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作品名:オヤジSFアドベンチャー特異点友和 山崎の合戦1 作者:千駄山ロッカ

第11回   山崎の合戦11
   伊賀


「右府様よくぞご無事で。拙者、狐につままれたる心地でござる」
 と、徳川家康は、どんぐりまなこを瞬かせている。
「狸の貴殿が狐にの。これは愉快な事じゃ」
 と、織田信長は、不敵さがだいぶ抜け落ちて、好感度が上がった感じだ。

『本能寺の変』の報せを、出先の堺で受けた徳川家康は、急ぎ本国へ帰るべく、伊賀越えの途中であった。
 伊賀忍者、百地百々太夫(ももち・ももだゆう)の計らいで、伊賀百地の隠れ屋敷にて、織田信長と対面していた。

 宙賊エステボーより身を隠す為に、総勢三十五名のフェロモン号クルーも、蘇生した織田信長に森蘭丸、そして江守友和とともに、この隠れ屋敷に身を寄せていた。
 織田信長にとっては、いよいよ仇の本拠地に入った事になる。
 明智光秀の放った鉄砲の弾丸で、一度は皆の前で死んだ身体なのだが、その程度の事でチャラにはならない事は、百も承知していた。
 復讐に燃える伊賀者達の視線を、痛いほどに感じる。
 だが、『人間五十年』が信条の信長も、何故だか、再び死ぬのは嫌になっていた。
 フェロモン号なんぞを見てしまったせいで、カルチャーショックを受けたからであろう。
「のう蘭丸。人間一度死ぬと、かえって命が惜しゅうなるのう。不思議なもんだでや」
「上様、一度死んだ人間じゃにゃあ、この気持ちは解らんなも」
 などと、二人で言い合っている。
「きびし〜! このあたりで勘弁してちょーよ」
 などと、柄にも無くおどけて見せても、白々とした冷たい反応が返ってくるばかり。
 まあ、それが当たり前である。
「地獄の閻魔様が、もう一度生き返って、死ぬより辛い生き様を繰り広げて、罪の償いをしろ。と、おっしゃったのだ」
 と言う友和のとりなしで、伊賀者達はやっと、落ち着きを取り戻した。
 役行者(えんのぎょうじゃ)をルーツとする伊賀忍者は、皆、信心深いのである。
 

 危険な逃避行の緊張から開放され、やっと血の気の戻った家康が言った。
「右府様、いっそ一緒に三河に参られては如何でござる? 急ぎ兵を取りまとめ、取って返して、憎き明智のやつばらを、成敗してくれましょうぞ」
 と家康はこぶしを握り締める。
「いやいやそれには及ぶまい。のう蘭丸、徳川殿に申し述べよ」
 と信長は、いたってのんびりした様子である。
「はっ、実は、あれなる、霊験あらたかなる江守友和殿の言によりますと、明智光秀めにおきましては、羽柴筑前殿によって近々、山崎の地にて大敗を喫しまして、落武者狩りの土民の竹槍にて、あい果てる定めでござるとか」
 と蘭丸。
「何と羽柴殿が? されど羽柴勢は今まさに、毛利と大いくさの、真っただなかではござらんか?」
 と家康。
「しからば後の世では、これを『中国大返し』と呼び、おおいに褒めそやすとの事でござる」
 と蘭丸。
「うーむ、はしっこき奴! ……いや、あっぱれなお方と申すべきかのう」
 と渋い顔の家康。
 信長が、コトミ艦長を、ちらちらと見ながら言った。
「徳川殿、わしも猿の顔が見とうなった故、山崎へでも参ろうかと思うのだが、……構わぬかの? コトミ殿」
 パラライザー(麻痺銃)の手入れをしながら、うなずくコトミ艦長なのだが、なんとなく顔が赤い。
 濁り酒が、すっかり気に入ってしまって、ちびちびと舐めているのだった。
 相手をしているフェロモン号船医の、きなこ大佐は、自前のワイングラスを真っ白にして、やはり濁り酒が気に入っっている様子だ。
 台所では、aタイプが、たくあんをポリポリかじっている。
 美女揃いのフェロモン号クルー達は、野戦服姿の為、いつものキワドイ、バンピレラのような露出はないものの、屋敷の中を、モデルのように恰好よく歩き回っている。
 外へも出て行く。
 美女クルー達は伊賀の里の中を、あちこちと歩き回っているのだ。
 伊賀の里はまさに、花盛りとなった。
 眩しげに眺めながら徳川家康が言った。
「右府様、拙者も同道しとうござる。いやいや、美女を追いかけたい事も正直、ありますが。たまらん。まっこと艶やかじゃのう」
「三河様、よだれが」
 と蘭丸。
「くっくっくっくっく」
 と信長が笑う。
 よだれを拭いてから、顎を引き締め、家康が言った。
「山崎の地にて羽柴勢のお手並み拝見。うん、合戦見物も、また一興かと存じまする」
 その時、徳川の家来になっている伊賀忍者、服部半蔵が明智光秀の探索から帰って来た。
「半蔵構わぬ、皆様の前にて述べよ。皆、苦境を共にする、お味方じゃ」
「しからば御免。明智の本陣にては、摩訶不思議なる風体の男共が、奇怪なる乗り物を乗り回し、その者共の大将とおぼしき者、明智光秀の客将となった由にござる。名はヨシユキと申す」
 コトミ艦長の顔が険しくなった。
「宙賊エステボーのボス、ヨシユキだわ。……歴史を変えるつもりよ。ついでに私達もおびき寄せるつもりね」
 船医のきなこが言った。
「なんて悪辣な奴!」





   宙賊エステボーヨシユキ


 伊賀百地の隠れ屋敷の中で、友和は桔梗とaタイプに挟まれ困っていた。
 生まれ落ちてこのかた、こんなにモテた事は無い。
 気晴らしに外へ逃げ出すのだが、外では綺麗な沙織と可愛い小鹿が友和を奪い合うのだ。
 まさに女難であった。
「ああ、色男は辛いなあ」
 小鹿のひざ枕を借りて、沙織の酌で濁り酒を飲む。
『二十分間の世界』で約束していたaタイプとの桃色ごっこを、さっそく繰り広げたいのだが、百地屋敷は、いや、伊賀の里は、どこもかしこも、フェロモン号クルーの美女達が闊歩していて、淫(みだ)ら曼陀羅(まんだら)に及ぶ場所など、全く無いのであった。
「ああ、溜まるなあ。沙織殿、また、くノ一の秘儀、お願いしたいなあ。いってって」
 小鹿につねられた。


 明智の本陣では、宙賊エステボーのボス、ヨシユキが濁り酒に酔っ払っていた。
 明らかに明智光秀は迷惑顔なのだが、エステボーの圧倒的な武力のデモンストレーションを見せられ、ビビリまくっているのだった。
 光秀は、明智左馬之介に愚痴をこぼす。
「信長にどつき回されて、辛抱してきたわしじゃが、どうにもこの星回りから抜けられん。このヨシユキという御仁、無礼なうえに話が、さっぱり解らんのう。……辛いのう」
 などと言いつつも、善行の酌をしながら、ご機嫌をとる。
 エステボー・ヨシユキは、陣屋女郎を両脇に侍らせ、したたか酔っ払っている。
「光秀さん聞きなさい。──
 隷属愛玩種のチンコロンなどと落しめられてな。
 反抗した俺達の先祖は、キョコーンとエステボーに別れたんだけど、男尊女卑文化圏の星系を地盤に持つキョコーンと違って、辺境星をぽつぽつと基盤にしている俺達エステボーは、宙賊などと呼ばれて、まるで犯罪者扱いなのさ。
 実際俺達は、チンコロンの脱走者が多いんだよ。
 だから実質的には、奴隷開放軍なんだ。
 ……さて、このたび、キョコーンのユータロから申し出があってね。ふふふふ。
 あの負けず嫌いが、ダルマ・ローター2重星空域の戦闘で、ボロクソ負けたんだよ。
 ……ふふふはははは愉快愉快。
 余程悔しかったんだなあ。
 フェロモン号のクルーを捕まえてくれたら、男尊女卑文化圏の星系を、一部割譲するって言うんだ。
 悪くない話だよ。
 うん、悪くない。
 これで根無し草とはおさらばさ。
 それにフェロモン号のクルーは、艦長のコトミを始めとして、いい女ばかりなんだよ。
 たっぷり愉しんだ後で、ユータロの極上のエリアと交換してやるぜ。
 ひっひっひっひっ。
 これで俺も、元老院議員になれるのさ。
 もう誰にも、宙賊なんて呼ばせないぜ。
 何が隷属愛玩種チンコロンだ。
 ふざけやがって!
 チンコロンいやつまり、男性種の時代を造ってやるぜ。
 光秀さんよう、俺こそチンコロンいやつまり、男性種の救世主だと思わない? 
 な、分かるかい?」
 光秀の禿げ頭をビタビタひっぱたきながら、抜き撃ちにハイパワーブラスター(熱線銃)をぶっ放す。
 「きゃあ」
 とばかりに陣屋女郎が悲鳴をあげる。
 松の木が蒸発した。


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