サユリが美由紀と神社に着くと、初詣の人で賑わっていた。
初詣は実家側の神社に行くのだが、この神社がいつも初詣の
参拝者ランキングで上位に入るくらいの人気の神社だった。
しかし、サユリは毎年来ている。これは風俗で働く前から変わ
っていない。
「ママ、すごい人だね」
「はぐれちゃダメよ。ママにちゃんとつかまって」
人の波に逆らう事なく進んで行き、本堂までたどり着いた。
サユリは美由紀に小銭を渡して「力一杯投げるのよ。そして
願い事をお願いするの」と言った。
「うん。分かった」と美由紀は小さい手でサユリの渡した小銭
を握り締めた。
二人で一緒にお賽銭箱めがけてお賽銭を投げた。
サユリは静かに手を合わせ“今年で今の仕事が終わる事が
できますように”と祈りを捧げた。
隣で美由紀は「ママと一緒に過ごせますように」と声を
出してお祈りをした。
その言葉を聞いたサユリは涙が出そうな位うれしかった。
涙を精一杯こらえて「大丈夫。すぐに一緒に暮らせるから」と
美由紀を抱きかかえて言った。
しばらく境内を散歩して、昼食をとった。
ももから貰ったしわくちゃな1万円札を見て、サユリはまた泣
きそうになった。
「おかあさん、どうしたの?」と美由紀が心配そうに言う。
「なんでもないよ」と平然を装うのが精一杯だった
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