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作品名:二つの重なった世界 作者:雨月兎流

第6回   予知か偶然か
 武家屋敷。そう形用するのが正確なのか分からないけれど、歴史を感じる門構え。何度来てもこの門には圧倒される。人を寄せ付けないようなそんな威圧感を放っている。
「やぁやぁよく来たね。どうぞどうぞ」
 僕たちが門の前に到着して数秒。戸が開き中から人が現れた。眼鏡と着物が似合う笑顔のお兄さんの登場。ちなみに僕はまだ何も声を出していないし、ノックの類もしていない。彼の笑顔には君が来ることは分かっていたよ、なんて意味も含まれているのかもしれない。いやいや、実はたまたまかも知れないけれど。未来が見えるっぽい人という僕の表現は適切である。
「お久しぶりです、京一さん」
「うんうん、久しぶりだねぇ。実に三十四日ぶりかな」
 そんなに正確には覚えていないけれど確かに先月会ったきりだ。挨拶を交わし、お土産のたこ焼きを手渡した。京一さんの大好物はカレーパンとたこ焼きだ。理由はよく分からない。次に来るときはカレーパンを調達してくることにしよう。
 貢物でご機嫌になった京一さんは立ち話もなんだから、と僕たちを客間に通してくれた。もうずいぶんとこの部屋も見慣れてしまった。この家は元々京一さんのお祖父さんの家だったらしいのだが、そのお祖父さんが亡くなった際に貰い受けたのだと聞いている。門があったり、池があったりと僕のボロアパートとは大違いだ。一人でこの家と庭を管理するのも結構大変だよ、と京一さんは言っていたが一人で管理しているとは思えないくらい家も庭も手入れが行き届いている。
「それで、今日はどんな話かな」
 畳の上に敷かれた座蒲団へ腰を下ろすと、僕が口を開く前に京一さんが聞いてきた。僕が京一さんの家を訪れるのは大抵何かあったとき。予知云々抜きにしても京一さんはそれを良く分かってくれている。
「この子なんですけどね。昨日家の前で拾いまして……」
 みあの紹介をして昨日みあとの会話で聞いたこと、分かったことを全て話した。それを受けて京一さんは笑うこともなく、大きく頷いた。
「興味深い話だね。あの公園なら私もよく散歩の途中に通るんだ」
「何か怪しい人とか見た事あります?」
「いや、私は見たことないね。散歩するのは基本的に夜だから、もしそんな人がいたとしたら私も気付くはずだけど。みあさんの言っていることを否定している訳じゃないんだ。むしろ私は全面的に肯定したい」
 この世には分からないことがたくさんあるからね、と京一さんは笑顔を崩すことなく言った。その表情から偽りは感じられない。
 普通ならまともに取り合ってくれないような話だが、やはり京一さん、とでも言うべきかあっさり信じてくれた。案外この人のことだから僕が話す内容も分かっていたのかも知れない。


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