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作品名:星のお姫さま 作者:綾瀬 樹

第3回   愛する我が子
サユリには、子供がいる。が、夫はいない。いわゆるバツの女

性である。子供は実家に預けていた。

ソープ嬢の出勤形態は2勤1休。2日働いて1日休むという形

態だ。そのほかに月に一度、生理休暇が与えられる。

サユリは休みの日以外は子供と会っていない。子供には「仕

事が忙しいから、おばあちゃんと一緒にいてね」と言ってある。

幸いサユリの子供は、おばあちゃんが大好きなので今の所た

いした問題にはなっていない。

実家の母も、元風俗嬢のせいかサユリに対して理解していた。

リビングにはサユリの子供の写真が飾ってある。帰宅すると必ず

写真を見て“ただいま”と心の中でつぶやくのである。

「サユリちゃ〜ん。お腹すいてる?」

花梨はいつもサユリを呼ぶ時に、“ちゃ〜ん”と声を伸ばして呼

ぶ。

「店で食べてきたから」とサユリが言うと、花梨は悲しそうな顔を

して「花梨特製のキムチ鍋作ったのに〜」と言った。

花梨はオカマだが、料理は上手だった。自分が本物の女じゃな

いからせめて料理くらいは女より上手に作りたいと言うのが、彼

女の口癖である。

「マジ?キムチ鍋?食べる!食べる!」

サユリは花梨の作るキムチ鍋が大好きだった。

「これは花梨流のおせち料理よ。あけましておめでとう」

“そっか年明けたから、世間はお正月だった”と改めて思うサユ

リだった。


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