二見は五年振りに村へ帰った。 周りが山で囲まれていて、一番近いコンビニに行くのも車で2時間はかかるという辺鄙な場所にそれはあった。 もうあまり馬力の出なくなった車でボトボト走っているとそれは見えてきた 暗くじめじめとしていて、そこらの空気だけ腐ったまま地面に落ちてしまったのかと思わせるほど陰鬱な空気でその村はたたずんでいた。 二見は村の入口に車を置き村へ入っていった。 足元に散らばっている木屑やらを蹴飛ばしながら歩いているうちにその村にはもう誰もいないのが分かった。 おそらく皆はふもとの町に移り住んだのだろう。皆が皆この村の陰鬱な空気に耐えられなくなったのだ。 それから二見は自分の家を探すことにした。 以外にもその家はすぐに見つかった。なんのことはない、その家だけは綺麗にそのまま残っていたのだ。 中へ入ってみるとついさっきまでだれかが生活をしていたかと感じさせるほど綺麗に整っていた。 二見は一日そこで泊まる事にした。もう戻る理由もないしここでゆっくりするのもいいだろうと思いそうした。 まだ昼なので夜を待つためじっと座って待っているとふと母が玄関から帰ってくるような錯覚に陥ることもあった。 そんなことは無いと分かっているのでとにかく夜を待つことにした。 夜になるとふもとのコンビニで買ったカップのラーメンを食べた。 中に虫が産卵をしていたが避けて食べた。 夜もふけ、月の光が村を照らした。 二見は布団の中から外を見た。するとそこには泥人間が立っていた。 泥人間はふらふらと歩いている。月の光に照らされた泥人間はとても汚く見える。 二見はふと幼い頃に父親と縁日でやった泥人間射的を思い出した。 昔教わった要領で石を投げると泥人間はどさっと崩れ落ちた。 崩れ落ちた泥人間は母親に似ていた気がしたがそんなことは俺にはもう関係ない。 その日の夜はとても泥人間が多かった。 その群れはとても汚く見えて、見ているだけで吐き気がした。 月の光を浴びて、てかてかと光る泥人間はやはりこの陰鬱な村にピッタリだと再確認した。 二見は、もう思いつきでもこんな村へ戻ることはよそうと思い、晩飯に食べ残した 虫を噛み千切り寝た。 遠くの方から祭りの音が聞こえてきた。
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