし立てる。 「えっ・・・どうって・・・あの時はさ、おまえを始め、みんなで冷やかしてただろう?ガキだったから俺はそれを言われるのが嫌で、いっつも逃げてたけど・・・」 近藤君は、当然だけどあの頃とは違う、対応をしてくれた。 「じゃあ・・・俺らがなんも言わなかったら〜・・・ってことか〜!?」 「あはははは〜、ほんっと、田口君って人のことばっか冷やかしてたよね〜。」 「違うよ!俺は、みんなのキューピットになってあげようと・・・」 「はいはい。」
軽くあしらわれるのも変わってない。
「でも、近藤んとこ、今嫁さん妊娠中だろ?」 田口君が、話をずらした。 「うん、まぁな・・・」 近藤君は照れくさそうに答える。
そっかぁ・・・近藤君も結婚してたんだ・・・もうすぐパパ・・・か。
「・・・ってことは・・・おまえ今日は浮気するつもりで来たな〜!」 「ばっ――なに言ってんだよ!」 「照れんな照れんな!わかるぞ〜、お前最近、我慢してんだろ〜!?」
・・・下ネタかよ・・・ほんっとにこいつはっ・・・!
「おいっ、山田!おまえまだ独身だろ?どうよ、今夜こいつと。」
―――っ!!
田口君はそう言いながら、近藤君の肩に手を回した。 「おいっ、田口、冗談もほどほどにしろよ・・・ごめんね、こいつかなり酔ってるわ・・・」 初めてとも言えるんじゃないだろうか? 近藤君が、あたしに話しかけてきた。
――っ・・・・!
思わずその事にドキッとしてしまったが・・・それは田口君の一言で一気に冷めた。
「・・・おっ、近藤いけるぞ・・・山田一瞬その気になったわ。」
―――っ!!・・・こっの〜〜〜・・・
「――ガキっ!!・・・あんたって、ほんといつまでたっても低レベルなことばっか言って・・・もう一回中学生戻ったら?・・・いや、あんたの場合、何度やり直しても同じだわ。」
「「・・・・・・」」
一瞬辺りが静かになった。 そして、似たような事を言ったことある気がした。
「・・・智子?・・・酔ってる?」 きょんちゃんが声を掛けてきた。 「・・・・・・少し。」 そう言った方が誤魔化せるかもと思い、そう答えた。
「・・・っ・・・ぶはははは〜っ!ほんと山田言うとおりっ!この馬鹿は何回やり直しても一緒だよ!」 その静けさを打ち消すかのように、大爆笑したのはケンちゃん・・・いや、野村君だった。
「あんだよ〜、そこはフォローしろよ、ケン・・・」 田口君が気弱に言い返す。 「ば〜か、俺がいつでも助けると思うなよ!だいたい、お前近藤のこと言えんの?実は自分が浮気目的でやってきたんじゃね?・・・目当ての人もいることだし・・・」 野村君はそう言って、不敵な笑みを浮かべた。 「――//ばっ!!ケンっ、なに言いだすんだよっ!!」 「早く話し掛けろよ〜、何のため俺が連れてきたわけ!?」
他のみんなにも、だんだんと言っている意味がわかってきた。 田口君も話によると、新婚さんで奥さんが妊娠中みたい。
問題は、その相手が誰かだ?ということ。
ざわつき始め、相手探しが始まった。 「おいっ!やめろって〜・・・ケンのデタラメに決まってるだろう!」 田口君は、みんなが誰かと誰かと問い詰めているのを、必死に止めていた。
・・・田口君・・・今でもきょんちゃんに気があるの!?ってなくらい、顔が真っ赤だ。 いや・・・かつて好きだった人だもん、こういう風になってしまうもんか・・・。
なんとなく、慌てふためく田口君を見ていると、さっきのお返しがしたくなった。 ふと、隣にいるきょんちゃんに目をやる。 きょんちゃん自身も、まさか自分の事とは思ってもおらず、誰だろうと話に加わっていた。 そんな親友に、心の中でごめん・・・と謝っといた。
「ほんっと・・・今も昔もやり方が同じでわかりやすいのよっ!」
あたしは飲み直していたお酒をテーブルにトンっと置いて、言い放った。
「・・・は?・・・何・・言ってんだよ?」
田口君始め、みんながあたしに注目する。
「中学ん時も、あたしをダシにして近づいてたじゃん。」 「―――っ//」 「・・・いっつもあたしが、きょんちゃんと一緒にいたからって。」
「「――え〜〜〜っ!?」」
相手がわかり、一斉にきょんちゃんへと視線が移る。 「・・・――//」 そのきょんちゃんは予想通りの真っ赤っか。 そして、まだ騒ぎが大きくなった。
「マジで〜っ!?・・・っていうか・・・そうだ・・・思い出した!そんな話聞いたことあるわ〜。田口君がきょんちゃんに想い寄せてるって・・・うわ〜・・・あったあった〜!」 何人かが口々に言う。
そして、野村君が指揮をとった。 「さぁ〜っ!!今から15年の歳月を経て・・・田口 武の告白タ〜イムっ!!」 「「ヒューヒューッ!!」」 あまりの盛り上がりに、きょんちゃんに悪い事をしてしまったと感じた。 だが、この流れは止まらなさそう・・・
「「こっくはく♪こっくはく♪」」 みんなが手拍子を始めた。
「〜〜〜〜〜〜〜っ//」 酒のせいか、はたまたこの状況のせいか、田口君の顔も真っ赤だ。 このまま黙ってると思いきや、置いてあったビールジョッキを一気飲みした。
「「お〜〜〜っ!!」」 田口君の飲みっぷりにみんなが歓声を上げる。
そしてドンっと、ジョッキをテーブルに置くと、開き直ったかのように叫びだした。
「・・・――俺は〜〜っ!・・・――中田がずっと、好きだった〜〜〜っっ!!」
・・・ほんとに・・・言ったよ・・・
「「・・・・・・ぅお〜〜〜っ!!!」」
田口君の告白にみんなも最高潮だ。 この流れで、きょんちゃんは田口君の隣に座らされた。 30になる大人同士だが、見た感じが完全に中学生になってしまってる。
まぁ・・・こうして話せるのも今夜だけだろうし・・・明日からは現実が待ってるもんね。 きょんちゃんにとっても、田口君にとっても、幸せな現実が・・・。
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