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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第1回   現実
PM5:10

「・・・お先に失礼しま〜す。」
「・・・あ、お疲れさん。」

地方の中小企業の事務として勤めて6年。
AM8:00〜PM5:00の勤務時間。
勤務終了時刻の10分後に帰るようになったのはいつからだろう?

上司も気にするわけでもなく、残ってまでする仕事も不景気続きで・・・いや、あったとしても私に頼みはしないだろう。
ま、自分としてもやる事だけやって、お給料貰えればそれでいい。
今後のこととか、自分の為とか、仕事に対して何の意欲もない。
・・・どうせ自分にはできないから・・・

PM5:55

「ただいま・・・」

どこへ寄ることなく自宅へ。
今年で三十路に突入したというのに、いまだに親と暮らしている。
だって、家出ると何かとお金かかるし、食事とか面倒だし。
ここなら家賃0円で食事つき、身の周りの世話付き。
お金も自分の使いたい事だけに使えるし。
・・・そのかわりデメリットも多少あるけど・・・

「相変わらず早い帰宅ね〜。どこか寄る所でもないの?」

台所から、いつもと同じセリフが聞こえてくる。
数年前なら、まずは「お帰り〜」のはずだったけど。

「はいはい・・・はやくて悪かったね。今日何?」
軽くあしらい飯台の上を眺める。
煮物が鉢に盛ってあり、その一つを口に運ぶ。

「これっ!行儀が悪い!」
すかさず、母の手が飛んできてペチンッと煮物を取った手をたたく。
まるでサザエさんとカツオのやりとりみたいに。

「ほんっとにもうっ!食べる前に夕飯の一品くらい作んなさいよ。」

・・・始まったか・・・

「30に過ぎても、料理のひとつもできないから嫁にいけないのよ。そういえばあんたより2つ下の真美ちゃん覚えてる?」
「・・・あぁ、確か銀行に勤めてたっけ?」
「そう、その真美ちゃん5月に結婚するらしいわよ。」

その類いの話か・・・

「相手は同じ金融関係の人らしいけど。というより、あんたの周りの子どんどん結婚して残ってるのいないんじゃないの?」

・・・多少いるよ・・・

「今は結婚しない子っての結構いるらしいけど、だからってあんたがそうなることないのよ。それに・・・・・・」

・・・だんだん話を右から左へと聞き流す。

「今さえよければいいなんて過ごしてると、後々困るのはあんたなのよ。」

・・・当分おさまりそうではないな・・・
あえて言い返すと話が長引くので、最近は無言で聞き流している。
でもエンドレスのようならこっちから切り上げなくては。

「はいはい、わかってるよ。もう何度も聞いてるし。っていうか、疲れたから寝てくる。夕飯できたら起こして。」
鞄を持ち2階の部屋へ向かった。
「何がわかってるの!言ってる側からだらしない!」
まだぶつぶつと言ってるが、構うことなく階段を上がる。

これが自宅にいるデメリットかな・・・

「あ〜、そうそう。」

ったくしつこいなぁ。まだ言うか!?

「これ来てたわよ。」
階段下からハガキを差し出した。
「中学の同窓会らしいわよ。」
「ふ〜ん・・・」
ハガキを受け取り、また階段を上った。

「お友達みんな結婚してるんじゃない?行って肩身の狭い思いするんじゃないの?」
「・・・じゃあ、行かなきゃいいんじゃん。」
そう言って扉をバタンと閉めた。

さすがに部屋の中までは母の文句は聞こえてこない。
鞄を置くと、そのままベットに倒れ込んだ。

はぁ〜・・・ほんっと疲れる・・・

そして先ほどのハガキを手に取った。

・・・10年ぶりの同窓会かぁ・・・
あの時は成人式の延長で開催されたっけ?
もう10年・・・中学卒業してからは15年かぁ・・・
当時にしてみれば、毎日必死に生きてた気がする。
いろんな思春期事情があったけど、今思うと大した事ではなかったな・・・

卒業してすぐは後悔することがよくあった。
あの時こうしていれば・・・
あの時言いたいこと言ってれば・・・
もう一度中学生活に戻れたら・・・そうすれば今度はもっといいものにするのに・・・
なぁんて、思っても無駄な事ばかり考えてた。
大人になってもそう思うことはあったけど、すべてにおいて後の祭り・・・
後悔先に立たず・・・まさしくその通りである。
過ぎた日には戻れないし、過ぎたことはしょうがない。
そう思うようになってからかな、母の文句が始まったのは。

だって私という人間ができて30年経つんだ。
今更違う自分に、違う人生になんてなりっこない。
話によると、その人の性格というのは、この世に生れて3年で決まってしまうという。
たった3年。
たった3歳でできた自分が一生物なんだ。
そう考えると、やはり悔やんでも、立ち止まったりしてもしょうがないこと。
無関心になることも、開き直ってしまうことも出てくるよね。



「今がよけりゃいいじゃん・・・」
さっき母に言われたことに言い返してみた。
ハガキを手放し、代わりに布団を手に取った。


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