「あけましておめでとうございます」
午前0時を過ぎた途端に、テレビが一斉にこの言葉を言い出した。
「あけおめ!ことよろ!」マキが言った。
「おめでとう。今年もよろしくね」サユリが返事をする。
もう何度の年越しをここで過ごしたのだろう。サユリはフーッと
ため息をついた。しばらくすると店長が部屋に訪れて「おめでと
う。お疲れ。あがっていいぞ」とサユリとマキに声をかけた。
サユリは着替えを始めて、帰り支度をした。
「サユリさん。今日フリーいた?」
「今日は指名ばっかだね。年末だったし、知らない人はあんま
り来ないでしょ」
「だよね〜。マキも常連ばっか。いつものお爺ちゃんも来たし」
「あの人マキちゃんの事大好きだね」
「こういうトコじゃないと相手してもらえないんでしょ。まぁい
い人だしマキも助かるけどね。そうだ!サユリさん」
「何?」
「まっすぐ帰る?」
「今日は帰ろうかな。明日実家行かないと」
「子供いるんだもんね・・・。わかった!今度時間ある時に二人
で新年会やろうよ!」
「二人で?いいよ!」
「じゃキマリね!」
二人は着替えを終えて、店を後にした。
雪は降っていないが寒さが肌に突き刺さるような寒い夜だった
。店のネオンも消えている。
“ソープランド 星のお姫さま” ここが二人が働いている場所
である。
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