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作品名:オヤジSFアドベンチャー特異点友和 山崎の合戦1 作者:千駄山ロッカ

第7回   山崎の合戦7
   脳天気、友和


 さて、飛昇天黒布(ひしょうてんこくふ)の術であるのだが、精一杯、頑張って飛んではいたが所詮、竹製の人力ぷろぺらは、気休めのような物。
 設計者の友和にしてからが、
「やったあ! 浮かんだ浮かんだ」
 と、喜んでいるだけの、あたりまえの話だが、飛んでるだけでも奇跡的な代物であった。
 何処へ行くのか風まかせ。
 やがて、強風に煽られた末に、次第に高度を下げ、伊賀へ向うどころじゃない。
 結局、洛外の村はずれに、不時着してしまった。
 すでにこのあたりは、明智の兵で満ち満ちていた。
 兵共のかがり火が、そこかしこに見えるのだ。
 どうやら近郷に展開している一万余の、明智勢の真っ只中に降りてしまったようだ。
「信長を捕えた事こそ、我らが念願成就(ねんがんじょうじゅ)。摩利支天(まりしてん)様のご加護(かご)あったればこそじゃ」
 こう言って百々太夫(ももだゆう)は、信長と蘭丸を縛り上げ、長櫃(ながびつ)の中に隠し、闇に紛れて、出発点である真鍋屋敷へ戻ってきた。

 一方、真鍋屋敷に留まっている友和は、一層、桔梗(ききょう)とねんごろになって、濁り酒をかっくらっては、朝な夕なに桔梗を抱き、その都度、
「おタネを、おタネを」
 とせがまれ、
 その度に、
 ──☆特異点出現! とか、──☆パラドックス警報! とか、訳の分からない言葉が、頭の中で鳴り響いていた。


 此処は真鍋屋敷の地下室である。
 この屋敷は、からくりだらけの忍者屋敷であった。
 百々太夫が紹介する。
「江守様、この御仁(ごじん)こそが本邦(ほんぽう)一の極悪人。魔王にして仏敵(ぶってき)の、織田信長殿じゃ」
 不敵な面構えの信長は、周りの忍者共の憎悪の視線など、いっこうに気にかからない様子である。
「痛み入る。拙者が信長じゃ。そちは何者じゃ?」
 元来がミーハーな男である友和は大喜びだ。
「うわーっ。ホントかよー。本物の信長? 凄いな。写真一緒に撮らなくっちゃな。携帯、携帯と。まずはツーショットでしょう。小鹿、ここを押すんだ」
 小鹿に携帯を持たせて友和は、信長の肩に手を乗せて、歯を剥き出しにしてポーズを取る。
「無礼者! 天下様から手を離さっしゃい」
 と森蘭丸が叫ぶ。
「あんたが、もしかして森蘭丸? とにかくツーショットだ。蘭丸さん邪魔しないでくれ。小鹿、たのむ」
 フラッシュが光る。
「さあ集合写真だ。小鹿またたのむよ。(保存)にしてと。さあ、信長、百々太夫と、桔梗に沙織(さおり)。おい蘭丸、ちゃんと前見て。あ、そうだっ石川五右衛門。あんたの写真は貴重品になる。前に出て、しゃがんで、はい釜ゆでのポーズ! 後ろに忍者たち、並んで並んで。ハイ! ポーズ」
 フラッシュが光る。
「さあ小鹿も撮ろうな。よーし可愛いよ。ハイ、ポーズ」
 一同、呆気にとられているばかり。


 その後、携帯の保存画面を見て、目を細める百々太夫と信長である。
「見事な物でござるな。じゃが、ちと小そうござるな」
 と百々太夫である。
「あははは、百々ちゃん、延ばせるんだよ。なんぼでも大きく」
 昼酒をかっくらいながら、桔梗と桃色ごっこを繰り広げていた無礼者の友和である。
 すっかり酔っ払っているのだ。
「おぬしが空中船を造った御仁じゃな?」
「ご明察。ああ、それにしても、せっかく来たんだもんな、見たかったな安土城。残念だよ。あんたのバカ息子が、逃げる途中で火をつけて、もうすぐ灰になるんだ」
 さっと信長の顔色が変わった。
「な、なんと、安土城が……いかさま信雄(のぶかつ)であろう。くそっ、た〜わけめ〜! 無念千万じゃ。くっくっくっくっ」
 悔しさにわなわな震えているではないか。
「殿、おいたわしや」
 蘭丸が抱き付き、もらい泣きする。
「人は愛さぬが城を愛す。ふっ、いかにも信長じゃな」
 と百々太夫は首をすくめた。


 音羽(おとわ)の城戸(じょうこ)と影丸が、にわかに現れた。
 二人とも、満身創痍(まんしんそうい)の体(てい)である。
「明智の者が嗅ぎ付けてござる! 甲賀衆と水破(すっぱ)もおる! 多勢に無勢じゃ! 頭領、はよう抜け穴よりいでませい。追手は我らが引き受けまする」
 伊賀の手練(てだれ)共がしんがりを買って出て、すぐさま助太刀(すけだち)に向かう。
 かっ、かっ、かっ、かっ(手裏剣の刺さる音)
 ドムッ! キンキン! 
 ぶしゅ!
 どしゅ!
「……!」(忍者は、けっして声を洩らさない)
 階上で繰り広げられる峻烈な忍者戦の音を聞きながら、百々太夫は抜け穴への、どんでん返しを開く。
 ギイイイイ。
「ささ、まずは江守様、少々狭いがご辛抱めされ。徳利なんぞは置いて行きなされ。桔梗、ちょこれい糖を忘れるな!」
「兄上ったら」
 一人また一人、抜け穴へ入って行く。
 穴はだんだん狭くなり、先頭の友和は、蜘蛛の巣を被りながら、四つん這いになって進む。


 ズダダンドド〜ン!
 地下室の吊り天井の落ちる音を後に、総勢、長い抜け穴より這い出すと、ある神社の裏手であった。
「ああ、いい空気じゃ。ほっとするの」
 信長は鼻の下が真っ黒になっている。
「それ!」
 号令一下現れた。
 明智の兵の槍ぶすまに、ぐるり囲まれてしまった。
 更にその回りは鉄砲隊である。
 あっという間の出来事であった。
 そして、明智光秀が現れた。
「上様、……いやさ。外道信長! よくぞ本能寺より逃げおおせたものよ。じゃが外道の悪運もこれまでじゃ」
 精一杯、反り返っているのだが、その貫禄は、信長には遠く及ばない。
「なんじゃキンカ頭。柄にも無く天下が欲しゅうなったか? 身の程知らずの痴れ者め」
「ああ欲しいとも。わしが外道より天下を奪いしは、由緒正しき日の本の国を、正しき道に戻す為よ」
 明智光秀は、とっても真面目な感じのオジサンであった。
「あ〜あ、どこぞのキンダチにでも乗せられおったのじゃろ。お前のような奴を、まことのド・ア・ホと申す。こりゃキンカ頭。お前の友がらの細川や筒井は、馳せ参じてはいまい。どうじゃ図星であろう。ドアホに命運を預ける笑止な大名はおらんのじゃ! いつもながら、詰めが甘いの。トロ臭えキンカ頭よ」
 光秀はゆでだこみたいに真っ赤になった。
「おのれ〜! キンカ頭キンカ頭と、人も無げな言いざま、くそ、くそ、くそ。積年の恨み思い知れ! 鉄砲よこせ!」
 鉄砲足軽から一丁ふんだくると同時に放った。
 ドンッッチッ。
 信長は、もんどり打って倒れた。
「おのれ光秀ー!」
 蘭丸が脇差を抜刀して切りかかる。
「次よこせっ」
 ドンッッ。
 蘭丸もすっ飛んだ。
 流石は鉄砲師範の明智光秀。
 一発必中。一撃必殺なのである。
 だが、これを見て、伊賀者達は激怒したのだ。
「おのれせっかくの信長を」
「楽に死なせおって」
「確かに詰めが甘いわい」
「トロ臭えキンカ頭とはまことよの」
「一寸刻みに切り刻んでやれたものを」
「わしゃ、全身の生皮をひん剥いて、塩ふってやるつもりじゃった」
「トロ火でジワジワ、あぶり殺してやりたかったのう」
「爪を剥がして、指を切った後で手足を切り落し、歯を全部引っこ抜いてから、こえだめにほうり込んでやるつもりじゃった」
 遠のく意識の中で、ほっとする信長であった。
(さても、まっこと禍禍しき奴ばらよ。忍者程厭わしき者、この世にあろうか)
 光秀も怒った。
「わしの事を悪しざまに言う奴は許さん。皆殺しじゃ。鉄砲隊、構え!」

 ──☆パラドックス警報。パラドックス警報。パラドックス警報。パラドックス警報。

 またしても友和の頭の中で、鳴り響く意味不明な言葉。
 しかも今度は、その友和の携帯も鳴った。
 着メロは「森のくまさん」である。
 光秀も明智の兵共も、呆気にとられて見守る中、友和は電話に出た。
「江守ですけど」
「友和さん、わ・た・し・……わかる?」
「わかった。モンローの久美ちゃんだろ!」
「戦国時代に居るくせに、なんで二十一世紀の東京から電話が来たって思えるの? あなた本当に脳天気ね!」
「じゃあ誰だよ、名を名乗れ。こっちは今、殺されるとこで忙しいんだ」
「aタイプって言ったら、思い出す?」
「え? あの『二十分間の世界』で出会った、マヌコロンのaタイプなのか?」
「そうよ。チンコロンの友和さん。お久しぶり」
「aタイプ! 今、鉄砲隊に殺されそうなんだ! 助けてくれー」
「OK。安心して」
 はっと我に返った光秀が叫ぶ。
「皆殺しだっ! 放てー」
 ズババババーーンンン。
「死ぬ! もう死んだ、絶対死んだ筈だ。あれ? まだ生きてるぞ? 不思議だ」
 鉛玉はSF映画のように、空中に静止していた。
 やがてパラパラと地面に落ちる。
 そして、凄い轟(とどろ)きと共に、一天俄(いってんにわ)かに掻(か)き曇り、群雲(むらくも)の中から強烈なオレンジの光の塊(かたまり)が現れたのだ。

 〜ドンドロドンドロドンドロドンドロ〜

 時空艦、フェロモン号であった。
 空を覆う巨大艦の出現に 驚き、いななく軍馬。
 仰ぎ見て慌てふためく、雑兵共。
 馬乗り身分の武士共の怒号が響く。
 砂塵が舞う。
 泡を食った明智軍団は、我先にと遁走して行く。
 おろおろと取り残された光秀の、くびねっこをひっつかみ、馬上に引っ張り上げ、手綱さばきも見事に、パカランパカランと逃げ去ったのが、馬上湖水渡(ばじょうこすいわた)りで有名な、明智左馬之介光春(さまのすけみつはる)であった。
(光春は俗伝であり、秀満が正しいとの事なのだが、やはりここは、左馬之介光春でなくっちゃね)
 百々太夫が叫ぶ。 
「これぞまさしく、摩利支天(まりしてん)様の御技(みわざ)じゃ。日頃の信心の賜物(たまもの)。皆の者、やはりご加護(かご)はあったのじゃ!」
 喜びに沸く伊賀忍者達は、勝鬨(かちどき)をあげた。
「えい、えい、おー」


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