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作品名:オヤジSFアドベンチャー特異点友和 山崎の合戦1 作者:千駄山ロッカ

第16回   山崎の合戦16
   ロボ・ミナコ出撃!


 ロボ・ミナコはサンタクロースの服を編み上げた。
 赤い手袋をはめて、赤い帽子をかぶり、赤い服を着て、赤いズボンをはいて、真っ赤な長靴を履き、赤いマフラーを巻いた。
《ロボ・ミナコちゃん、とっても似合うわ。お約束通りハッチを開けてあげるわ。暗くなる前に、ちゃんと帰ってくるのよ》
《さんたくろす おなじふく うれしな まま いま たすけてあげる まててね》
 スコップを持って船外へ出たロボ・ミナコは、猛烈なスピードで雪かきを始め、やがてすべてのポイズン・スノーをかき落とした。
 その結果、フェロモン号のメイン・コンピューター(ママ)の知力は、完全に回復した。


《……ふう……やれやれって、こういう事なのかあ》
 とママ。
《まま どしたの? まだ あたま おかしの? なの?》
 とロボ・ミナコ。
《もう大丈夫よ。ロボ・ミナコちゃん、ありがとう。ふう……》
 とママ。
《かいろ どこか おかしか? ろぼ みなこちゃん みてくる ふぁいる るーむ はいて ゆにとぼくす みてくるか?》
 とロボ・ミナコ。
《大丈夫よ。自己診断の結果、異常はないわ。ママちょっと疲れたみたいなの……ふう》
《やぱり おかしな こんぴゅた つかれ ないよ へんだな》
《心配ないわ。これが悪夢って言うんだわね。人間の感情が、少し解ったわ》
《ろぼと ゆめ みないよ やぱり へんだな また ばか なたら ろぼ みなこちゃん こまるな》
《くすくす。非知性型コンピューターの気持ちも、だいぶ解ったって事なのよ》
《ろぼ みなこちゃん だ びんち せんせが つくた ゆうしゅな ろぼと なの なのなの》
《はいはい。本当にその通りね。エネルギー・ボール、も少し食べる?》


 通信機能も回復したママは、さっそく245ヶ星系へ救難信号を送ると同時に、コトミ艦長の1号カートへ通信を送る。
《コトミ艦長、こちらフェロモン号。ママよ。エステボーの新兵器から、やっと脱出したの。ロボ・ミナコちゃんの活躍でね》
 陣屋の脇の半重力カートの中で、通信機に向ってコトミ艦長が答えた。
「ロボ・ミナコ起動したのね。私達は今、山崎にいるのよ。もうすぐ大きな合戦が始まるわ。エステボーヨシユキは、羽柴秀吉の勝利を逆転させて、明智光秀に天下を取らせるつもりなの。歴史を変えるつもりよ。これは私達を捕まえる為の罠でもあるのだけど、見過ごす訳にはいかないわ」
 通話中、柘植(つげ)のおババが1号カートに入ってきて、番茶を注いでくれた。
 コトミ艦長は習慣で、腕時計に内蔵されているライフ・ガード・センサーのスイッチに触れる。
 腕時計からは、微細針がニュッと出て、番茶に浸ってすぐに引っ込んだ。
 警報音は鳴らない。
 安全だという事だ。
 このところ、濁り酒ばかり飲んでいたコトミ艦長は、番茶を旨そうに飲み干した。
《すぐに飛んで行きたいんだけど、動力部の修理に、もう少し時間がかかるの。ロボ・ミナコちゃんを先に送るわ。コトミ艦長、今のところ成層圏と外宇宙に、エステボー艦の気配はないわ。奴らの乗ってきた時空船は琵琶湖の湖中よ。長く留まって活動してると、連盟軍の偵察艦に発見されるから、隠しているのよ》
「宙賊の悲しい性ね。奴らは包囲されて拿捕されるのが、何より怖いのよ。お陰で、陸戦だけで勝負しようとしてるって分かったわ。これだけでも有り難いわね」
《最も、ハイパードライブで援軍を送って来る可能性も、全く無いとは言えないわね。計算上は限りなくゼロに近いのだけど》
「なにしろ相手は宙賊だもんね。まったく。何考えてんだか。……引き続き索敵の方は、お願いね」
《安心して》
 自らを戦闘モードにセットアップしたロボ・ミナコが言った。
《じゃ まま ことみ かんちょ たすけに いくの》
 サンタクロースの恰好で背負った、ランドセルロケットに点火した。

 ズバババ〜〜〜ン! と山崎へ向かって飛び立って行った。


 フェロモン号は動力部の調整の為、船体を浮かび上がらせ、ブルッブルッと身震いさせた後、再びドスンと着陸した。
 通りかかった近郷の百姓が、腰を抜かしている。

《シールドも宇宙戦闘も、まだ無理だわ。ロボ・ミナコちゃん、ママの分も頑張ってね》
 とママからの通信。
《やまざき みえたよ ひと いぱいいるよ まま まかしといて》
 頼もしいロボ・ミナコの返事なのだ。





   おババの毒薬


 フェロモン号のママから通信がきた直後に、伊賀者の陣屋では大変な事が起こった。
 フェロモン号クルー達と、伊賀の忍者達が、強烈な四肢の麻痺に襲われたのだ。
「ぐわっは、やられたのう。コトミ殿、生きておるか?」
 と、百々太夫(ももだゆう)。
「むうん! お腹痛い。手も足も動かない。最悪よ!」
 と、コトミ艦長。
 コトミ艦長も百々太夫も、犠牲者であった。
 程度に個人差はあったが、両手両足の麻痺の為、全員が物を持てなくなり、歩行困難となってしまった。
 かろうじて口は利けるのだが、身体は四肢の痺れの為、這いずってしか動けないのだ。
 完全に、戦闘不能状態であった。
 柘植(つげ)のおババは、一世一代の大勝負に出たのである。
 これは、おババ秘伝の、蟲毒であった。
 この毒は、フェロモン号クルー達の、腕時計型ポイズンセンサーに、全く反応しなかったのだ。
 毒は、朝食の飛騨汁と、水代わりに飲んでいる番茶に、仕込まれていた。
 かろうじて助かった者は、フェロモン号クルーでは、特異点友和の護衛を命じられていて、友和と共に、秀吉の本陣に出向いているaタイプ中尉と、3号カートの中で、投降者で実弟の、エステボー・メロスと話し込んでいた、船医のきなこ大佐だけであった。
 伊賀者達も、偵察行動をしていたほんの少数を除いて、あらかた戦闘不能となってしまった。
 幸いと言えば、桔梗(ききょう)と沙織(さおり)、そして小鹿(こじか)は、たまたま偵察に出ていた為、この災難を免れていた。
 陣屋の中では、フェロモン号クルーも、忍者達も、ごろごろと芋主のように転がって呻いている。
 3号カートから戻ったきなこ大佐が叫んだ。
「きゃあ! どうしたの? みんな! 忍者の皆さんまで……」
「きなこ、気をつけて! 飲み食いしちゃ絶対駄目よ。毒よ。毒を盛られたわ!」
 と、這いずりながらコトミ艦長。
「誰ぞ! 手足の利く者はおらんか?」
 と、百々太夫も転がりながら叫ぶ。
 毒物を吐き出そうと、誰もが懸命にゲエゲエ吐いている為、陣屋の中は吐しゃ物により、足の踏み場もない。
 しかもその上を、忍者達とフェロモン号クルー達が、転げ回って苦しんでいる。
 惨憺たる光景だ。
 吐しゃ物の中の、濁り酒の匂いが、辺り一面を覆っていた。


「ふひー! きったねえなあ! 臭え臭え。こうなると、美女も忍者も形無しだな」
 と、憎ったらしいセリフを吐いて、エステボー・メロスが登場した。
「きっしっしっしっし。ほんに、臭いのう。頭領、すまんこっちゃ。殺しゃせんわい。やい! 八百比丘尼(やおびくに)のコトミ! おぬしが、すんなりと『お宝星』に連れてってくれるって言っちょったら、こげいな事は、せんかったわい。馬鹿もんが! いいざまじゃ」
 と、おババも姿を見せる。
「メロス! 騙したのね!」
 と、きなこが叫ぶ。
「うるせーっ。姉ちゃんだからって容赦はしねえぜ。きなこ、おめえは芋虫女どもを引きずって、カートの前に並べるんだ! ぐずぐずししやがると、芋虫どもは全員、バーベキューになるぜ」
 メロスの手に握られたブラスター(熱線銃)が、不気味に光る。
 悔し涙を浮かべたきなこ大佐は、ゲロまみれの美女達を、カートの前にひとりずつ、引っ張って行くのだが、何しろ大人数である。
 どうにも、時間がかかる。
「ゴメンネ。コトミ。ウチのチンコロンが。後で必ず、おしおきしてやるからね」
 と、コトミ艦長を引っ張りながら、きなこはささやく。
「性悪な奴だわ。きなこ、逆らっちゃだめよ」
 と、引きずられながらコトミ艦長。
「えーい! 姉ちゃん! もたもたすんな!」
 業を煮やしたメロスは、電撃ムチでしたたか、きなこを打ちすえる。
 ──ビシ! 
 ──ビシ! 
 ──ビシ!
 と、鈍い音がした。
「いったーい! メロス! やったわね! 三発も! 覚えてらっしゃい! 一体、どんな風にしたいって言うのよ! アンタ昔っから、アタマ悪いんだから。私をぶつ為にこんな事したの? 説明しなさいよ!」
 と、髪振り乱して、凄い形相となったきなこが叫んだ。
 驚くべき事に、きなこに電撃ムチは、さして効果を表さない様子だ。
 メロスは次第に、泣きそうな顔になってきた。
「ううう。信じられない。デネブ牛でさえ、一発食らったら悶絶するという電撃ムチを。……姉ちゃん、アンタ、化け物か?」
 きなこが薄ら笑いを浮かべて言う。
「ほら! カートの前に、クルー全員、並べたいんでしょ? 私一人で引っ張ってんだから、明日の朝までかかるわね。アンタそれでいいの? 馬鹿アタマでしっかり考えたの?」
 見かねたおババが口を出した。
「メロス殿、引っくくるのは良しとして、女共を運ぶ算段は、ついておるんじゃろな」
 メロスは、ほとんど泣き出しそうだ。
「アンタ、カートで私達を連れてくつもりなら、考え甘いわよ! 新しいセキュリティーは、すぐエラーが出ちゃって、普段乗ってる私達でさえ難儀してるくらいなのよ! いいこと! エラーになっちゃったら動かないんだからね! アンタ頭悪くて機械、アタシより弱かったくせに。さあ、認証なしで動かせるもんなら、動かしてみなさいよ!」
 と、きなこは追い討ちをかける。
 とうとうメロスは泣きだした。
「ひえ〜ん。姉ちゃんのばかあ」
「何よ! 低脳! ちんころんのくせに!」
 ときなこ。
 245ヶ星系の日常生活を、垣間見る思いである。
 これじゃ、ちんころんは、逃げ出してエステボーになりたい訳だ。


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