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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第10回   前進
昼休みが終わり午後の授業が始まった。

休み時間になっても当然のように、あたしの周りには誰も寄ってこない。
というより、このクラスに山田智子の存在を失くすかのようだ。
先に教室に戻った弘子たちが早速手をうったのだろう。

まぁ、覚悟はしていたこと。
このまま3年間、あたしの中学生活に友達との会話はないかも・・・それはそれで・・・淋しいもんがあるな・・・

とっさに、楽しく過ごしていた頃の思い出がよみがえる。

・・・ううん・・・しかたないこと。

そう言い聞かせた。


掃除もホームルームも終わり下校時間になった。

そういえば、あたしテニス部に入ってたっけ。
クラスではきょんちゃんと橘まどかと一緒だった。
いつもならお誘いの声が掛かるけど、そんなことをするわけがない。
いつの間にか教室からいなくなってた。
もう行ってしまったんだろう。
帰り支度のため、机の中の教科書をカバンにしまう。
ふと手にするノートで止まる。

・・・交換日記・・・

ほんとうならまだ続いていたけど、ここまでかな・・・

きょんちゃんの気持ちはあたしと同じだ。
でもだからといって、この状況にきょんちゃんを道ずれにするのは気が引けてしまう・・・。
きょんちゃんにとっては、今が、あの頃だから・・・。

もしきょんちゃんもあたしと同じような立場なら、同じような状況になってたかも・・・そう信じていいよね。
きょんちゃん・・・

未来のきょんちゃんに問いかけてみた。


部活に向かう気もなく、あたしは1組の教室に来ていた。
入口から見渡す。

・・・あ、・・・いた。

目当ての相手に近づく。

佐藤ひとみ。
1、2年の時はクラスが違ったため仲良くなかったけど、3年で同じクラスになり卒業した後もしばらく連絡取り合ってた子だ。
この頃は話したこともないもんなぁ・・・

「・・・あの、佐藤さん?」
「・・・はい?」

ひとみは振り返り、あたしを不思議そうに見た。
それもそのはず、初めて話しかけるし、接点ないし、あたしの名前知ってるかすらわからない。

「あ・・・あのさ、佐藤さんって確か東小学校だったよね?」

ここの町は北、南、東と3つの小学校に分かれていた。

「・・・うん、そうだけど・・・」
「じゃあ、美樹の家ってわかる?」
「え・・・?あぁ、うん、わかるけど・・・」

少し顔つきが変わった。
きっとひとみだけに限らず、他のクラスのでも美樹がずっと休んでいることを知っている人もいるだろう。
そしてその理由も・・・

「教えてほしいんだけど、いいかな?」
「・・・うん、別にいいけど。」

そして簡単な地図を描いてもらった。

「ありがと。じゃあ・・・」
「あのっ・・・さ・・・」
「・・・?」

教室から出ようとしてひとみが引き止めた。

「・・・美樹に・・・よろしく言っといて・・・」

ほんとうは他に言いたい事がありそうだったが、あえて言葉を選んだ感じだった。

「・・・うん・・・わかった。」

あたしは深く追求せず受け止めた。
ひとみには3年になってから聞いたことあるけど、美樹と小学校の頃、家も近所ということで、仲良かったらしい。
転校する話になって、もっと早く美樹の力になってれば良かったって悔やんでたな・・・その時ひとみもいじめの犠牲者になりたくがないため、少し美樹と距離をとってたみたい。
あたしはそれを黙って聞くことしかできなかった。
自分が美樹を追いつめた犯人とは言い出せなかったから。

今なら、間に合う・・・きっと・・・来てくれる。
・・・来て欲しい・・・

希望を胸に学校を後にした。



自分の家とは正反対の方向へ自転車を足取り重くこいでいく。

ったく、もう〜っ!!なんでこの歳で・・・

駐輪場で生活指導の先生に怒られてしまった。
原因は、自転車をはみ出して止めていたから・・・。
朝の出来事がよみがえった。

好きで止めた訳じゃないのに・・・遅刻したらそれはそれで怒られてただろうし、もう少し駐輪場広くしろっての!!
・・っていうか、あいつが悪いんじゃん。
横取りした松井リョーマが!!
・・・って、過ぎたこと言ってもしょがないか。

それよりあの先生、見るところ、30半ばだよね。
・・・あたしよりちょっと上のやつにああも怒られるとなんかしゃくだな。

頭の中でぶつくさ文句を考えながら、教えてもらった地図を目当てに足を運んだ。

学校から30分くらいの距離で目的地に到着した。

‘‘山下‘‘

そう書かれた表札を前に自転車を止めた。

いざ・・・!!


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