人生において無駄なことは一つもなくて、行ってきた数々の物事すべてが自分の糧になっているのだ、と教えてくれたのは誰だったか覚えていないけれど、まぁ確かにそうなのかも知れないなと思う。無駄のない人生なんてつまらなそうだし。 「それで今日はどうするのですか?」 土曜日の正午。空は快晴。絶好のピクニック日和である。 「いや、ピクニックには行かない」 「ん?」 「ごめん、自己解決した」 昨日は夜遅くまでみあを質問攻めにしていた。気になることは確認しておきたかったし、この件に関して行動を起こすにあたって情報は多いに越したことはなかったからだ。おかげである程度情報はまとまって、一つ案が思いついた。 そのため寝るときに明日は早起きするぞ!と言ったのに寝坊してお昼になってしまったのは仕方のないことであり、決して僕の怠惰な生活習慣のせいではないことを強調しておきたい。 みあはといえば、僕が目を覚ました頃には既に起きていて、肩まであった髪を部屋にあったゴムで左右に束ねていた。健康的である。 寝坊したのを取り繕うように急いで着替えをして出掛ける準備を済ませた僕は今こうして窓の前に立っている。 「知り合いの所に行こうと思うんだ。あの人なら協力してくれるかも」 「そんな方がいるのですか」 協力してもらえたらありがたいですとみあは嬉しそうだ。あの人なら間違いなく協力はしてくれるだろう。みあは僕以外の協力を嫌がるかと心配していたけど、その心配は無駄だったようだ。みあの様子を見ながら、協力するのがたまたま僕だっただけで他の誰でも良かったのかも知れないなと思った。 「早速出かけようか。歩いて十分くらいの所だから」 僕の移動手段はもっぱら徒歩だ。自転車は持っていないし、バイクも持っていない。もちろん車も。自転車くらいはあってもいいかなとは思っているのだけれど購入には至っていない。徒歩で移動できる範囲で生活に必要な物はほぼ手に入るのでそれ程必要性を感じないのだ。 「はい、わかりました」 みあは僕を置いて先に外へ向かった。その後ろ姿を見送りながら、僕も携帯と財布をポケットに入れて玄関へ向かう。昨日壊したドアが嫌でも視界に入る。この瀕死のドアはあと何回の開け閉めに耐えられるのだろうか。このままでは大家さんに怒られるに違いない。見つかる前に直さなければ。 「右ですか、左ですか」 外に出るとみあは首を左右に振りながら待っていた。同時に左右に束ねた髪が揺れる。 「真っ直ぐです」 アパートを出てすぐの道は十字路です。 「迷子にならないようにちゃんとついてきてね」 はい、と元気な声が返ってきた。儚げな表情をしていた昨日とはずいぶん違って明るく見える。僕が協力することで元気になってくれたのなら嬉しいことだ。 晴天とはいえ季節は冬。結構寒い。もう少し厚着をして来れば良かったかなと思いつつみあを見る。僕より薄着だが寒さを気にする様子はない。子どもは風の子。僕は大人になったのだ、と納得した。何か違う気もした。
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