1月1日は快晴だった。
サユリが時計を見ると、午前10時を回ったところだった。
昨夜、キムチ鍋を食べてシャワーを浴びて寝たのが、午前4
時だった。6時間寝れば、体調はそんなに悪くはない。
サユリは携帯電話で、実家に電話をした。
「もしもし、おかあさん?あけましておめでとう。美由紀起きて
る?」
美由紀とはサユリにとって何にも変えがたい宝物のような我
が子だ。母親によると、お正月という雰囲気に興奮してしまい
昨夜はなかなか寝つけなかったという。
「美由紀に替わって」 サユリは母親に告げた。
「・・・・もしもし。ママ?」
「美由紀!あけましておめでとう」
「おめでとう!ママ」
「美由紀。これからママおばあちゃんの家に行くから、お出かけ
しよう」
「やった〜!待ってるね!ママ」
「うん。待っててね。すぐ行くから」 サユリは電話を切った。
電話をかけるたびに不安と期待が入り混じる。「ママなんか嫌
い」と言われるか「ママありがとう」と言われるか。
今日はとりあえずホッして、出かける準備を始めた。
化粧をして、クローゼットからコートを取り出した。花梨はまだ
熟睡しているようだ。
ガチャ。玄関が開く音がした。
リビングから廊下を覗くと、キャバ嬢のももが帰ってきた。
「ももちゃん、随分遅かったね。あけましておめでとう」
「あけおめ!もうまいったよ」 ももは深いため息をついた。
「いままでアフター?」
「そうだよ。店でカウントダウンやって、そのままお参り。もう
まいっちゃった・・・」
ももの雰囲気から、疲れているのは誰が見ても分かる。
「ゆっくり休んで。私は今から娘に会ってくる」
「美由紀ちゃんと初詣だ」
「でも、今日も出勤だから早く帰ってくるつもりだけどね」
「ちょっと待って。はい、これ」と言ってももは着ていたコー
トのポケットから1万円札をだした。
「何?これ?」サユリは全く意味が分からないと言った感じだ
った。
「美由紀ちゃんにお年玉」
「いいって!ももちゃんからお年玉貰う意味が分からないよ」
「いいよ!気にしないで。ぶっちゃけこれ客から貰ったお年玉
だから」
「気持ちだけ貰うよ。ありがとう」
「じゃあさ、これサユリさんにあげる。これで美由紀ちゃんと美
味しいものでも食べてよ。今年で最後かもしれないしさ」
サユリはももには今年で今の生活を辞めて、美由紀と一緒に
住む事を考えている事を話してあったのだ。
「ももちゃん・・・。ありがと」
「早く行ってあげな!美由紀ちゃん待っているんでしょ?」
花梨といい、ももといい本当にいい仲間にめぐり合えたと実感
した。
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