バカと向こうのエロ本
正確な時代、場所は分かりませんが、ある小さな町に、モハメド・O・バッカサンという名前のジパング通の青年が住んでおりました。 太陽が西に沈みかけ、山の上にある寺の僧が、鐘を鳴らす為に腕まくりをし始めた夕暮れ。町は、ひっきりなしに人や車、ラクダ等々が通り過ぎて行きます。畑仕事帰りの牛車。爪楊枝を咥え、やや不機嫌そうな侍。ほろ酔いの水兵。埃まみれのカウボーイ。今から練習なのか?ギターケースを背負い、自転車をこいでいく男子学生2人組。裁判長、ニューハーフ……..。バッカサンも、やはりこの人混みの中におりました。派遣社員である彼は、年末までの契約の、王様の墓作りの為の石運びという仕事を終え、この賑やか一色の町の、色の一部となっているのでございます。 バッカサンは、ソワソワとある場所に向かっておりました。 コンビニです。 (今日は金を持ってる。ナンバーズ3で当てた40ガバス。誰が立ち読みなんてするもんですか!買うよ。買ってやるよ。ああ、買いますよ。買いますよったら買いますよ。家に帰ってじっくり見るつもりさ。たはは。) 表面上は無言で歩いてるバッカサンの心の中は、こう申しておりました。 フラフラしているほろ酔いの水兵を、川の流れのようにかわし、いよいよコンビニの自動ドアの前に立ちました。ドアが開きました。客は一人もおりません。雑誌コーナーの前まで歩いていきました。ニンマリとしました。むんずと、本を1冊つかみました。 エロ本?早速。 ノーノーノー。 いい?ジパング通だよ?彼。さっき言ったっしょ? ジパング最新情報誌「ジパングNOW」に決まってるだろう。 バッカサンは、ジパングNOWと、ジパング風アイスティーと、パブロンをカゴに入れ、戦争反対のTシャーツを着ている、ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の店員のいるレジの前に出したのでありました。実はこのジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の店員、バッカサンの竹馬の友だったのです。バッカサンの唯一の理解者である彼もまた、やはりジパング通でした。 彼は、こうだろう、こうだろうと言うと、ニヤニヤと笑みを浮かべた後、バッカサンに、見てろよと言うような目つきを向けました。そして、バッカサンの持ってきた商品を左手に持ち、フゥーと一呼吸おいてからレジを右手の人差し指で打ち始めました。それが、奇妙奇天烈、奇想天外。なんとジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼は、アータタタターッと、声を張り上げつつ人差し指でレジのキーを打ち出したのでありました。そう、さながら百列拳をかますケンシロウのように。そして、レジを打ち終わった後、彼は落ち着いてこう言いました。 「馬鹿になれ!」 二人は大爆笑です。心から理解しあえる仲だからこその大爆笑です。で、バッカサンは8ガバス支払いコンビニを後にしたのでございました。 さて、いよいよ帰宅です。 バッカサンは、2年前の大学卒業と共に故郷の親元を離れ、現在独り暮らし。バス停から徒歩2分、煙突付きの赤レンガの平屋、六畳一間とキッチンの1K。ラクダ3頭まで無料。家賃は月68ガバス。と、手ごろな値段のこの家に住んでおります。自宅の煙突を見るたび、 「この煙突ならクリスマスにはサンタクロースも大助かりねぇ。」 と、不動産業者に初めてこの家を紹介された時、一緒について来たママンにこう言われたのを、バッカサンは今でも憶えています。 バッカサンは、この畳の部屋が何より好きでした。 落ち着くんだな。 肌触り、色、匂い。 やっぱいいね。ジパング。 畳の部屋の真ん中で、バッカサンはスパゲティ・ぺスカトーレを食べながらジパングNOWを読み始めました。 ほよ〜、ほよよ〜。ほよっ!ほっほよ〜。ほ〜ぅ……よ〜ぅ…….。 バッカサンは、このように1ページ1ページめくるたび、魅惑の国ジパングの最新情報に、驚きと感嘆の声をあげました。そして、本の終盤に近づいた頃、 アポー。 と彼は、目は半開きで、野太いこもった声を上げました。記事です。そこに出ていた記事にバッカサンは驚愕したのでした。この記事には写真が掲載されていました。ジパングの本屋のような店の一角に、ズラッと並んだジパング人。皆、立ち読みです。隅の方にはもめている二人の男の姿も写っております。この立ち読みが原因でしょうか?とにかく、バッカサンは、この記事に心を打ちぬかれたというか、心を盗まれたというか、心を壊されたというか、とにかく(二回目)興味を大いにそそられたのでございました。しかし、改めて読み返してみると、その記事には詳しい説明が書いておらず、ただ写真の枠の下に(通りすがりにこんな光景を発見したので撮ってみました。とても異国人の私が入り込める所ではないようです。)と、記者のコメントが添えてあるだけでした。バッカサンは、虫眼鏡を用い、写真を隈なく調べました。 ウ、ウェ…..。エ…、エロゥ….、エロフ..ン…? エロフン? ジパング語を独学で勉強していたバッカサンは、その写真から、ジパング人達が熱中している本棚の上に書いてあるジパング語を読み上げました。 エロフン。何でしょう?バッカサンは考えました。多分、ジパング人が読んでるこの本の事だろう。読みたい。あぁ、その本ぜひ読んでみたい。それが無理ならどんな内容かだけでも知りたい。 あぁぁぁ……。 ゲッツ!ゲッツ!ゲッツ! やり場のない怒りのゲッツ三連発。しかし、これで落ち着きは少し取り戻したようでございます。落ち着いたところで、もう一度そのページを見てみますと、アラ、アレまぁ。隅っこに何か書いてあります。 (詳細は次号で!) 次号…..。次に出る号…..。ははは。発売日が決まってないジパングNOWの次号って一体いつなのかしらん。ははは。たはははは。 こう言いつつ、バッカサンは、パチパチッと部屋の電気の紐を二回引き、寝たのでありました。 ある休日。その昔、神々がメガネをよく落とした浜辺と言い伝えのある(メガネビーチ)と呼ばれる浜辺を、バッカサンは、ダカラモーオイチドーと、うる覚えの「サムデー」を口ずさみながら歩いておりました。今日のメガネビーチは、旅客機の作った飛行機雲以外には何もない青空が広がり、全くもっていい天気でありました。浜辺は、スイカ割りに興じる家族連れ、王様ゲームに夢中のヤング。岩場に腰掛け、白いたい焼きをほお張っている人魚たち。と、わりと賑やかです。バッカサンは、たい焼きをほお張っている人魚のグループの一番海側にいる子が、とても可愛く見えました。黒髪に白いたい焼きがよく似合っていました。そして、白い肌に付着する黒いアンコ。 コノムネ二サムデー!! 思わず興奮したバッカサン。ついついシャウトしてしまいました。イカンイカンと、人魚たちから目を逸らし、海の方へ目を向けました。 あ、船。 バッカサンが目を向けた先に、一隻の大型客船らしき船が見えたのでございます。その船は、どうやらこちらの港に向かって来ているようです。しばらくバッカサンは、この様子を海風に吹かれながら眺めておりました。その時、彼の頭の中に、ある考えが浮かんだのでございました。 この船は、ジパング経由の船ではなかろうか? その船には、ジパングNOWの雑誌記者が乗っているのではなかろうか? その彼は、新しいジパング情報を持って出版社に帰るつもりなのではなかろうか? その情報から、待ちに待ったジパングNOWの最新号が出るのではなかろうか? っつう事は、エロフンの詳細がっ!! 分かるっ!!! バッカサンは、砂浜の砂を撒き散らし、ある場所に向かって走り出しました。 そう、コンビニでございます。山を飛び、谷を越え、到着した時には思わず笑みがこぼれてしまう程、思ったよりも早くコンビニに辿り着いたのでございました。呼吸を整えた後、店内に入ろうと入り口に近づくと、ドア越しに、ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の友人がレジの前で、しかめっ面をし、己の拳で尻をボスッボスッと叩いているのが見えました。あまりに奇妙な光景の為、慌ててバッカサンは店内に入ったのでありました。相変わらず店内には客は一人もおりません。バッカサンと、ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の店員の彼、そしてボスボスという鈍い音。まるで、この三つだけでこのコンビニは構成されているようでありました。バッカサンは、ボスボスやっているジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼に近づき、 おい、これは一体どうしたものか? と、尋ねたのでございます。しかし、ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼は、ボスボスをばやめるどころか、空いている左手を広げ、バッカサンの前に突き出したのでございました。待て、とでも言っているのでしょうか? 狂ったのかしらん?救急車でも呼んだ方がいいかしらん? バッカサンは、震える手でケータイを取り出し、ボタンをプッシュしようとしました。しかめっ面ながら、薄目でバッカサンの様子を見ていたジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼は、バッカサンのとろうとしている行動を悟り、慌てつつも無言のまま、しかもボスボスしたまま、バッカサンの肩を叩き、彼を制止したのでありました。バッカサンには、ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼の行動が全く理解できませんでした。が、見ていると、ボスボスのリズムがだんだんと速くなっていくのが分かりました。その時です。不意にジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼がボスボスをやめ、口を開いたのでございます。 「 鳴かぬなら 鳴かせて見せよう ホトトギス」 ブッ.......スス〜…..。 ※「屁」 (おなら)とも(ガス)ともいわれる。肛門から排出される気体で、腸で発生されるガスも含める。 ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼は、ようやく口を開いたかと思うや否や、続けて屁を放ったのでございます。 「いやぁ、ゴメンゴメン。まいったよ。20分くらい前から屁の予感がしててさ、でもね、ふんばってもなかなか出なかったんだな。こりゃ絶対出してやろうと思ってさ、小学校時代によくやった戦法を使ったってワケ。そしたらさ、分かるね?御覧の通りだよ。はは。あ、で、どうしたの?今日は?」 バッカサンは、屁の事には触れず、落ち着き払って、 @先ほど、メガネビーチで入港してくる船を見た。 Aその船は、多分ジパング帰りで、おおよそジパングNOWの雑誌記者が乗船していて、その雑誌記者は、高確率でジパングの新情報を持っていて、船を下りた後、すぐに出版社に戻り、ジパングNOWの新号の製作に取り掛かるだろう。 B近いうちにジパングNOWの新号がでるだろう。 と、@はね、とか、Aはね、とか言って、分かりやすくジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼に説明したのでございます。ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼は、うんうんと頷きながらバッカサンの話を聞き、Bを聞き終えた時点で、あぁ、なるへそねーつって、 「つまり、ジパングNOWの新号がここに入荷したら教えろって事?」 と、バッカサンに言いました。 バッカサンは、そうだ。お前の言うとおりだ。と、答えると、そのまま何も買わずに店を出たのでございました。 その帰り道の事でございます。 町のメインストリーツを通りかかると、何やら人だかりが出来ております。何の騒ぎでしょう。バッカサンは人だかりをかき分け、騒ぎの正体を確かめたのでございました。 そこには、侍、カウボーイ。この二人が口論している姿がありました。 「お前はバカだ。」 「お前の方がバカだ。」 「いいや、絶対バカはお前だって。」 こんな感じで口論は続いております。しかし永遠に続きそうなこの口論も、割って入ったニューハーフが二人をなだめ、我を取り戻した侍とカウボーイは、 「俺が悪かった。」 「いや、俺の方こそ悪かった。」 と、肩を叩きあい、仲直りし、一件落着したのでございます。それと共に、集まっていた群衆はバッカサンを残し、方々に散らばっていったのでした。そして誰もいなくなった。バッカサンも両手を上げて伸びを一つし、帰ろうとしました。と、先ほど口論していた侍の立っていた場所あたりに、何か落ちているのが目にはいりました。近づいて確かめてみると、それは紫色の豹柄の財布ではありませんか。さっきの侍の財布かしらん。バッカサンは品行の良い人でしたから、ここはひとつ交番に届けてやりましょうと、ひょいとその財布を拾いあげたのでございます。ま、その前にと、バッカサンは財布の中身を見る事にしました。お金は1ガバス玉を入れても3ガバス。他にはレシート、商店街の福引券、レンタルビデオの会員証などのカード類が入っていました。免許証を発見しました。その免許証の写真は、やはりさっきの侍です。それにしてもこの免許、男なら恥ずかしいフタコブラクダ限定免許でした。おほほと、バッカサンは笑いました。名刺も発見しました。名前が免許証にある名前と一緒なので、侍本人の名刺でしょう。が、名刺の肩書きを見たバッカサン、アポーと野太い声を出しました。なんと侍は、ジパングNOWの編集長だったのでございます。なんたる偶然。これを機会にエロフンの情報が聞けるかも。興奮したバッカサン、思わず飛び上がって喜びました。と、その拍子に、持っていた財布が手から離れ、町の真ん中を流れているナイル川という割と大きい川に落ちてしまったのでございました。ほよよ〜、と、バッカサンはしばらくナイル川を眺めていましたが、名刺はしっかり持っていたため、ま、いっか、とそのまま家に帰ったのでございました。 次の日、去年買ったスーツをタンスの奥から引っ張りだし、着替え、ネクタイを締め、髪型を整え、鼻毛を切り、出掛けました。 ちょっとバッカサン、一体どこへ? それは名刺にあった場所。そうです。つまりジパングNOWの出版社でございます。家から徒歩2分の最寄りのバス停からバスに乗り込み、名刺に書いてあるバス停で下車しました。そこは、鍛冶屋、八百屋、ケータイショップ、興信所、ストリップ、中古レコード店などのテントが軒を連ねる商店街でした。カレー屋の隣に、ジパングNOW 出版社のテントはありました。バッカサン、もう心の臓がドキドキでございます。手のひらに(ヒト)という字を書いて心の臓を落ち着かせ、ジパングNOW出版社へと足を踏み入れました。と、そこには、バッカサンが想像していた光景は無く、あちらこちらにクモの巣やカップラーメンの食い終わった容器、バナナの皮など不吉な感じのものが散乱していたのでございます。っつうか、誰もいませんでした。バッカサンは首をかしげながら、一旦テントを出て、フィーリングから何となくテントの裏側に回りました。するとどうでしょう。いました。侍。しかも立ちション中。バッカサンは、今話しかけるとちょっと気まずいので、とりあえず表に回り、侍が戻ってくるのを待ちました。ふと周りを見ると、ちょうど近くの道端で、ヘビ使いのお爺さんが芸を披露していました。それを見ようとバッカサンが3歩ばかし進んだ時、侍がノソノソとテントに入っていくのが見えたのでございます。ちょっと迷いました。なぜならヘビ使いも見たかったからです。でもここは踏ん張り時。バッカサンはピッピッピと回れ右をし、再びジパングNOW出版社に入ったのでございました。 バッカサンが入った時、侍はテントの一番奥にある机に腰掛けておりました。机は入り口の方を向いていましたが、侍は椅子をグルッと反対側に回し、後ろの壁に傾きつつも、かろうじて掛かっている(マウント・フジ)の絵を眺めていたのです。つまり、バッカサンに背を向けて座っていた彼は、客人がやって来たのに気づきませんでした。あ、すいません、というバッカサンの声にビクビクッとなり、侍は振り返りました。そして、そこに立っていたバッカサンを見て、 「なんだチミは?」 と、言いました。バッカサンは侍の机の前まで行き、自分がここに来たいきさつ(財布の件は伏せましたが)、どれほどジパングが好きなのか、好きなジパングの食べ物、そして、最大の目的である、エロフンの情報が知りたいという事を、事細かに二時間かけ、彼に話したのでございました。最後の方はウツラウツラしながら聞いていた侍は、ようやく終わったバッカサンの話を何とか理解しました。 「ほぉ〜。バッカサンと言ったね、チミ。成る程な、そんなにジパングが好きなのか。ちなみにその本はね、(エロフン)でなくて(エロホン)と読むんだ。(ホン)ね。私も詳しい事は知らんが、向こうでは大人気らしいな。え?何で知らないのかって?ははは。実はな、早い話、この会社はもう潰れるんだな。本がぜんっぜん売れなくてね。現場取材の担当者も先月退職しちゃってさ、情報があれ以来全く無いのよ。いっやー、チミみたいなジパング好きがもっとたくさんいたらねぇ。良かったのにねぇ。」 と、侍はため息交じりにこう答えたのでした。そして、クルッと椅子を回し、話を聞いて白目を向いたまま立っているバッカサンに再び背を向け、話を続けました。 「最近はホンっと、ツイてなくてさ。ハチにさされるわ、パチンコは出ないわ、ラジオの電波は火星人並みだわ、財布は無くすわでさ。さっきも小便が足にひっかかるし。あ、そうだ。そういや財布の中に、ジパング行きの船の往復券があったっけ。今思い出した。はは。もし無くさずに財布を持ってたら、チミにその券をプレゼントする事ができたのになぁ。そうだよ。私はチミに券をあげるべきだった。あぁ、何て私はバカなんだ。財布を無くすなんてさ。私は、チミをジパングに行かせ、そしてチミはチミで、チミの、チミによる、チミの為のジパングの情報をっ……..。」 と、ここで侍はバッカサンの方へ振り返りました。あれ?いないじゃん。バッカサンはいなくなっていました。入り口のドアは開きっぱなしになっていました。そこから夕暮れに近づいた朱色の町が見え、ヘビ使いの笛の音がテントの中に聞こえてきたのでございました。 バッカサンは今度は一体どこへ行ったのでしょう。さっきは見事当ててくれたけど、今回はどうかな?分かる?…..え?げげっ!正解!大正解!そうそう!ナイル川!もちろん財布を探しにね。落としたポイントはうっすら覚えていたバッカサン。ズボンの裾をまくり上げ、必死になって財布を探しました。三十分がんばって探しました。自分の中では三時間はやったなと思っていましたが、実際は三十分でした。辺りはだんだんと暗さが濃くなっていきます。結局、川の中からバッカサンが見つけたものは、軍手とカーネル・サンダースの人形だけでした。頭の中で、ユウーべネムーレズニーと、「モウヒトツノドヨウビ」が流れ始めました。疲れがどっと出てきたバッカサン。ついに財布を諦め、トボトボと家に帰る事にしたのでございました。 酒買ってこ。 バッカサンは帰りにコンビニに寄って行きました。ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼は、バッカサンが入って来るのを見るなり、まだ届いてないよ、と言いました。バッカサンは、分かってる、と答えました。ジェームス・ボンドと大木凡人を足して2で割ったような顔の彼は、元気の無いバッカサンを呼び、こう言いました。 「僕の予想だと、あの本はきっと料理の本だね。ほら、今の時代って女の人もさ、バリバリ働いてるじゃん。なかなか料理を作ってもらえないんだよ。君は、生き残る事ができるか?ってんで、男たちはこぞって料理の本を求めたってワケさ。自分で作れるようになる為にね。」 この言葉に、バッカサンは元気を取り戻しました。 「はは!泣いたカラスがもう笑ったよ!あ、それよりさ、いいのが入ったんだよ。今度は人妻モノさ。しかもオールカラー。」 ハハハハハと二人の笑いが響き渡る店内。今日も客は一人もおりません。このコンビニのある小さなこの町も、もうすぐネオンの花が咲き始める頃でございます。
おわり
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