秘儀
小屋へ戻ると、いつのまにか桔梗と二人きりである。 いろりは温かくなっており、ムードは満点であった。 キャンドルを灯すとフレンチバニラの香りが立ち込める。 桔梗は初夜の花嫁の如く、囲炉裏傍にちょこなんと座っている。 しかも、流石は百池の姫様。誰が持ってきた物やら、白無垢の長襦袢を着ているではないか。 なんだか大奥みたい。 「う〜ん。にわかに信じられん展開だな。思わず(〜波線)が出ちまう程」 据え膳食わぬは武士の恥。 「え? 俺は武士か?」 ともあれ、つべこべ考えたってしょうがない。 桔梗の美形を愉しみながら口づけを交わす。 そして桔梗は背中の傷を庇って、友和の上に乗り、友和のむにゃむにゃをかみしめるように、たまらない表情でゆらゆら揺れる。 それからその動きはだんだんと激しさを増し、喘ぎ声を漏らす。 「あ ああ 好き 友和様 ああ 好きじゃ」 流石は女忍者である。 なんとまあ早熟である事か。 しかし、この時代の平均寿命を考えてみるに、十四、五歳で初体験を済ましたとするならば、満十七歳で完成された女となっていても、何の不思議もないのだろう。 動きは更に激しさを増し、髪ふりみだしてとうとう桔梗は気をやったのである。 「あ あ ふう あおおお 友和様 友和様あ。ああああ」 封建江戸幕府の頃と違い、戦国時代の女は屈託が無く伸びやかで、むしろ現代人に近いのではあるまいか? と友和は思った。 もっとも、江戸時代に行った事などないのだが。 膣外射精に及ぼうとした友和の一物の根元に手を添えて、桔梗は言ったのだ。 「友和様、どうぞおタネを、桔梗におタネを下さいませ」 「マジかよ?」 「え?」 「本当に、いいのか?」 「ハイ。下さいませ」 そんな次第で友和はリクエストに応え、桔梗の中に放った。 その時であった。
──☆時空座標sendayama6ka・特異点出現! パラドックス警報・パラドックス警報・パラドックス警報・パラドックス警報……
と、頭の中で、変てこな声が聞こえたのだが、至福の時に浸っている友和は、まったく気にしなかった。 そして、鎮痛剤が効いている桔梗は、程なく眠った。
興奮覚めやらず。 目の冴えている友和は、タバコを持って外へ出た。 満月が出ている。 小屋からしばし離れた所で沙織に声をかけられた。 「友和様、寒うはございませぬか?」 「ああ沙織殿か? 何処にいるの? おや、木の上か?」 いつのまにか沙織は後ろに立っている。 「なんだ。小屋に入ればいいのに。小鹿ちゃんも。外は寒いだろうに」 「優しいお言葉かたじけない。我ら織田の乱破に備え、結界を張っておるのじゃ。姫にもしもの事あらば、伊賀忍者総てに面目が立ちませぬゆえ」 「女二人でご苦労様な事だな」 「うふふふ友和様、伊賀の頭領の妹御が襲われた一大事じゃ。我が頭領、百々太夫(ももだゆう)は、手練者二十人を使わしたぞえ」 「二十人って? いったい何処にいるの?」 友和は思わず回りを見回す。 沙織は忍者特有の、左右の指を合わせる『九字を切る』構えをとる。 「皆の衆、ここな友和様にお見せするのじゃ。……あれなる月をご覧あれ」 友和から見える月に掛かった銀杏の枝が、ザワザワと揺れた。 「次いで、風じゃ!」 友和の右側より、だしぬけに突風がふいた。 「地!」 落ち葉の間より人の手が伸び、友和の足首をむんずとつかむ。 「ぎょえっ流石は忍者だ! やめてくれ。もう結構だ」 「月」以外は、納得の技であった。 「ところで沙織殿、寝付けぬ故、くノ一の秘儀を所望したいと申さばどうなさる?」 「ほほほほ友和様のような豪胆なお方は、この戦国の世でも稀であろうな。かしこまりました。たっぷりお教えしてしんぜよう」 九字を切る沙織である。 「散」 ここから先はプライバシーという意味なのだろう。 はたして草むらの中に枯れ草の寝所が用意されていた。 次の瞬間、にわかに豹とか猫科の柔軟な動物に襲われた感覚の友和であった。 枯れ草の中を女豹と一緒にごろごろと転がるのだ。 「ごろにゃ〜ん」 やがて女豹と思われた、くノ一沙織は、見事な大ダコに変身して友和にからみつく。 「ぬるぬるぬるのぎゅっぎゅっぎゅ」 ああ、骨が無い骨が無い骨が無い。 締まる締まる締まる。 先程、桔梗とまぐわったばかりだというのに、友和はもういきり立っている。 妖しげな香のかおりを嗅ぎながら、アオカンの筈なのにちっとも寒さを感じない。 いつしか小鹿も加わり、3Pとなっている次第の夢心地である。 大ダコが小鹿か? 女豹が沙織か? まるで動物園と水族館が合体したような。 そうだ。これは香のかおりに隠れてはいるが大麻だ。マリファナだ。 ニッカポッカを穿いて山狩りをしている大麻Gメンは、まだ存在しないのだ。 それにしても見事な沙織の乳房に小鹿のすんなりとした脚に我を忘れる我を忘れる我を忘れる我を忘れる。 何と美しい小鹿の尻と沙織の太もももももも。 桃割れ形の小鹿のむにゃむにゃむにゃ。 夢かうつつかまぼろしか。 たまらんたまらんたまらんおおおお。 友和は果てた。 「はあー最高」 ライターでタバコに火をつけ煙を大きく吸い込む。 沙織が小袖をかけてくれた。 「その火打ち石はたいしたものよのう。技なのかえ?」 「いや、からくりだ」 友和は背広のポケットに、スペアのライターが入っていた事を思い出した。 それにナミちゃんのボストンバッグには、なぜだかチャッカマンも入っているのだ。 「今宵の礼だ。沙織にやる」 百円ライターを差し出すと、弾けるような十八歳の笑顔を見せる。 「よいのか? 友和様」 「小鹿にはこれをやろう」 忍者ハットリくんの携帯ストラップを外して与える。 「わあ、沙織姉さま見やれ。百々太夫(ももだゆう)様にそっくりじゃ」 可愛らしい十六歳の笑顔であった。 俺は百円ライターと携帯ストラップを使って、淫行しちゃったよ。 と善行に教えてやりたい友和であった。 そして、沙織は教えてくれた。 「先刻、くノ一の秘儀、お聞きやったの? 姫様には無しと言うたが、まことはあるのじゃ。敵の、これはという助平殿に目星を付けて、閨房術(けいぼうじゅつ)に誘い込むのじゃ。閨房術は、(おババ)がおってな、色々と教えてくれたのじゃ」 「大麻も使ったな?」 「ほほほほほほほほほほ」 笑い声を残して、沙織と小鹿は消え失せていた。
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