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作品名:オヤジSFアドベンチャー特異点友和 山崎の合戦1 作者:千駄山ロッカ

第4回   山崎の合戦4
  百地百々太夫


 朝が来た。百地百々太夫(ももちももだゆう)の元への旅立ちである。
 百々太夫は伊賀ではなく、洛中に在るという。
 一行は多数の影共を従えて、一路、京の都へ向かった。
 確か友和は、東京都子ノ渡市(このわたし)に、つまり関東平野にいたのである。
 ところがこの場所は、京と安土の中間地点であるらしかった。
 草津の辺りか? 
 鶴田川だった筈の河原は、琵琶湖の湖畔となっているのだった。  何故なのか? ──友和に解る訳がなかった。
 さて、京の都までは、結果的にはわずか半日の行程であった。
 ともあれ忍者の足は恐ろしく速く、現代人で、しかも五十路の友和には辛い道行であった。
 商人の装束を整えて貰っていたのだが、強歩続きの路上でへたり込む事も度々で、途中、見兼ねた影共が用意したものか、或いは、百々太夫に指図を受けたものか、駄馬を一頭用意してくれた。
 おかげさまで友和は、若い娘達と男衆を引き連れ駄馬に乗り、有徳人の道楽者といった風情で、にぎにぎしく洛中に入る事となった。
 馬上の友和は、大はしゃぎだ。
「おお。やっぱり日光江戸村とは規模が違うな。周り全部が時代劇だもんな。こりゃ、たまげっちゃうよな。おっ! 猿回しだ。上手い上手い。小鹿、おヒネリやっとくれ。猿にはチョコレートだ。あっ小鹿! お前が食べるんじゃないよ。沙織、甘酒買ってきて。ダンゴもな。ほお。槍を担いだ武士もいる。おいそこの侍、お前は浪人か? 信長なんかに仕官しちゃ駄目だよ。長生きしたかったら、徳川家康がいいよ。じゃあね。おひょっ、ベールを被ったおねいちゃんだ。ヒューヒュー。顔見せとくれ! いってててて。つねるなよ桔梗。痛いってば」


 道服を着て、薬師(くすし)真鍋妙技斎(まなべみょうぎさい)と名乗っている百々太夫(ももだゆう)は、確かに忍者ハットリくんにそっくりだった。
「ようこそ参られました。桔梗(ききょう)より道々、報せを受けております。江守様はまことに命の恩人でございます。こころより御礼申し上げます」
 まるで親に恋人を紹介するような顔をして、桔梗が言った。
「兄上、友和様は信長の事で面白い事を申されます」
 お調子者の友和が言う。
「なんだ本能寺の話か? 明智光秀に殺されるんだ。天下統一を目前にしてね。確かそう習った筈だ。違うのか?」
 丸い目をした百々太夫の目が、更にまん丸くなった。
「なんと、江守様。そのような話を、いったいどこで?」
「どこでって、俺の時代では常識だよ。豊臣秀吉が明智光秀を討って、天下統一を成し遂げるんだ」
「はて? 豊臣秀吉とな?」
「あ、そうか。サル、から進化して、木下藤吉朗、今は、羽柴秀吉なのか?」
「ううむ羽柴様が……。されば進化とは出世の事でござるな」
「さよう。進化して天下。で、ござるでござる」
「ううむ。江守様、しばしごゆるりと召されませ。小鹿お相手を。後ほど御酒などしつらえまする」
 言い残し、百々太夫は奥へと消えた。
 桃山調のあでやかな女房姿の小鹿が、茶を立てる。
 この時代の茶の湯は、かしこばった処が全く無いのが良い。
「な、友和様、そっくりじゃろ?」
 携帯ストラップの忍者ハットリくんを、胸元から取り出して見せる。
「あははは似てる似てる」
 友和はとっくに足を投げ出していたのだが、やがてごろりと横になり、いつのまにか小鹿のひざ枕を借りている。
 小袖をかけてもらい、小鹿のよい香りを嗅ぎながら、まどろむ友和であった。
「友和様はお疲れじゃ。小鹿の元でしばしお休みなさいませ」
 何故だか本当に友和は、昔の方が断然モテるのだ。


 屋敷の奥の間では、頭領百々太夫を囲み、伊賀の大頭小頭、その他、主立った忍者共が、ガン首を揃えていた。
「信長の間者かとも疑ごうたが、違うたな。何者じゃろ? いずれにせよ、このようなからくりは、バテレンにもあるまい」
 百々太夫は、沙織から差し出された百円ライターを何度も着火しながら、桔梗より差し出されたちょこれい糖に、思わず顔をほころばす。
「わらわは、お味方に頼むべきお方と思います。沙織はどう見る?」
 と舟小屋での秘め事をかみしめながら、桔梗が言う。
「あれほど豪胆なお方は、稀かと存じます」
 と密儀の記憶に思わず顔を赤らめながら、沙織が言った。
「さて、さて、さて……」
 ハットリくん似の百々太夫は、腕組みをして思案する。
「さて、さて、さてと……」
「兄上どうなさる?」
「百々太夫様。いかが?」
「おん大将。どうする?」
「いかがなさる頭領?」
「どうなさる?」
「のう桔梗。江守様は、いますこし、ちょこれい糖をお持ちかの?」
「兄上ったら!」


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