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作品名:星のお姫さま 作者:綾瀬 樹

第6回   6
サユリが美由紀と神社に着くと、初詣の人で賑わっていた。

初詣は実家側の神社に行くのだが、この神社がいつも初詣の

参拝者ランキングで上位に入るくらいの人気の神社だった。

しかし、サユリは毎年来ている。これは風俗で働く前から変わ

っていない。

「ママ、すごい人だね」

「はぐれちゃダメよ。ママにちゃんとつかまって」

人の波に逆らう事なく進んで行き、本堂までたどり着いた。

サユリは美由紀に小銭を渡して「力一杯投げるのよ。そして

願い事をお願いするの」と言った。

「うん。分かった」と美由紀は小さい手でサユリの渡した小銭

を握り締めた。

二人で一緒にお賽銭箱めがけてお賽銭を投げた。

サユリは静かに手を合わせ“今年で今の仕事が終わる事が

できますように”と祈りを捧げた。

隣で美由紀は「ママと一緒に過ごせますように」と声を

出してお祈りをした。

その言葉を聞いたサユリは涙が出そうな位うれしかった。

涙を精一杯こらえて「大丈夫。すぐに一緒に暮らせるから」と

美由紀を抱きかかえて言った。

しばらく境内を散歩して、昼食をとった。

ももから貰ったしわくちゃな1万円札を見て、サユリはまた泣

きそうになった。

「おかあさん、どうしたの?」と美由紀が心配そうに言う。

「なんでもないよ」と平然を装うのが精一杯だった


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